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転生したら攻略対象(♂)でした  作者: ペンギンスター
15/22

満月の海<ラピス視点>

 <ラピス視点>


 私はカイルに女性に変化してしまう事を伝えたが、それまで二ヶ月ほど、森でカイルを治癒したことなどを秘密にしていたことを反省した。

 カイルは命を救ってくれた女性を必死で探していたらしい。そういえば授業を休んでよく外出をしていた。


 それにしても、カイルが森でダークウルフにやられた私を救ってくれた時に、ポーションを口移しで飲ませてくれたって・・・・ちょっと、想像すると恥ずかしすぎて頭がおかしくなりそうになる。いや、人工呼吸みたいなものだろうけど・・


 私が自室のソファーで悶々としていると、向かいのソファーに座ったカイルが話しかけてきた。


「ラピス、次の満月の夜の約束は覚えているよな?」

 カイルは真顔だが、私は質問の意図がよく分からなかった。

「え? 彼女は私です。

 毎日ここにいますが」


「いや、私は女性の姿のラピスと会う約束をしたのだ。

 私がどれだけ恥を忍んで約束を取り付けたか知っているだろう」

 カイルが少し笑っている。


「・・・・そうですね。

 カイルの意外な一面を見ました」

 カイルは爽やかな紳士だと思っていたが、最近強引なところがちらっと見える。

 それはそれで、カイルの魅力だと思う。


「どこか行きたいところはあるか?」

 とカイルが聞いてきた。


 あ、お出かけか。それはとても嬉しい。

 私は少し考えて、

「久しぶりに海が見たいです」

 と伝えた。


「よいな。用意しておく」

 カイルは笑顔でそう言ってくれた。






 それから数日後、私とカイルは自室で夜になるのを待っていた。

 窓の外におそらく満月が上がり始めたのだろう。ソファーで本を読んでいた私の手が、どんどんと小さくなっていった。


「不思議な光景だな」

 向かいに座ったカイルが言う。

「気持ち悪くないですか?」

 人間の形がグニャリと歪むなんて外から見たらどんなだろうと思う。

「いや、綺麗だと思う。何か蝶に羽化するような・・」

 蛹が蝶に・・それは美しいような、でもやっぱり気持ち悪いような、カイルの微妙な表現に私は苦笑した。

 

「着替えます。十分ほど部屋を空けてもらっても良いですか?」

 私はゆったりとした白のワンピースに着替え、頭まですっぽり隠れるローブを羽織った。



 私とカイルは学院の夜の馬房にこっそりとやってきた。

 私が大好きなファルツの首筋を撫でると、ファルツが気持ち良さそうに目を細めた。


「今日は、私の馬で一緒に行くのだろ?」

 カイルが自分の黒馬を連れて来て言った。

 確かに、スカートだと一人でファルツに乗れない。


 カイルの馬に乗せてもらい、私たちは学院の門を出た。

 夜の風が心地よく吹く中、カイルは馬をゆっくり走らせている。

 シャツごしに感じるカイルの体温が熱く、少し胸がドキドキする。



 一時間ほど馬を走らせると、丘の先に夜の海が現れた。

 穏やかに打ち返す波の音が聞こえる。

 昇ってきた満月に照らされて、海のずっと向こうまで光の道がキラキラと反射していた。



 私たちは砂浜を少し歩いた後、大きな流木に腰掛け、ゆっくりと打ち返す海を見ていた。


「やはり海は良いですね。

 ラクロア家では、よく家の裏の海に弟と一緒に行っていたものですから」

 私は、このどこまでも続き、全てを包みこむ様な海がとても好きだ。


「ああ、オスカー殿だな」

「来年学院に入学してきます。姉思いの優しい子です」

 オスカーの顔を思い出す。月に一回女性の姿に戻ることを告げると、少し喜んでくれた。


「兄弟仲が良くて羨ましいな。

 私は兄上達とはほとんど遊んだ記憶がない」


 カイルは少し考えたあと、私に聞いてきた。

「ラピスは姉だったんだな・・いつから体が変わってしまったのか?」

「学院に入る直前です。大変でしたよ」

 私は笑った。

 一人で抱えている時は大変だったけれど、カイルに秘密が分かってしまってよかった。気持ちがとても楽だ。もっと早く言っておけばよかったのかもしれない。


「男の体だと大変か?」

「いえ、もう慣れました。むしろ、時々女性に戻ってしまうのが大変です。

 でも今日はカイルがいるので、ちょっと安心できました」



 しばらく私たちは、ぼうっと打ち返す波を見ていた。

「そろそろ学院に戻りましょうか」

 そう言って私が立ち上がろうとすると、

 カイルが私の手を取り、流木の上に戻した。


 カイルを見ると、その眼差しが少し熱を帯びている様に見える。

「カイル・・」


 カイルは私の頬に手を触れると、軽く唇を重ねた。


 カイルが私に聞く。

「ラピス、女性扱いされるのは嫌?」

「・・嫌、じゃないです」

 私がそう言うと、

 カイルは私の背にそっと手を当てて抱き寄せ、ゆっくりと唇を重ねた。


 満月に照らされた海が幾度も打ち返す中、私はこのまま時が止まってしまえばいいのにと思った。


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