舞踏会<カイル視点>
<カイル視点>
私が舞踏会会場にてご令嬢方と歓談していると、ふとホールの端に白いドレスを着たプラチナブロンドの女性が目に入った。
(あの方はもしや?)
横顔が森で助けて頂いた女性に似ている気がする。
「楽しいお話の途中ですが、少し席を外します」
私は話の和を抜け、廊下の方へ去って行くその人を追いかけた。
彼女はすーっと廊下を抜けると、裏口に姿を消していった。
(見失ってしまう・・)
私は早足で廊下を進み、裏口の扉を開けた。
裏口の外には深い緑の整形式庭園が広がっており、その中に月の光に照らされた白いドレスのその人が歩いていた。
「ご令嬢、すいません」
声をかけると、彼女は振り返り、少し驚いた表情でこちらを見た。
(ああ、この方だ。ここで出会えるとは!)
「私、カイル・ラドクリフと申します。
1ヶ月ほど前、森にて怪我を治癒していただいた者です」
私は跪き、おずおずと差し出された彼女の手の甲に口付けた。
「すっかりお元気になられたようでよかったです」
彼女は少し硬い表情で言った。
「本当にありがとうございました。命を救っていただきました」
私は、やっとお礼を伝えることができたことに喜びを感じた。
「ご無事でよかったです」
彼女が微笑んでくれた。
「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
そう尋ねると、
「申し訳ありません。故あってお伝えすることができません」
彼女は少し困った様子で言った。
まさかお名前を教えていただけないとは・・と衝撃を受けつつも、このままではまた二度とお会いすることができなくなってしまうかもしれないと思い、私はしつこく食い下がった。
「そうですか・・では、今度どこかでもう一度お会いすることはできないでしょうか?」
「いえ・・しばらくこちらに寄る事はありませんので・・」
硬く困った表情でそう言われ、私は心が折れそうになった。
これ以上は失礼であることは重々承知の上、私は続けた。
「遠くにいかれるのですね。私の方からお訪ねします」
彼女は少し考え、困った顔のまま言った。
「いえ、そこまでしていただくのは・・では、次の満月の夜にまたここで」
「ああ、よかった」
やっと約束を取り付けられたことに私は安堵した。
「門までお送りさせてください」
立ち上がり、彼女に手を差し出すと、
「ありがとうございます」
と、彼女がそっと手を置いた。
門までたった数十メートルではあるが、彼女の手を取って歩けるという幸せに私は浸った。




