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同じことが繰り返された。
十円玉はいいえに移動した後、もとの場所に戻った。
蘭子がもう一度言った。
「因番鬼様、因番鬼様。私を芽瑠瀬出素君の彼女にしてください。お願いします」
なにも変わらなかった。
十円玉はいいえ、そして中央へと移動しただけだった。
蘭子は十円玉を見つめたまま動かず、それ以上何も言わなかった。
それは私も同様だった。
蘭子は因番鬼様にたったひとつの願いを拒否されたこと、そして私は因番鬼様がこの学校に本当に実在していたことに、大きな動揺を覚えていた。
が、しばらくして蘭子が突然叫んだ。
「どうして! 因番鬼様、どうしてなの?」
すると十円玉が、今度は文字列のほうに移動した。
一つの文字の上で止まるとまた動き出し、そして文字の上で止まると再び動き出す。
それを数度繰り返して、十円玉は中央に戻った。
や・め・な・さ・い
十円玉はそう移動したのだ。
「やめなさい……ですって」
蘭子がそう言うと、十円玉がまた文字列に移動した。




