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十円玉は勢いよく、いいえのところに移動した。
蘭子の指をのせて。
私の指はその場から動かなかった。
指をわずかばかり十円玉から浮かしていたのだ。
蘭子が私の指を驚愕の表情で見ていた。
「蘭子。やっぱりあんたが動かしてんじゃないのよ」
「いや……わ。私は動かしていないわよ。ないったら」
蘭子は十円玉から指を離した。
「じゃあどうして十円玉が、いいえのところに動くのよ。まさか十円玉が一人で勝手に……」
私は言いたいことを最後まで言い終えることが出来なかった。
十円玉がゆっくりと中央の位置に戻ったからだ。
誰も十円玉には手を触れていないというのに。
ふたりそろって口を半開きに開け、その十円玉を化け物かなにかのように見ていたが、やがて意を決したごとくの強い口調で蘭子が言った。
「因番鬼様、因番鬼様。私を芽瑠瀬出素君の彼女にしてください。お願いします」
欄子の言葉に答えるかのように、十円玉がひとりでにいいえのところへ動いた。
そしてゆっくりと元の場所に戻った。
十円玉を見た後、お互いに顔を見合わせたが、蘭子がまた言った。
「因番鬼様、因番鬼様。私を芽瑠瀬出素君の彼女にしてください。お願いします」




