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夜天戦線  作者: シナノ
第一章 裏世界
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6話 ホームルーム

 朝食を食べ終えていざホームルームへ。

 寮の隣の棟に入って四階まで上がる。


 そういえば、さっきの右響ってやつも一年って言ってたよな。

 もしかしたら同じ教室なんてこともあるだろうか。

 そうであるならば気も楽になる。

 あいつならすぐにでも仲良くなれそうだからな。


 頭の中に友達という単語が浮かび、自然と口角が上がってしまう。

 別に友達がいなかったわけじゃないけど、新たな関係の始まりってものはいつでもワクワクするものだろ?

 他にも何人か生徒がいるのだろうか。

 みんな気のいい奴だといいな。


 そうこう考えているうちにホームルームに着いた。

 二ヶ月ぶりの教室。

 しかし、あの億劫な感覚はない。

 夜術とやらを楽しみにしている俺がいるからだろう。

 俺もビーム撃ったりするぞー!


 俺は期待を胸に思いきって扉を開ける。


「おお〜!転校生くんじゃん!」

「なになに!男の子!?」


 そこには二人の人影があった。

 一人はさっき俺のあんぱんを奪い取った張本人の右響紫音。

 もう一人は目が痛くなるような赤色の髪を持つ女だ。

 制服の上からでも分かるスタイルの良さ。

 不気味とも妖艶とも取れるニマニマとした笑み。

 瞳も髪色と同じような赤色をしている。

 そして何よりスタイルがいい。

 大切なことなので二度言いました。


「おはようございます。本日からこのクラスに転入する品野夕陽です。」


 人間は第一印象で七割の印象が決まると聞いたことがある。

 ここは好感の持てる態度で接することにしよう。


「右響さん、先ほどはどうも。」

「紫音でいいよ、夕陽。それに同い年だろ?タメ口でいいよ。」


 いきなり呼び捨てとは流石陽キャ、距離の詰め方が急だ。

 しかも嫌われないタイプの陽キャだ。

 こいつはモテる。

 そばにいたらおこぼれのチャンスがあるかもしれない。


「分かった。よろしく紫音。」

「うん!」


 と、そこで赤髪の女が俺の目の前まで歩いてきた。

 密着するような距離だ。

 ニマニマとした笑みが顔に張り付き、その赤い瞳は上目遣いで俺を見つめている。


 顔立ちも素晴らしいな。

 紫音も十分イケメンだし、この世界には美形しかいないのか。

 俺だけが取り残されている。


「ど、どうしましたか?」

「んふ〜、可愛い顔だぁ!」

「?ありがとうございます。」

「襲えばどんな顔になるのかなぁ?」


 え?今なんて?

 襲うって言いましたか?

 流石に聞き間違いか。


「私は黒鉄奈鞠(くろがねなまり)。夕陽くんって言うんだ。」

「は、はい。」


 黒鉄はその大きな胸を俺に押し当て、手を肩に回す。

 体は完全に密着し、甘い匂いが香ってくる。

 柔らかな感触に思わずその場所に目が行ってしまう。

 必死に目を逸らしても再び吸い込まれる。

 まるでブラックホールだ。


「いい反応してくれるね!煽情的だよ!」


 煽情的なのはどっちですかね!

 この刺激は童貞にはちと過激すぎる。

 尾骶骨のあたりがゾワゾワしてくるぞ。


「そこまでにしておきな黒鉄。夕陽が困ってるだろ。」

「いいじゃん。それに困ってるんじゃなくて喜んでるんだよ。ね?」

「え?あ、いや……。」


 正直最高です。

 でも、初日から変態のレッテルは貼られたくない。


「ほら、困ってるじゃん。」


 俺が言葉を詰まらせていると勘違いした紫音がそう言った。

 その言葉で黒鉄は俺から数歩後ろに下がった。

 ああ……楽園(エデン)が……。


「素直じゃないなぁ。」


 黒鉄は面白くなさそうな顔で頬を膨らませた。

 すると右響が俺の耳に口を近づけて小声で話しかけてくる。


「この子はちょっと特殊なんだ。行き過ぎる事もあるけど悪い子じゃないんだ。許してあげて。」


 確かに特殊かもな、あんな罪な性格と体。

 仕方ない、今回は右響とひとときの幸福感に免じて許してやろうではないか。


「分かった。よろしく、黒鉄さん。」

「アハハ!よろしくね!」


 俺が握手を求めると黒鉄は笑いながらその手を取った。

 女の子にしては少し硬い手だ。

 単に俺が女子の手を握ることがないからそう思うだけかもしれないが。


「一年生ってこの三人だけなの?」

「いや、あと一人いるよ。」

「あと一人……」


 その時ガラガラと扉が開く音がした。

 俺は扉の方へと視線を送って目を見開いた。


 そこには一人の女が部屋に入ってくる姿があった。

 その黒髪は流れるように持ち主の頭の軌跡を辿り、見る者を全て虜にするほど美しい。

 そして、その細い腰には一本の日本刀が差されていた。

 間違いない、あの時俺を助けてくれた人だ。


「あの!」


 気付けば俺は話しかけていた。


「誰だ?」

「えっと、先日助けていただいた品野夕陽です。」

「ああ、あの時の遭難者か。」


 彼女は俺が名乗ると何か合点がいったように頷いた。

 

「先生がいきなり保護するなんて言ったから驚いたんだが、そういうことか。」


 どういうことだ。

 何も話がつかめないんだけど。


 キョトンとする俺に彼女は右手を差し出す。


「私は夜敷雅(やしきみやび)。よろしく。」

「よろしくお願いします。」


 俺もその手を取って応えた。

 クールに微笑む彼女は俺の目が潰れそうなほど眩しかった。

 さっきの黒鉄の行動よりも心臓がバクバクと拍動している。

 考えていたことが全部吹っ飛んでしまった。


「はい、席に着いてください。」


 いきなり、教壇から声が聞こえた。

 見るとそこには四平の姿があった。

 もしかして教師って四平?

 でも、たしかに教師っぽいと言われればそうか。

 メガネも二つだからインテリ度も二倍だ。

 とりあえず座ろう。


「みんなはもう挨拶が済んだかもしれないけど、今日からこのクラスに新しく転入する人がいます。品野、自己紹介お願い。」

「え?あ、はい。」


 俺はバッと立ち上がって他の三人に向き直る。


「品野夕陽です。この世界のことは一ミリも分かってないので助けてもらうことが多々あるかもしれません。よろしくお願いします。」


 拍手喝采とかはしてくれないか……。

 別に気にしてないけどね?

 

「それじゃ、今日は品野の初日だし、オリエンテーションみたいなものをしようと思います。」

「え!じゃあ授業は!?」

「時間次第だけど、今日は休みかな。」

「よっしゃあ!」


 授業がないと聞いて紫音がハイテンションになる。

 子供っぽい所もモテそうだ。

 他の女子二人は……どっちでも良さそうだな。


「よし、それじゃ体育館に行こうか。」


 俺たちは四平の言葉に返事をして体育館に向かった。

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