22話 作戦会議
目が覚めるとそこには青い空が見えた。
木々の葉の隙間からこぼれる光に思わず目を細めてしまう。
それと同時に深見に気絶させられたことを思い出し、バッと体を跳ね起こす。
どのくらい寝てた?
空が明るいのを見ると日をまたいでいるのは確かだ。
太陽の位置的にもまだ午前だろう。
だいぶ長い時間無駄にした。
「あ、夕陽起きた?」
「紫音……。」
あたりを見渡すと全員朝食を食べているところだった。
丸焼きにされたイノシシを囲んでいる。
ていうか深見のやつしれっとカップ麺持ってきてたよな。
ずるい。
「昨日は残念だったね。俺は三時間くらい前に起きたんだけど、顔がボコボコの夕陽が寝てたからびっくりしたよ。」
確かに顔面をすっごい殴られた記憶がある。
あの人も本気じゃなかったとはいえ夜気のガードも間に合わなかったしモロに食らったんだよな。
思い出したらまたじんじんと痛んできた。
この痛みも吸収してほしいよ。
あ、そうだ。
俺の夜術。
昨日初めて意識的に使った。
効果は多分衝撃の吸収。
……地味だよな。
いや、強いと思うよ?ダメージがないってのは。
でも何ていうか俺も亀とかビッグバンとか破ァ!てしたいと思ってたというか。
攻撃系でなんかかっこいい能力を求めてたんだよね。
そう考えるとなんか期待外れって思っちゃったんだよね。
でもまあ、能力ってのは応用力で輝くものだし、思考力と判断力を鍛えればいいだけだ。
観点Ⅱだ。
「夕陽?どっか痛む?」
俺が考え込んでいると紫音が心配そうに顔を覗き込んできた。
「ううん、大丈夫。」
「そっか、それならこっち来て。この交流会を攻略する作戦を考え直すから。」
そう言われて、俺は残り二人が囲んでいる焚き火の前に腰掛ける。
イノシシは黒鉄がすでに食べ終わっていた。
「よし、揃ったな。」
夜敷は俺が座ったのを見て話し始める。
どことなく悔しそうな顔をしているように見える。
「私は少し……いや、かなり深見剣山という男を甘く見ていた。本当に申し訳ないと思う。」
夜敷は頭を下げた。
でも、これは夜敷のせいじゃない。
俺もあの人の動きは事前に見ていた。
その危険性についてもっと議論すればよかったんだ。
何より、深見がこんなにも早くこっちに来ることを予測できていればよかったんだ。
「これは夜敷のせいじゃないよ。」
「私も負けちゃったしなあ。」
紫音が俺の気持ちを代わりに言ってくれた。
「この中で師匠のことをよく知っているのは私だ。本気の師匠なんて見たこともないが、師匠が使う技を事前に共有しておく。」
たしかにそれは重要だ。
情報共有はしたほうがいい。
俺達は楽観視しすぎてたんだ。
そこから俺達は夜敷の話を聞いた。
深見剣山という男について知っていることをすべて。
まず深見の戦闘方法について。
深見の戦闘方法は深見が独自で作り上げた『深見流』という流派を使うらしい。
深見流と一括りにされているが、その中に一刀流剣術、二刀流剣術、柔術などなど様々な流派に精通しているらしい。
中でも『深見流一刀術』と呼ばれる一本の刀での戦闘を好むそうだ。
夜気の操作にも優れており、体に纏えば鎧、ものに纏わせば刃物、身体能力は一流のアスリートの動きが赤ちゃんのハイハイレベルに見えてしまうほど。
そして厄介なのが歩法。
深見の柔術には無音高速の特殊な歩法があるという。
それが『猫足』。
可愛い名前とは裏腹に厄介な技であり、呼吸、死角、筋肉の使い方、空気の揺れ、視線誘導、相手の瞬きのタイミングを見極め、たとえ対面した状態でも気づかれることなく近づけるというもの。
深見流最高難易度の技らしい。
真似事程度にできるやつもいるが、まだ深見以外誰もまともに会得してないとか。
さて、ここまで聞いてて勝てる要素が一つも見当たらないのだが、この第一関門を突破できるやつはいるのだろうか。
交流会で誰も突破できませんでしたは運営側が悪いでしょ。
「深見さんに弱点はないのか?」
「ない……と言いたいところだが、あの人も人間だ。何か弱点があるはずだ。」
完全無欠の最強人間ってわけじゃない。必ずどこかに穴はある。完全無穴は絶対にない。
「深見さんの日常生活とかでなんかヒントないかな。」
「日常?」
紫音が聞く。
「ほら、人間ってやっぱりオフのときに素が出たり油断したりするじゃん?その時に何かないかなって。」
なるほど、たしかに一理ありそうな意見だ。
でも、あの人が隙を見せるようなときってあるのか?
「うーん、私も私生活はあまり知らないのだが、映画や漫画を好んでいるのは知っているな。気に入ったセリフやシチュエーションをメモって実際の戦闘のときにカンペとして使っている。」
改めて聞くとキモい趣味だな。
現実でアニメの再現とかするのは小学生までだろ。
でもまぁ人の趣味に口出ししちゃいけないか。
「私も前にフカミが変なことしてるの見た!」
「おお、どんなだった。」
「なんかねぇ、いっつも刀の鞘に付けてる女の子のキーホルダーをずっと眺めてた!」
言っちゃ悪いが不気味だな。
あんなクールな感じのおじさんが女キャラのキーホルダー眺めてるのか。
「あの人そんなことしてるんだ。俺はちょっと前にアニメについて話したことがあるけど、最近のアニメ業界は原作を尊重してないとかグチグチ言ってたよ。俺はあんまりわからなかったから「へー」って感じだったけど。」
しかも厄介オタクなのかよ。
まぁ分からんでもないがな。
「得られた情報はこれくらいか……」
「夕陽なんか思いついた?」
「うーん……。」
今までの話をギュッとまとめると戦闘強すぎ厄介オタクおじさんってところか。
弱点らしい弱点は出てこなかったし、最悪体当たり戦法を繰り返すしかないのかもしれない。
強いて言うならキーホルダーが大切だと言うことくらいか。
……いや、待てよ?
これならどうだ。
あんまりいい案だとは思えないが、俺の予測が合っているならば勝機があるようにも思える。
この試験を突破できるかもしれない。
「みんな聞いてくれ。」
俺は全員を注目させた。
「深見に一撃入れる作戦を思いついた。」
俺は周りに聞こえないように小さな声で説明した。
「アハ!なにそれ!」
「そんな作戦……でもあるのか?」
「そんなにうまくいくとは思えないけど、やる価値はあるんじゃないかな!」
三人の反応は一貫してイマイチなものであったが、俺の作戦は採用された。
ここから反撃の狼煙を上げる。




