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夜天戦線  作者: シナノ
第三章 交流会
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20話 襲撃

 交流会開始から半日が経った。

 深見は今どこにいるのだろうか。

 勝手な偏見だけど、あの人は積極的に攻め込まずに行き当たりばったりで戦うタイプだと思う。

 出会えば終わりのモンスターだが、出会わなければなんてことない。

 こっちには索敵の右響がいるから、近づいていると感じたら隠れるなり何なりできる。

 このまま慎重に三日後までいけば突破できる。

 

 それと、俺たちが拠点にしているところの説明をしておこう。

 辺りはなんてことない森の中だ。

 そこの一部分に丸く空間が空いているので、そこに焚き火を設置している。

 深見にバレないように必要じゃない時は消している。

 火は黒鉄が金属の手をぶつけるだけで出てくるから大丈夫だ。

 そしてその拠点の周りにはカラカラの落ち葉のカーペットが四方八方に敷かれている。

 これで誰かが近づけば音が鳴って右響が気付きやすい。

 自然の防犯設備だ。


 食料とかは基本野生動物や昆虫を狩って食べる。

 現世で開催したのは夜の世界だと生き物がいないからだろう。

 それにしても、舌の肥えた俺には調味料のかかってない肉や虫の類は不味くてテンションが下がる。

 我儘だと言われればそれまでだが、ここ日本だよ?

 SUSHIとかTEMPURAとか食べたいじゃん?


 説明するべきことはこのくらいか。

 現状の話をしよう。

 俺たちは今……


「それでさぁ、その三日放置したカレー食べたら腹下して動けなくなったんだよねぇ。」

「アハハ!ダサ!」


 雑談に花を咲かせていた。


 なんとも緊張感のない空気である。

 さっきまで意気込んでいた俺が恥ずかしくなるほどに。

 紫音と黒鉄はまだしも、夜敷もその輪の中にいる。

 誰も張り詰めていない。


「なぁ、もっと警戒した方がいいんじゃないか?」


 俺は堪らず聞いてみた。


「品野、そんな気張らなくて大丈夫だ。右響の耳もあるし、音の出やすい地面だから気配がしたらすぐ隠れられる。」

「そうだよ、俺を信じなさい!」

「でも右響は頼りにならないしなぁ。」

「おい!」


 こいつらが言うなら……まぁ大丈夫なんだろう。

 俺より経験も深いしな。

 いや、経験が豊富だから油断することもあるのか。

 慣れは恐ろしい。

 でも、みんながこうだと俺も少し落ち着いてきた。

 これから三日間気を張り続けるってのも疲れるもんな。

 

「ん?」


 すると、紫音が何かの気配を察知した。

 それと同時に俺たちは身構える。


「どうした。」

「この足音はタヌキかな?食べる?」


 どうやらただの野生動物だったらしい。

 ふぅ、驚かせやがって。少しだけビビったよ。少しだけ。

 

「タヌキか……でも今は昼のイノシシが余っているからいいだろう。無駄な殺生は避けよう。」

「えー、食べたーい。」

「ダメだ。」


 黒鉄は通常運転だな。

 俺には理解できない。


「ん?」

 

 ふと、ポケットの携帯が鳴った。

 俺だけでなく、全員のが。

 深見から全体連絡だ。

 メールを開くとこう書かれてあった。


『楽しんでるか?俺はもう100人は蹴散らした。意外と楽しい。』

 

「……まじ!?」

「どんなペースだよ……。」


 始まってからまだ12時間ほど。

 1時間に8人はボコられてるってことか。

 この広いステージでこれならかなり積極的に動いている可能性が出てきたな。

 気を抜けない。


「とりあえず、今日は休んで明日に備えよう。」

「そうだね、初日に出会さなかったのは運が良かった。」


 深見は今どこらへんにいるだろうか。

 流石にまだこっちにはきてないと思うが、スタート地点からは結構離れただろう。

 

 

「右響は私と見張りね!」

「はいはい。」


 2人が立ち上がり、見張りの仕事に就こうとする。

 

「じゃあ俺たちは体を休めよっか。」

 

 その声ははこの場にいる4人のものではなかった。

 振り向くと倒れた丸太に腰をかける1人の男が手を膝にかけてこちらを見ていた。

 

 深見だ。


 そう認識した瞬間、夜敷と黒鉄が動いた。

 夜敷の迷いのない抜刀からの横薙ぎ、黒鉄の金属化した腕の刺突。

 深見はそれを飛び退いて回避する。


「いきなりだなぁ。人生はゆとりが大切だぞ。」

「あんなに殺気を放っておいてよく言いますね……。」


 いつだ、いつからここにいた。

 それより、紫音は気づけなかったのか?

 こんな枯葉だらけの山道を足音もなく近づいてきたのか?

 あの時と同じだ。

 接近されたことに気づけないあの感覚だ。


「随分と早いですね深見さん。」

「裏をかいたんだ。どうだ?驚いただろう。まさかこんなに早く山の裏に来るなんてってな。」


 悠々と語る深見の立ち姿には素人の俺でもわかるほど隙がなかった。

 そして深見は胸ポケットからいつものように紙を取り出す。


「ここで会ったが100年目。いざ尋常に、勝負!」

 

 そう言ってプラスチック製の剣を腰から抜いた。

 それと同時に背中を舐めるような寒気を覚えた。

 シルラの時よりも遥かに強い怯え。


「はぁ!」


 夜敷が先手を打つ。

 それに続いて黒鉄も腕を刃物に変えて攻撃を仕掛ける。

 紫音は全員にバフをかけ後衛に徹した。

 俺だけがワンテンポかツーテンポ遅れた。

 そして、その遅れたテンポは置いていかれるのに十分な間だった。


 2人の斬撃は空を切り、深見の姿が消えた。


「むぐっ!」


 後ろから紫音の短い悲鳴が聞こえた。

 振り返るといつの間にか背後に回った深見が紫音の顔面を掴んで持ち上げていた。


「こういうのはバフ役を潰せば有意に動ける。覚えとけよ。」


 そう言って紫音の鳩尾に剣の柄をめり込ませて気絶させた。

 それと同時に俺たちの漲っていた力が失われていくのが分かった。

 

「そして次に一番強い奴。」


 一瞬で夜敷との間合いを詰め、首に向かって剣を振るった。

 夜敷はかろうじてその攻撃を受け止め反撃を試みる。

 しかし、それも虚しく見えない2撃目によって地面へと沈んだ。


「アハハ!」

「おっと」

 

 2人がやられたことに動揺も見せず、黒鉄が反撃する。

 力任せの斬撃があらゆる方向から深見を襲うが、それも全て躱すかいなされる。


「黒鉄、お前を倒す時のセリフは覚えてきたぜ。」


 そして、深見の剣が黒鉄の頭に直撃し、頭が下にブレる。

 瞬間、黒鉄の体が全て金属になり液体化する。

 蛇のようにうねって深見の体に巻きつこうと移動する。

 それを高くジャンプして避け、回転しながら再び黒鉄に向かって剣を振るった。

 プラスチックから出るとは思えない音と火花が散り、黒鉄が白目を剥いて倒れた。


「|地獄で会おうぜ、《アスタ・ラ・ビスタ、ベイビー》ベイビー!」


 残ったのは深見と……俺。


「どうした品野。前見せた威勢はどこに捨ててきた。」


 その言葉にハッとして俺は構えた。

 まただ。

 また俺だけ何もしてない。

 何も変われてない。


「ま、お前には特別手加減してやる。じゃないと成長の糧にすらできないだろうからな。」

「お気遣い感謝します……。」

「さぁかかってこい、じゃなくてえっと……かかってこいや(シャルウィダンス?)」


 それが、開始の合図となった。

 

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