↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜天戦線  作者: シナノ
第三章 交流会
19/27

18話 先輩

 交流会当日。


 俺たちは現世に行き、霧野山と呼ばれる山の麓に来た。

 周辺に住宅街などは見当たらず、人気もない。

 自然に囲まれ人工物なども一切ない。

 無人島の山のような雰囲気だ。


 そして今、この場所には大きな祭りでも始まるのかと言うほどの人が集まっている。

 ざっと見て五百人は居るだろうか。

 もしかしたらもっと多いかもしれない。

 スーツに身を包む者もいれば、忍者のような黒装束を着用している者もいる。

 これが全員夜天閣の関係者か。


「すごい人だなぁ。」

「私も一ヶ所に全員が集まるのを見るのは初めてだ。」

「みんな強そ〜!」

「少なくとも右響よりは強い人ばっかだねぇ。」

「何を……!」


 それにしても多いな。

 どんな人がいるのか観察しておこう。

 

 あのスーツの人は暗狩の人だろうか。

 前に見た深見と同じ格好だ。

 あれは……俺達と同じ学生服だな、先輩か?

 6人くらいいる。


「お?」


 ふと、その先輩らしき人達の一人が振り向き、スタスタとこっちに近づいて来た。

 髪がオレンジと赤の混色で肩幅が俺の身長ほどあるんじゃないかと思うほど広い大男。

 口には鉄製のマスクを着けており明らかに堅気ではない強面でこっちを睨んでいる。


「あ、烈堂先輩!お久しぶりです!」

「……おう」


 烈堂先輩と言われた男は紫音の挨拶もほどほどに俺の前まで歩いて来た。

 そして、その鋭い目つきで俺を貫く。


「紹介するね夕陽。この人は烈堂猛(れつどうたける)先輩。俺らの一個上だよ。」


 そう紹介されて俺はもう一度彼を見る。

 なんか獲物を見る目に似ている。

 

「は、初めまして……。」

「……。」

「品野夕陽と申します……。」

「……お前。」

「は、はい。」

「見ない顔だな……。」


 こ、怖ぇ!

 声ひっくい!

 なんか一文字一文字に殺意を感じる!


「最近転入してきた子なんですよ。俺にも後輩ができたみたいで嬉しいんですよ!」

「そうか……良かったな……。」


 烈堂は俺を下から舐めるように凝視する。


「なぁ……。」

「はい。」

「励めよ……。」


 あれ、でも会話的には悪い人には見えないな。

 それどころか良い人っぽい。

 俺とした事が先入観で勝手に相手を決めつけていたみたいだ。

 申し訳ない。


「なになにぃ?たけちん、また一年坊いじめてんの?」


 すると烈堂の後ろから5人の男女が歩いて来た。


「ラキナ、あれはいじめてるんじゃ無いと思う。」

「はぁ?どーみてもいじめじゃん。」

「確かにラキナが言うならいじめだと思う。」


 ノッポの坊主頭男とギャルのような金髪女がそんなやり取りをする。


「おお!先輩方お揃いで!」

「やっほ、しおちんとミヤビンとマリと……だれ?」


 女は俺の方を見てそう問いかけてくる。


「初めまして、品野夕陽です。」

「転校生かなんかだね。あたしは宝塚(たからづか)ラキナ。こっちが彼氏の桂刀哉(かつらとうや)。」


 俺は桂という男の方を見る。

 背高いな。

 2メートルはありそうだ。


「新入生。」

「はい。」

「ラキナを変な目で見たら……殺す。」

「……は、はい。」


 やばい人だった。

 結構ガチの顔で殺すって言われた。

 関わらないでおこう。


「ヘイヘイヘイヘーイ!雅〜!奈鞠〜!俺が来たぜ〜い!」


 そこでまた変な奴がくるくると回転しながら二人に近づき、抱きつこうと飛びついた。

 しかし、夜敷が触られる前に顔面をホールドし、その動きを止める。

 やがてその頭蓋骨からメキメキと音が鳴り始めた。


「痛い痛い痛いイタタタ!」

「お久しぶりですね。後山さん。」

「久しぶり!アトヤマ!」


 悶絶する男はなんとか夜敷の手を振り払い、顔を抑えてのたうち回った。


「何するんだ先輩に!」

「そっちこそ後輩に何してんすか。」

「そりゃ挨拶のハグだよ。」

「いりません、不快です。」


 なんだこの変人は。

 白い髪に赤いベレー帽を被った変態。

 服も学生服の内側に絵の具が飛び散ったようなTシャツを着ている。


「夜敷、その人は?」

「ああ、この人は後山美一(あとやまびいち)。変態だ。」

「変態とは失礼な。特殊性癖なんて持ってないのに。」


 後山はパンパンと土埃を払い、俺に向いた。

 そして、間髪入れずに聞いて来た。


「君、芸術とはなんだと思う?」

「へ?」


 唐突な質問だった。

 芸術……美術の授業得意じゃなかったからわかんないな。

 でも、どっかの有名な人が爆発って言ってたっけ。


「爆発……ですか?」

「ちがぁーーーう!」


 耳が壊れるくらいの大音声。

 耳がキーンと鳴る。


「違いますか……」

「全然違う!」

「じゃあ、なんですか?」


 そう聞くと後山はニパっと顔を明るませた。


「よく聞いてくれた!芸術とはね……ズバリ!女だ!」


 ……女?


「そう!尻や胸が描く曲線美!男と違う柔らかな筋肉!男の本能を刺激するシルエットそれはまさに!芸術なのだよ!」


 ………………そうですか。


「な、きもいだろ?」

「変態さんなんだよねぇ」

「はぅ!それすらもイイ!録音するからもう一回言ってくれないかなぁ奈鞠!」

 

 黒鉄はキモいと言って顔面を踏みつけ、文字通り一蹴した。

 ただ、それでも嬉しそうな変態はもう救いようが無いと思った。


「あれ、あのバカ兄弟は?」


 宝塚が辺りを見渡して呟く。

 確かにさっき見た時は6人居たのに、ここには4人しかいない。

 確かに見た目がそっくりな二人組が居たんだけど今はどこにも見当たらない。


「多分迷子になってると思う。」

「いや、あの二人のことだし、どうせどっかで喧嘩でもしてんでしょ。」

「ラキナがそう言うなら俺もそう思う。」


 こいつ全部肯定してやがる。

 尻に敷かれるタイプの男だ。


「ん゛っん!あーああー聞こえるかー。」


 すると突然、聞いたことのある声が森に響いた。

 声のする方を見ると、一人の男がメガホンを片手にカンペを音読しているところだった。


「えー開始時間になりましたので始めます。今交流会説明役の深見です。」


 あの暗狩の人だ。

 説明役するってことはやっぱり偉い立場なんだろう。

 なんたって隊長だもんな。


「分かってるとは思いますが、今から二週間に渡り、この森でサバイバルをし、各担当者の出すクエストをクリアしながら山の頂上を目指してもらいます。

 えー交流会と名がついてますが内容はほぼ試験みたいなもんだ。」


 そして2枚目のカンペを取り出そうと懐を漁る。

 しかし、いつまで経っても紙が出てこなかった。


「……説明は以上です。では、始めてください。」


 失くしたのかよ。


 締まらない感じで始まったが、今の言葉で奮起する者、雄叫びを上げる者など、一気に賑やかになった。

 そしてゾロゾロと山の頂上を目指し、登り始める。


 一人目が意気揚々と山に踏み込もうとした途端、深見が手で制止する。

 何か問題だろうか。


「あー思い出した。そのカンペを失くしたんだ。」


 深見は咳払いを一つしてこの場の全員に直る。


「改めて、今交流会説明役'兼'零(ぜろ)号目試験官、深見です。」


 瞬間、あんなにも賑やかだった会場が静けさに包まれた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。