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夜天戦線  作者: シナノ
第二章 初任務
12/27

12話 初任務

書き溜めに追いついてしまいました!これから投稿頻度は下がると思いますが週に2、3話のペースを目指して頑張っていきます!

 俺たちは夜の世界に戻り、メールに書かれていた森林に到着した。

 見た目は至って普通の森に見える。

 木が生い茂っていて膝丈くらいの草が密集している。

 人が通る道ではないが通れなくもない道だ。

 

「確かこの辺りに川篠さんがいるはずなんだけどな。」

「周りに誰もいないぞ?」


 俺たちは一緒に行動するはずのグループと合流できないでいた。

 もしかして先に行ってしまったか?

 俺たちがラーメン食ってる間に待ちかねて出発した?

 いや、メールが来たのは食後だから違うか。


「おーい!こっちや!」


 すると、後ろから呼ぶ声が聞こえた。

 振り向くとそこには筋肉質な大男を先頭に三人の女子が男の後を追いかけるようにしてこちらに向かってきている姿があった。

 女子のうち二人は夜敷と黒鉄だ。

 あいつらも同じ任務なのか。


「すまんすまん、遅れてしもうたわ。」


 この人が川篠か。

 黒髪の短髪にもみあげと繋がった顎髭。

 適度に鍛えられた丈夫そうな肉体。

 ゴツいな。上腕二頭筋が美しい。

 

「いえ、俺たちも来たところですよ、川篠さん。」

「ハッハー!そりゃ良かった!ほなこれで全員やな。」


 六人しかいないけど全員なのか。

 まあランクもEだし、難易度高そうって感じでも無いからこのくらいでいいのか。

 ここはプロの動きを見ておこう。


「今回は俺と宇喜田と一年ちゃんたちと……すまん、そこの兄ちゃん誰や?」


 川篠はメンバーを順番に確認していき、最後に俺を見てそう聞いてくる。


「あ、どうも。最近転入してきました、品野夕陽です。」

「おお!てことは新しい一年ちゃんってことやな?俺は夜天閣戦闘隊所属川篠晴(かわしのはる)っちゅうもんや。ランクはD。こっちが副リーダーで俺の後輩の宇喜田杏(うきたあん)。ほら、あいさつせい。」


 川篠はそう言って後ろに控えていた茶髪の女の背中をポンと叩き、挨拶するよう促した。


「あ、えっと、宇喜田杏です。川篠さんと同じでDランクです……お願いします。」


 宇喜田はボソボソと自己紹介を終えた。

 目が前髪で隠れて合わない。

 縮こまったような佇まいを見るに人と話すのが得意じゃ無いんだろう。


「品野」


 すると、夜敷がこっちにきて話しかけてきた。

 後ろには黒鉄もいる。

 

「今日が初任務だろう。あまり気張るなよ。」

「うん、分かった。」


 そうだよな、気張ってもいいパフォーマンスはできない。

 リラックスリラックス。

 でも少し緊張するな。

 

「夕陽くんはー、私が守ってあげよっかぁ?」


 俺が深呼吸して息を整えていると黒鉄が顔を覗き込むようにしてそう言ってきた。

 そして口を俺の耳に近付けて囁くように言う。


「それでそれでぇ、守ってあげたお礼にぃ、何かいいことしてもらおっかなぁ。」


 いいこと……。

 いいことってつまりイイコトですか?

 いいんですか、イイコトして。

 

「こら、奈鞠。あんまり品野を揶揄うなよ。」

「アハ、緊張ほぐしてあげてるんだよ。」

「黒鉄はもっと緊張感持った方がいいよ。」


「ほいほーい、一年ちゃんたちー!仲ええんは結構やが、そろそろ出発すんでー!」


 川篠の言葉に返事をしつつ集合し、俺たちは遂に森の中に入った。


「夜魔の反応があったんはここら辺や。気ぃ引き締めよ。

 右響!索敵!」

「はい。」

 

 そう言われて紫音はヘッドフォンを耳に当て、目を瞑った。  そして、足でトントンと地面を叩き始めた。

 見たことある。イルカとかの音で位置わかるやつだ。

 エコなんたらってやつだ。


「……前方300m先に5体いますね。どれもFランクです。」

「分かった。移動するで。」


 しばらく先に進むと、森の中の開けた場所に出た。

 そこを見るとあの時見たようなジャガイモ頭が5体いた。

 相変わらず不気味な見た目してる。

 初めて見た時のこと思い出してしまう。

 

「よっし、ほな作戦伝えるで。右響はそのまま周囲の索敵、黒鉄、夜敷は俺と宇喜田で注意を引くから撃破してくれ。品野は……まぁ、好きにやってくれ!」

「え」

「了解」

「はぁい!」


 好きにやれってなんだよ。

 なんでもいいが一番困るんだぞ。

 とりあえず紫音にくっついとくか。


「行くで、宇喜田。」

「はい。」

「しゃあ!気合い入れてけ一年ちゃんたち!」


 そう言って川篠は真っ先に夜魔の前へと躍り出た。

 あまりにも大声を出すので、夜魔も早い段階でこちらに気付き、呻き声を上げながら襲いかかってくる。


「てぁ!」


 川篠は勢いよく夜魔に向かって走り、顔面に思いっきりラリアットをくらわせた。

 夜魔の顔面はメキョッと陥没し、数メートル吹っ飛んだ。

 やったか?


「品野、奈鞠、私たちも行くぞ!」

「アハ!」

「え、ちょ!俺も!?」


 そう言って夜敷と黒鉄も飛び出した。

 俺は有無を言う暇もなく置いていかれ、少し遅れて二人についていく。


 川篠が先ほど吹っ飛ばした夜魔がのっそりと起き上がり始めていた。

 しかし、そこを夜敷が刀で首を切り落とす。

 華麗な身のこなしだ。


「黒鉄!こっちも追加や!」

「来ーい!」


 川篠は再び夜魔の顔面をぶん殴りぶっ飛ばす。

 黒鉄は自分の腕を刃に変え、吹っ飛んだ夜魔の勢いを使って夜魔の頭を串刺しにし、固定する。

 もう片方の手も刃に変化させ、もがく夜魔の首を落とした。

 黒鉄の顔に紫色の血が飛び散る。


「アハハ!哀れ!」

 

 言葉選びがいちいち怖い。


 やばい、出番がない。

 俺のやることは……ん?なんだあれ。

 

 見れば他の三体が密集している。

 上に手を伸ばして何かを捕まえようとしているみたいだ。

 俺はその先を追うように上に視線を移動させる。


「うわ!」


 そこには空中に浮いている宇喜田の姿があった。

 すごい、あんな夜術もあるのか。

 確かに引きつけ役として最高の性能をしている。


「ボーッとするな!品野!夜魔は頭が弱点だ、やるぞ!」

「え!あ、うん!」

「行くよぉ!」


 俺は夜敷に叱責され無防備な夜魔に走る。

 俺より遥かに足が速い二人は両サイドの夜魔の首を素早く切り落とした。

 残るは後一匹。

 絶対しとめる!


「うおおぉぉぉ!」


 俺は雄叫びを上げながら走る。

 訓練で何回も練習した夜気の操作を惜しみなく発揮する。

 

 あ、やばい、何も攻撃方法考えてなかった!

 いや、なんでもいい!

 くらえ!俺の渾身の………


「ドロップキック!!!」

「グァオッ!!」

 

 夜魔は苦しそうな短い断末魔を吐いてその場に倒れた。

 そして、夜敷が首を切ってトドメを刺す。

 俺は慣れないドロップキックをしたせいで背中から地面にドサっと落っこちた。

 

「いてぇぇ!頭打ったぁ!」

「なんであそこでドロップキックなんだ……。」


 夜敷は呆れたように聞いてくる。

 

「運動できるようになったらやってみたくて……。」

「くだらんな。」

「私は面白いと思ったよ!」


 黒鉄、それフォローになってない。

 俺、ウケ狙ってない。


「よぉし!一通り終わったみたいやな!ナイスファイトやったで品野!降りてこい、宇喜田!」

「はい……。」


 浮いていた宇喜田は呼ばれてゆっくりと下降してくる。

 いいな、俺も空を自由に飛びたいな。


「右響!周りに敵は!?」

「この奥に神社があります!そこに夜魔の気配を感じます!」

「よぉし分かった!今からそこ行ってみるで!」

「でも、なんか妙だな、ボヤッとしてるような……。」

「行ったら分かるやろ。さ、行くで!今日は終わったらなんか奢ったるで!」

「太っ腹ぁ〜!」


 訝しげな表情を浮かべる紫音の言葉を軽く流し、川篠はどんどん先へと進んでいく。

 俺はそれに少しの不安を覚えながらも集団の最後尾に着いていった。


 ーーー


「ほぉ、これか。」

「なんとも不気味な雰囲気ですね。」


 しばらく歩くと紫音の言う通り古びた神社があった。

 苔むした鳥居があり、両サイドに狛犬の像が見える。

 しかし、本殿の右半分はほぼ崩壊しているし、そこへ上がる階段も真っ二つに割れている。

 もう使われてない神社なのだろう。


「川篠さん、気をつけてください。」

「あん中か、数は。」

「1体です。でも……」

「なんや1体か!ほな総攻撃で一発やがな!」

「待ってくださいって!何かおかしいんです!」

「分かった分かった。ほなちょっくら様子見てくるがな。ちと待っとれ。」

「もっと慎重に……」

「安心せい、ベテランの勘が大丈夫言うとる。ベテランつっても万年Dだけどな!アッハッハ!」


 そう笑いながら川篠はズカズカと敷地内へと入っていき、本殿の前まで歩いた。

 そして、ガタガタの扉に手を掛ける。


「誰かおらへんか……おわっ!」


 その瞬間、建物の中から高速の小さな何かが飛び出し、扉を貫通した。

 それは正確に川篠の頭を狙っていたが、川篠は間一髪横に反れて回避した。

 川篠はその建物から後ろに飛び退き距離を取る。

 

「うるさいなぁ、誰?人間?」


 建物の中から声が聞こえ、足音が近づいてくる。

 そして、その声の主は穴が空いた扉を開けて姿を現した。

 雪のような白い髪、透き通る青い瞳をもった少年。

 額に禍々しい角があり、それが黒いフード付きのローブを貫通するように生えている。

 こいつも夜魔なのか……?

 見た目は人間に近いが。


「まじか……。」


 川篠がそんな言葉を漏らす。

 他のメンバーも戦慄した顔をして言葉を発せないでいる。


「せっかく心地よく寝てたのに……人間って間が悪いね。」


 奴がその言葉を言った瞬間、周りの空気が一気に重くなる。

 象にのしかかられたような圧に呼吸すらも困難になる。

 全員の額には冷や汗がべっとりと付着している。


「その姿、少なくともCランク以上の夜魔やな。」

「夜魔なんて野蛮な……ボクにはシルラって名前があるんだ。

 まぁ、名乗っても意味ないか。殺すし。」


 シルラと名乗る夜魔はダルそうな口調で言った。


「ベテランの勘が言うとるで……これは、あかん。」

「だから言ったじゃないですか、気を付けてって!」

「川篠さん!あの夜魔は危険です!引きましょう!」


 今まで威勢の良かった川篠が弱気な態度になる。

 そこに紫音と夜敷が口々に主張する。


「夜魔夜魔って……ムカつくなぁ。」


 シルラは頭を掻きむしり、不機嫌に言う。


「狙撃銃《スナイペル・オルージエ》」


 突然、シルラの右手に黒い粒子のようなものが集まる。

 それはやがてスナイパーライフルのような形になり、シルラの手に収まった。


「おいおい、夜術かよ……!」

「ボクの名前はシルラ。生きて帰れるものなら、名前くらいは覚えて帰ってね。」


 その真っ黒な銃口はゆっくりとこちら側に向けられた。

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