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夜天戦線  作者: シナノ
第二章 初任務
10/28

10話 学校生活

 俺が夜天閣に来てから約一週間が経った。

 生活に慣れるにはまだ時間はかかりそうだが、順調な生活が続いていると言っても過言ではない。


 俺の朝はラジオ体操から始まる。

 朝から体を動かしてないと怪我につながるような生活になったからな。

 体をほぐすことは大切だ。

 部屋には色々とものが増えた。

 俺の服だったり日用品だ。

 注文したら四平が揃えてくれたのだ。

 至れり尽くせりとはまさにこのこと。

 でもこれは立て替えてもらってるだけだから、金が入れば返さなければならない。

 タダより怖いものは無いし、俺もこっちの方がやりやすい。


 朝の日課が終わると次は、寮の水道で洗顔と歯磨きをする。

 そこで爆発した寝癖を直すまでがセットだ。

 同じ階に住んでいるはずの紫音とはなぜか会うことがない。

 まだ寝ているのだろうか。


 その後は一旦部屋に帰り、制服に着替えて食堂に行く。

 ガラッとした空間を突っ切ってパン売り場に向かう。


「おばちゃん、おはようございます。」

「ん……。」

「今日もこれ買いますね。」


 俺が挨拶をしながらお金を手渡すとプルプルと震える手で受け取って「毎度……」と消えそうな声で言う。

 

 初日以外は安定してあんぱんをゲットすることができているので大満足だ。

 しかも美味い。

 やっぱりあの粒あんが最高なんだよな。

 こしあん派とは分かり合えない。

 しかし、こんなに広い食堂だというのになぜ誰も人がいないのだろうか。

 俺たち一年生の他にも先輩とかもいるだろうし。

 もしかして俺が早起きなだけか?

 俺は大体6時に起きているけど、確かに学生ならたくさん寝たいよな。

 寮からなら8時に起きてもホームルームに間に合う。


 朝食を終えたら図書館に行く。

 この世界のことを知れるかもしれないと思ったのが理由の一つ。

 もう一つはホームルームまでの暇つぶしだな。

 図書館の入り口には持ち出し禁止と書かれた札が貼ってあり、中には生徒どころか司書さんと思しき人すら居なかった。

 圧倒的人手不足だ。

 内装は一般的な図書館のようだ。

 本棚が並んでおり、本が並んでいる。

 しかし、普通の図書館よりも本の数は少ない。

 なんでも、夜の世界が現世を写すのは建物の外観だけで、内装は反映されないらしい。

 ここにある本とかは現世から持ってきたものみたいだ。


 この図書館のいいところは漫画も置いてあるところなのだが、俺はそれには手を出さない。

 俺はある一つの本棚に向かう。

「夜天閣」と書かれた見出しプレートがあるコーナーだ。

 そこで俺は夜天閣に関する本を読み漁った。


「今日は……これかな。」


 俺は「一般人でも分かる夜の世界」と背表紙に書かれた本を手に取る。

 一般人向けとはありがたい。


 俺は適当な椅子に座って本をめくる。

 そして集中して読み進めていく。


「……夜気は夜の間に発生するエネルギー、か。」


 どうやら夜気は未知のエネルギーらしい。

 夜の間にどこからともなく生み出される力。

 それを使いこなせば夜術が使えると、そんな感じのことが書いてある。

 

 ふむふむ……夜術は人によって異なる性質を示すか。

 発現する能力の規則性は不明だけど、仮説では術者本人の潜在的に求めていることを具現化している説が濃厚らしい。

 俺が潜在的に求めているもの……相手をスレイブにしたりかな。

 まずい。性癖がバレる。

 


 ちょうど良い時間に読書を切り上げてホームルームに移動する。

 教室にはだいたい紫音がいる。

 そこに黒鉄がいたりいなかったりしている。

 二人は仲が良く、いつも黒鉄が揶揄い紫音が怒るというコントが繰り広げられる。

 夜敷は朝に弱いのか集合時間ギリギリに来る。


 午前は座学だ。

 週に3時間だけ「夜天史」という夜天閣版の歴史の授業がある。

 これは受けていて面白くて、この世界のことについて知りたい俺にとっては嬉しい授業だった。

 それ以外は国語や数学など、普通の高校生の授業なので退屈だ。

 紫音なんて一限から寝ている。

 ちなみに担当教員は全部四平だった。

 教えるの上手いしあいつハイスペックすぎるだろ。


 昼休憩にはまた食堂に行く。

 今回は紫音も一緒だ。

 今日は朝に買っておいた食券でカレーライスを注文した。

 味は美味しい。普通のカレーだ。

 紫音は少し高いカツカレーを注文した。

 

「しかし、なんで俺たちしかいないんだ?」


 相変わらずここには誰もいない。

 この空間に俺と紫音二人きり。

 あとおばちゃん。

 

「そりゃみんな現世に食べに行くからね。」

「え、そんな簡単に出れるもんなの?」

「うん、ホームルーム棟の最上階に『ホール』があるからそこから行けるよ。行くなら学生証いるから気をつけてね。」


 何それ説明されてない。

 そんな簡単に出られないと思ってここでの生活を楽しもうと意気込んだ矢先にかよ。

 今度行ってみよ。

 

 午後は3時間の訓練がある。

 メニューは最初の1時間で筋トレなどの基礎体力トレーニング、次の1時間で夜気の操作性を高める夜気トレーニング、最後の1時間で夜術を鍛える夜術トレーニングといった形になっている。

 夜術がない俺や夜敷は最後の1時間も夜気トレーニングをする。

 やればやるほど成長を感じられるので面白い。

 自分の体が信じられないほど軽く動くのは運動してて楽しくなる。

 ジャ◯キーくらいにはなったかな。


 夜は特にやることもないのでスマホをいじって過ごす。

 そういえば前に四平に夜天閣員用のアプリをインストールされた。

 これで任務の司令や情報のやり取りをするらしい。

 いわば社内メールみたいなものだな。

 今はまだ任務要請は来てないけど、これからどんどん送られてくるみたいだ。

 ちょっと楽しみ。


 そんな感じでダラダラと過ごして良い時間になって寝る。

 基本的にはこんな生活をしている。

 もう少ししたらここに司令とか特別任務とかが下ってスケジュールが変わることもあるだろうが、何もなければこの繰り返しだ。

 踏み外した学生の道を、行き当たりばったりで修正した感じがある。

 普通の青春は多分できないだろうけど、これはこれで退屈しなさそうな日が続きそうだと予感している。

 

 いつか、夜敷たちと肩を並べられるくらいになりたい。

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