【9】 魔女の◯◯
シロイ君が来ない。
ーーいや、それはいいんだ。
何度も私の方から拒絶したのだし、彼は私などと関わらない方が良いと思っている。
しかし、どうにも腑に落ちない。
ほんの一月だけれど、彼という人間の性格はある程度理解したつもりでいる。
黙って消えるような、そんな不義理な人間ではない。
一つ安心できるのは、神を自称するアレは関わっていないだろうという事だ。
ここ数十年、何の接触もしてこない。
少し前まで何かと理由をつけて干渉しようとしていたが、近頃は平穏そのものだ。
大方、他の暇つぶしでも見つけたのだろうな。
「シロイ君ーー」
んー、ダメだ。どうにも気になってしまう。
無事ならばそれで良い、少しだけ町の様子を見に行ってみようかな。
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私は魔法を用いて姿を消す事が出来る。
褒められたやり方ではないけれど、今までにも何度かこっそりと町に入り込んで、食料や日用品などを調達してきた。ああ、もちろん代金は置いて帰るよ。
そうやって今日も森を抜けて、町に入ってゆく。
ーーさて、ここからどうしようか。
なにせ、私はシロイ君の事を何も知らないんだ。
まさか聞いて回るわけにもいかないしねぇ。
「ねえ、広場のアレ、まだ残ってるらしいわよ」
なんて考えていると、私の目の前を、若い女性2人がお喋りしながら通り過ぎていく。
広場ねぇ。何度か通りがかった事はあるけれど、悪趣味な処刑台なるものが建っているだけの場所だったはずだけど。
すぐそこが広場だ、面白いものがあるなら見て行こうかな?
「もう3日も経つのに? 子供のあんな姿、いつまであんな風に晒すつもりなの……」
「腐りきるまで置いておくらしいよ。なんでも魔女が現れるかもだって!」
「あの子も、魔女を庇うようなことさえ言わなければ、生きたまま清められることなかったのに……」
ーー彼女たちは、なんの話をしているんだろうか。
「ぐっ……」
酷く懐かしい、願わくば二度と、体験したくなかった感覚に襲われた。頭のてっぺんから背中に向けて、冷たい氷の刃を突き立てられたような。
足下がふわふわと覚束なくなる、あの感覚。
行かないとーー。
私には、見届ける、責任がある。
一歩、一歩。
広場に近づいていく。
処刑台に、近づくにつれて、よく、見えてくる。
磔部分に、ぶら下がっている、なにか小さな、ナニカ。
一歩、一歩。
処刑台を登る、私の、足が。上手く、歩けない。
「うっ……あ、あああ……!」
普段、私が見下ろしている、彼は、私の目線の高さで吊られていてーー。
顔も、身体も、中途半端に焼けていて、
それでも、その赤く爛れた頬に触れると、
「……シロイ、君」
残った面影が、私の記憶と、重なった。




