【6】白い家の中で
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「はあ。……キミ、また来たのか」
「はい、また来ました」
自分でも驚いたのだけど、僕は気になったらしつこいタチだったらしい。
あれから一週間、僕は毎日森の奥の白い家に赴いた。
最初の三日は彼女も居留守を決め込んでいたが、四日目には根負けしたのか、
「キミという人間を見誤ったよ……」
と、呆れ顔だったが、ついに応対してくれた。
それからは学校が終われば毎日ここに来て、彼女とお話しをするのが僕の日課になっている。
「はあ。……こうなったらからには、お互いにきちんと自己紹介をしよう。私はローズ。ご存じの通り魔女だよ。しつこいキミはどんな素敵な名前かな?」
「貴女ーーローズさんって嫌味っぽいところあるよね。僕はシロイ・アクリルです。ご存じの通りしつこいです」
「意趣返しのつもりかな?それと私のことは呼び捨てにしてくれないか。さん付けには嫌な思い出があってね」
「分かったよ、ローズ」
「キミ……もとい、シロイ君は何だか雰囲気が変わったね」
「誰かと普通にお話しするのが嬉しくて……。迷惑だったらきちんとお話しする事もできるけど、そうした方がいいですか?」
「いや、好ましい変化だと言いたかったんだ。私には気遣い不要でいてくれ」
「ありがとう、ローズ!」
出会って数日でしかないが、ローズとの時間は心地いいと思う。なんというか、いつも感じていた不自然さがなくて、純粋に会話が楽しめている。
ローズもなんだかんだ付き合いがいいので、僕を無理に追い返したりはしない。
神さまみたいな存在も、今のところ僕を見逃す事にしているらしく、特に何の変化もないのだそう。
「まあ、なんだ、せっかく来たんだ。今日も紅茶
淹れてあげようじゃないか」
いつものようにローズはどこからティーセットをふわふわとを宙に浮かべて、机の上に並べている。
ひとりでにティーポットから紅茶が注がれる光景にもすっかり慣れてしまった。
「いつもありがとう。そうだ、今日はローズの暇つぶしに色々待ってきたんだ」
「ほう。それは楽しみだね」
「まずはこの本だよ。この前ーー」
「いい。いいぞ、シロイ君。本は素晴らしいんだ。決して無駄な物はない。こんな身の上になってからは中々手に入れる事が出来なくてな。我が家の本もどれだけ読み返したことか。それにしてもー」
「ろ、ローズ?」
ものすごく食い付いた。
早口で僕の言葉を遮って一気に捲し立てた。
恐る恐る彼女の名前を呼ぶと、ハッとした顔で口をつぐんだ。
「……すまない、少し浮かれすぎた。忘れてくれ」
「よ、喜んでくれて嬉しいよ?」
まだ短い時間しか過ごしていないけど、恥ずかしがる彼女の顔を見たのは初めてだった。
色々持っては来たけど、本でここまで喜ばれなら他の物は出さないでおこう。上回る事はできないだろうから。
「ごほん。シロイ君、お茶が入ったよ。今日はクッキーも焼いてある。良かったら食べなさい」
「いただきます。ーーあ、これすごく美味しい」
「そう言ってくれると、作り甲斐があるよ」
咳払いを一つして、ペースを取り戻すローズ。
なかなか見られない彼女の顔を見たなと思いながら、クッキーを一つ口に運んだ。
相変わらず美味しい。材料なんてどうしているのか疑問だけど、そもそもどんな材料が必要なのかも知らないから気にしない事にしている。
「好きなだけ食べていいからね」
そう言いながら、楽しそうに僕の持って来た本に目を通しているローズ。
一人になってから誰かと過ごす時間なんて殆どなくて、ここしばらくの僕にしたら、すごく幸せな時間を過ごせていたと思う。
ーーそして、この時間はそれから直ぐに終わりを迎えた。




