後始末その2 - お空の上 -
<<そう言えば、スズネさんも空飛べるんでしたね>>
<<あ、いえ。飛べるというか、無理やり飛んでいると言うか、飛ばしてると言うか……>>
魔法ってだいぶ万能なんです。
この間、空戦機動を軽く説明したのですよ。ペンとかインク壺みたいな小物を使って軽く。
その時に『こんな感じで』とイメージを表現してたら、ちゃんとその通りに飛んでくれたのですよね。手を離しても。
ちょっとしたサイコキネシスですよ。むしろ、ポルターガイストとかその辺ですか。
教授、第五の力ですよ!なんてね。
……まさか、その応用で私自身とか他の人を浮かせる(飛ばす)事が出来るとは思いませんでした。
ちょっと試してみたら、私自身を飛ばす事も出来るし、近くに居る人なんかもイメージ通りに空を飛ばせる事が出来ちゃったのです。
まぁ、基本はイメージなんですけどね。微妙に応用が利かないです。
私で言えば、
垂直離陸とかその場にとどまる事が出来る、ヘリコプターのイメージ。
一定の速度以上で前進している事を前提とした飛行機のイメージ。
この二種類です。
どちらも私のイメージでの話なので、ストールターンやコブラをする飛行機とか、宙返りとかバレルロール出来るヘリが混じってますけどね。
……ま、まぁ。それはともかく。
『私のイメージ』に限定されちゃいますけど、『こう飛べるよね』なイメージの範囲で私自身や近くの人を飛ばす事が出来ちゃったのです。
でも逆に言えば、『私のイメージ』でしか飛ばせられない。って事になるんですけどね。
私は下手に現代的な飛行機やヘリコプターの詳細を知っているので、UFOみたいな変な機動は現実的に想像できませんし、再現できません。
某宇宙戦艦系アニメのワープとか、某機動戦士系アニメの「レーザー砲を撃たれてから回避する」なんて動きも無理ですね。
ちなみに、こちらの世界で空を飛べる人と言えば、龍や竜族の方々、鳥さん、そして一部の魔法使い(浮かぶくらい)です。
<<私はちょっと距離とか地理良く分からないのですが、こっちの方向で良いんですか?>>
と、言っても大体の方角は分かりますよ。今は東北東に向かって飛んでます。
アッヅから大体5000ケルメルトル程度。私の世界で言えば5000km弱って所かな。
ちょうど、ノーヴとキーリの中間地点と言う感じですね。
<<このまま3アウア位飛べば陸地が見えます。そこで方向を修正して、後は2アウア位ですかね>>
今、私達は時速400ケルメルトル位で飛んでます。これは少し古い輸送機位の早さですね。
1アウアとちょっと飛んできたから……うん。キーリまで2600ケルメルトル、大体ど真ん中。私の感覚も馬鹿に出来ませんね。
……うん、私も良く飛ぼうと思った物だよね。大体2600kmって言ったら日本を縦断じゃない。
いくら燃料補給が無いって言っても、そんな長距離はそうそう飛びたくないよ。
車の運転で考えてみると良いよね。車だと大体600kmから700km位かな。約5~6時間って言うとそれ位だよね。
大体、東京から青森までの距離ですよ。う~ん、流石に陸路で行きたい距離じゃない。
<<流石に空路でも遠いですねぇ>>
まぁ、他国があんまり近すぎると、それはそれで問題が起きますよね。
程良く他国から離れてる事で、めんどくさい領土問題とか勢力争いに巻き込まれにくくて済むのは利点ですよね。
<<そうですね。私もこの航路は飛ばずに済ませてますから。だいぶ久しぶりですね>>
ん?
天龍さんって良く海外出張してなかったっけ。
ついこの間もギルドの依頼でキールに行ってたような?
<<転送だけで飛びまわってると体が鈍ります。若い頃はもう少し早く飛べていたつもりなのですが>>
あ、他国出張は転送使って行ってたのですね。
道理でいつも2,3日で帰ってくる訳です。
……。
<<えっと、何で今回は転送じゃなくて空路で……?>>
<<何を言っているんですか。こんな『お荷物』の転送なんて許可出しませんよ>>
クイクイっと前足?を上げる天龍さん。
あぁ、天龍さんは龍の姿になって(戻って?)飛んでます。
ワマイ以下三名は天龍さんに握られる形で同行中。さっきから悲鳴が聞こえる気がするけど気にしない。
そりゃ、龍に握られて外が見えない状態で、しかも何故か振られたら悲鳴も上げるよね。
まぁ、うん。私は天龍さんや伊予ちゃんに許可貰えば良いだろうけど、彼等は帰るだけなんだし許可下りないよね。
転送室は国や都市の重要区画に有るんだし、正規の賓客ならともかく不法入国の罪人には見せようと思いませんし。
<<それに、転送魔法の制約が有ります。スズネさんも転移先で認証されないと使用できません>>
あ、そういう仕組みだったんだ。
そりゃ、『どこでもご自由に~』だと危ないもんね。
自分の所で許可を出せば軍隊でも何でも自由自在に送り込めちゃうもん。
<<転送魔法ってそういう仕組みだったのですか。魔法が奥が深いですねぇ>>
私の想像が出来ない原理で動いてる。って事も有るかもしれませんけどね。
今、私が使ってる『飛行』の魔法だって、この世界の標準であればもっと違う形で実現しているのでしょうし。
<<魔法概論の基礎的な事なのですが、スズネさんは異世界人ですので疑問に思う事も有るのでしょう>>
テキストでも買ってきてもらって覚えようかしら。
そう言えば、ウィルヘムさんは魔法学院の先生でしたっけ。今度教えてもらおうっと。
<<私としてはスズネさんの魔法の方が良く分かりませんよ。この間使っていた『れぇだぁ』でしたっけ、理論は聞きましたが今一つ理解できません>>
うん。それは『電波』みたいな概念が無いと難しいかもね。
電波みたいに魔力にも指向性とか減衰が有る。って、実際に試してみなきゃ分からない事だったしね。
<<私の思い描いていた事とは違う方向性での実現でしたけどね>>
本当は、本物のレーダーみたいに魔力を出して反射波で位置を特定……みたいにしたかったのです。
そっちも試してみたけど、魔法を使っている人(物)じゃなければ反射してくれなかったんですよ。
何もしていない、ただ立っている人とか物では魔力を反射してくれなかったのでお蔵入りに。
<<こうやって魔力を使いながら飛んでいる物なら見つかるんですけどねぇ>>
てやっ。と探索用魔力波を射出。
うん。隣の天龍さんはちゃんと分かる。
……で、なんで前方から反射波が返ってくるのかな?
<<天龍さん、前方2から3ケルメルトルに反応。私達と同じくらいの速度で近付いてます>>
この魔法で探知出来るとなると、魔法を使っている物体。
そして、ここは四方が海。反応は空中。
となると、相手は飛行魔法で空を飛んでいる何者か。もしくは魔法を使っている飛行系魔物。
流石に、こんな距離を飛びまわる魔物なんて聞いた事は無い(資料にも無かったし)ので、何者かで有る可能性は高いです。
<<こちらには気付いていないはずですが……このままではすれ違います。どうしますか>>
<<あぁ、やっと来ましたか。事前に連絡していたのだから、もう少し早く来ても良いかと思ったのですが>>
む?お知り合いで?
空を飛んでくるんだし、竜族の人かな。
<<キーリ教の誇るエリート、天使ですよ。神の使いとか名乗ってはいますが、まぁ……翼が有るだけの人間ですね>>
あら、口振りからあんまり友好的な相手ではなさそう。
しかも、『キールの』じゃなくて『キーリ教の』って事は教会派な方々ですか。
これは一波乱……ですかね。
竜族(龍も)の人達は翼で空を飛んでいるように見えるけど、実際は魔法で空を飛んでいます。
翼は飾りか。と言えばそうでもないので……まぁ、魔法半分翼半分と言ったところでしょうか。
魔法無しで空を飛べる生き物は、この世界でも鳥(と、鳥の魔物)だけですね。
……あぁ、ハエとか蚊みたいな虫も居ました。




