はじめてのおつかい 終了!
「ほら、戦闘詳報あがったぞ。一応、目通しておけよ」
「私も三日分の勤務日報作ったよ。出張報告になるのかな、銀狼さんへの報告は戻ってから口頭でするみたいだから私の分は終わり」
「にゃ~……もう書類なんて嫌ニャーッ!」
あの後、一息付いてからカルメンさんと別れてミルム村の詰め所へ。
護衛任務の終了報告をするための報告書を、各自分担して作ってるんだけど……。
「スズネぇ……手伝ってニャ~……」
リュミちゃんは書類作業が苦手なようで。(予想通りと言えば予想通りなんだけど)
「どうやって隊長日誌をスズネさんに書かせるんだよ。むしろ、その日誌の確認するのがスズネさんだぞ」
うん。正確には、私が確認した後に担当三公(リュミちゃん達なら銀狼さん)の承認なんだけどね。
私も、隊長日誌とか部隊詳報を基に統括報告書作って伊予ちゃんに出さなきゃいけないんだけどさ……。
「と、言っても『出した事にしといてニャ』は駄目だからな」
「出した事に……わ、分かったニャ。書くニャ……」
頑張って……。
アドバイス位は出来るけど、『現場視点からの報告書』って扱いだから、私が作っちゃうと意味が無いんだよね。
「ぐっすり眠れたのニャ。……よしっ、これで良いニャっ!」
ぱしーんっ
ハリセンじゃなくて弓が良い音で入りました。
えーっと……弓はそう使う物じゃないと思うんだ。
「あぁ、突っ込み用弓なんで。このしなり具合がちょうど良いんですよ」
そう言う物でも無いと思うんだ。
「研修で書き方くらいやってきただろうが。『特記事項無し』でも良いからさっさと書けよ」
「研修中は寝てたニャ」
「胸を張って言うなっ!」
「補講も寝てたのニャ」
どやっ と胸を張るリュミちゃん。
それ、自慢できる事じゃないよ。
うちの研修体制、どうなってるのやら……。
「やっぱりヴィルに隊長やってもらうんだったニャ……」
「そもそも『私も隊長やりたいニャ』って言い始めたのはお前だろうが。こうなると思ってたから俺が隊長やってたってのに」
あ、やっぱりいつもはヴィル君が隊長だったんだ。
「しょうがねぇ。教えてやるからその通りに書け。良いか、この項目はな……」
親方として弟子に教えることが多いからなのかな。
ヴィル君、教え方が堂に入ってるね。
「だからと言ってペンをこっちに渡すな馬鹿!」
2回ほど私の差し戻しの末、やっと隊長日誌が完成。
ここまで、実に3アウア(約3時間)である。
おかしいな。昼過ぎにミルム村着いたはずなのに、もう日が暮れかけてるよ……。
「ミルム隊、任務完了なのニャ……」
半ば抜け殻のリュミちゃん。
……えっと、日誌を3枚(3日分)書いただけだったよね?
「はい、確かに完了報告、受領しまシタ。リュミ先輩の尻ぬg……サポート、お疲れまでシタ」
詰所の受付さん(リュミちゃん、ヴィル君の後輩らしい。狐族の男の子)に書類を渡し、晴れて任務完了です。
リュミちゃん、後輩にまでこんな事言われてるよっ!
「ではミルム隊の編成を解除しまス。ヴィル先輩、後でお願いします」
「あぁ、分かってる。後でまた来るからその時に頼む」
ん?ヴィル君を呼び出すって事は装備の修理とかなのかな?
この村なら他にも職人さん居るのに……。
「さて、スズネさん。道中の話、工房で大分詳しく聞かせてください!」
「あ、うん。……でも、カルメンさんの依頼は大丈夫なの?」
国外からの、しかも行政府(教皇庁)からの依頼なんだから、そっちを優先にしなきゃ。
銃の改良なんていつでも出来るでしょ。
「図面はもう引いてあるんで組むだけです。あんなのうちの徒弟衆でどうにか出来ます!」
な、なんとも準備万端で……。
でも、それだったらヴィル君の予定に合わせて納品しなくても良かったんじゃ?
「あんなネタ聞いたら、作ってみなきゃダメじゃないですか。素案は昨日夜通し考えたんです」
うわぁ。この人本気だ!
も、もしかして『今夜は寝かさないよ(物理的に』フラグが建っちゃった!?
とは言っても、私も使える武器が有った方が良いのは確かなのです。
今回みたいに盗賊とかに襲われた時、毎回魔法だけで上手く倒せるとは思ってはいませんので。
それに、まだまだ魔法は威力の調整がうまくいってないので、安定した威力で狙った場所を攻撃できる武器は欲しい。
「と、言う事で手軽に使える大きさの拳銃……じゃなかった、短銃を最初に作ってほしいな」
「任せてくださいっ」
流石に銃身だけ作れば良いって言っても、すぐには出来ないと思うし早くても明日になるのかな。
今日は少し作業見てから宿屋に行こうっと。リュミちゃんの実家が宿屋兼飲み屋みたいで、部屋を準備してくれるって言ってたし。
「まずはこんな感じで。裏手に訓練場作ってるんで、試し撃ちしてみてください」
あるぇー!?なんでもう出来てるの!?
さっき作業台向いたばっかりだよね!熱したり叩いたり削ったりしてないよね!?
「これ位の改造、専用の魔道具使って工作魔法使えばすぐですよ。そうでもなきゃ鍛冶屋なんてやってられません」
魔法って万能すぎるでしょ……。
驚いてばかりも居られないので、さっそく工房の裏の訓練場で実射。
弓用の的(木と草で作った人形でした。鎧なんかも付ける事が出来るとか)を準備してもらって、まずは20メートル位(こっちの基準だと20メリトルだって)で。
念の為、撃ち方も確認したけど私の知ってる銃と特に違いは無いみたい。
さて、撃鉄を起こして……。
ポシュッ ポシュッ
予想より大分静か。空気が抜けるような音だけでした。反動も全然ないし……。
火薬で撃ち出さないってだけで大分違う物になるんだねぇ。
「うーん……弾がなんか右下に落ちてる気がする。バラツキは大分少ないと思うんだけど」
的の胸の部分、ちょうど真ん中あたりを狙ったけど弾は右の腰とか足の辺りに。
わ、私が下手な訳じゃないからねっ!この距離なら15cm圏に当てれるんだからっ!
「少し回転付け過ぎましたかね。次はこちらで」
ポシュッ ポシュッ
「狙ったあたりに飛んでるけど、今度はバラツキが……」
「ちょっと弾も変えてみました」
バシュッ バシュッ
「こんな感じかな。もう少しまとまってくれると嬉しいけど」
なんだかんだと試射と試作を繰り返して……
パシュッ パシュッパシュッ
的の頭部に吸い込まれていく銃弾。見事に全弾命中。
「50メルトル離れてもこれだけ当たるなら十分だよ。反動も弱いし、私の世界の銃よりも凄い物かもしれない」
「本体や弾まで手を入れた甲斐が有りました。俺もいくつかアイデアあるんで、後はこちらで組み上げますよ」
うん。結論から言うと、ライフリングだけじゃ駄目でした。
弾が単純に丸い玉だったのでそこを変えて、本体も色々作り変えて……。
「今日は遅くまで有難うございました。うちの若い奴に宿まで案内させます」
はい。もう深夜なのでした。
撃ったり改良したりとしてるうちに、私もだんだん楽しくなってきてつい……。
「なんか色々贅沢を言っちゃった形になってごめんね。無理に急いで作らなくても大丈夫だから」
もう少しパパっと、『ライフリング彫ったー。完成ー!』みたいなイメージでした。
しっかり考えてから提案しないとね。反省……。
「んじゃ、俺はもう少し作業していきますので。おーい、誰か空いてないか」
呼び出されて来た見習いの子に送ってもらってリュミちゃんの宿へ。
そのまま、ノリノリのリュミちゃんに捕まってがっつり飲まされました。
「コップが空いてるのニャッ!」
さ、流石、看板娘……。
試作銃の補足
この世界の銃は魔法の力で弾を撃ち出す方式なので、弾や機関部自体も現代の方式と少し異なります。
おおざっぱにいえば、
弾は弾頭部だけを込めるような感じ
機関部は使用者の魔力を使って弾を撃ち出す仕様
となってます。
弾頭を作るだけで射撃が出来るなんて、なんとも経済的な武器なのです。
※試射で使用した弾は見習い組の精錬練習で出来た規格外の鋼材を使用し、射撃後の弾は後で鋳直して鋼材に再利用しました。




