琴音は自分自身から自分を救う
一つ、また一つと、琴音の古い契約は燃え上がっていった。虐待、強要、そして労働基準法と児童福祉法の違反を理由に。業界とネットは、正義の怒りの大波となって、その背中を押した。デジタル時代には、誰も、人を食い物にする者の側に立っているところを見られたくはないのだ。
資金と法的な切り札と感情の勢いを携えて、琴音は世界という演壇に颯爽と上がり、SNSのサーバーを落とすほどの力を込めて、ピコピコハンマーを振り下ろした。七十二時間のうちに母親の企業グループと決別し、独立した。新しい事務所〈K-Project〉はただちに登記され、公式声明がその正当性を裏づけた。和佳美が紹介した弁護士とともに提出された書類は、一分の隙もなかった。リブランディングは、撃ち放つような投げキスと、致命的な笑顔とともに届けられた。
藤城夫人の弁護士たちは火消しにかかった。差し止めを申し立て、「身体的な危害」が証明されない限り契約は鉄壁だと主張した。琴音は反撃した。事前に収録した動画を公開したのだ。落ち着き払い、美しく、シルクのブラウスのドレープの下に、包帯を巻いた肋骨がわずかに透けて見え、その気迫は少しも揺らいでいなかった。涙は見せなかった。自分の意志で前に進むと宣言した。社会的にも、経済的にも、精神的にも、琴音はたった一撃で自らを解放したのだ。
ゴールデンウィーク・ツアーの大規模な記者会見の前に、そのすべてをやってのけたのは見事だった。
会場は、ガラスのシャンデリアとベルベットのカーテンに覆われた壁の、冷たいきらめきに輝いていた。カメラ、財界の大物、投資家、デザイナーズスーツに身を包んだ重役たちでぎっしりと埋まり、彼らの練習済みの笑顔は、もはや練習を必要としていなかった。何もかもが過剰だった!
全員が、ひとりの少女のために来ていた。事務所からも母親からも離れ、ひとりで立つ少女のために。ステージに、藤城琴音が現れた。「藤城タレント:最終声明」とスクリーンが光った。
アイドルとして、生まれ変わった少女として、琴音は世界の残酷さを受け止めていた。それでも、輝くように微笑むのだ。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」と琴音は切り出した。「本当に。心から。皆さんのお時間に感謝しています。とくに、前の事務所の導きがなければ、私には声なんてないと信じていた方々に。皆さんが間違っていて、本当によかった」
慎重で礼儀正しい笑いのさざ波が、聴衆のあいだを広がっていった。
突然、後方の扉がきしんだ。何十年もの虚栄心だけが彫り上げられる、帝王のようなオーラをまとって藤城夫人が現れ、まだこの部屋の空気は自分のものだという足取りで、中央通路を歩いてきた。
アイドルはひるまなかった。マイクの横にあるファイルへと手を伸ばした。
「琴音」母親は、自分が与えた名前を思い出させるように、強い口調で呼んだ。「これは、わたしたちのやり方じゃないわ。あなたはまだ契約下に――」
「いいえ」琴音は即座に答えた。「法的な契約解除の書類はここにあります。ご覧になりたければどうぞ」ファイルを叩いて、差し出す。「六か月分の診療記録、タイムスタンプ付きの動画、それに音声記録も入っています。動画の画質は完璧じゃないけど、ママ、あなたのネグレクトははっきり映ってる。スタジアムとドームの株主の皆さんには、とくに参考になると思います」
「中傷よ――」
「違うよ、ママ」静かな声だった。「全部、記録してあるの」そしてマイクに顔を寄せる。「念のため申し上げておきます。私は母を愛しています。母は、私が成功できた理由のひとつです。規律を教えてくれて、一生懸命働かせてくれました。そして、三か月間、毎日メイクであざを隠さなければならなかった理由のひとつでもあります」
カメラのフラッシュが炸裂し、記者たちが猛然とキーを叩いた。
琴音は落ち着いていた。「こんなことになって悲しいです。ママは、今でも私のママです。あの家で、応援してくれる皆さんが愛してくれるように愛されることは、この先もないんだってわかってます。ただ管理されて、売り出されるだけ。でも、後悔はしていません。自分にできる最高の一歩を踏み出せる限り、どんな結果でも幸せに思える。これは私たちにとって最良の決断で、最後の決断で、もっと早く下すべきだった決断です。準備をしてきたから、私の心は今までにないほど研ぎ澄まされています。これから、虐待者たちへの対応を始めます。私はもう、藤城タレントとは無関係です。今後のお問い合わせはすべて、私の新しい法人、K-Projectへどうぞ。次に誰かの人生を壊そうとするときは、覚えておいて。私は、あなたよりずっと優雅に育てられたってことを」
琴音はステージを降りた。かつて母親に頭を下げていた重役たちの前を通り過ぎて。彼女を必要以上に感情的だと見なすことさえ、もう思いつかなくなった株主たちの前を通り過ぎて。一度は見限ったゴシップ記者たちの前を通り過ぎて。それでも、カメラはその背中を追い続けた。
その背後、容赦のないシャンデリアの光の下に、藤城夫人が立ち尽くしていた。
光を奪われ。
出し抜かれ。
退場。
退学。学園を去るのは、琴音のほうだった。
琴音は、最後の優しい抱擁のような気品をもって、自分の代表事業を、炎の中へと送り出したのだった。




