学園上層部
琴音を学園に残し、すぐに代表事業を変更できるようにするための署名運動が始まった。富豪たちからの圧力が一笑に付せるものではないことを、誰もが理解していた。
琴音はアイドルであり、イメージに取り憑かれたエリート学園の生徒であり、家庭内暴力の被害者であり、価値ある事業の跡取りであり、そして自らの独立を取り戻そうと積極的に動いていた。学園は絶対に琴音を手放さないはずだ。いや、それどころか持ち上げるはずだ! 人も金も回し、スキャンダルが学園の評判に飛び火しないよう、母親から距離を置かせるはずだ! ――と、世界を子どもじみた目で見ている者なら考えるだろう。
学園上層部は、そこまで寛容ではなかった。これは大人の世界だ。学園の伝統は硬直していて、ただの金持ちではなく、億万長者たちによって作られていた。上層部の多数派、およそ三分の二は琴音の転校を主張し、残りの三分の一は、代表事業の変更を認めることに同意した。
少なくとも署名運動には法的な重みがあり、琴音が二年生の二学期には戻ってこられる道を、どうにか確保しつつあった。
琴音は完璧に制服を着こなし、胸を張って、颯爽と廊下を歩いた。もう母親の代理人でも、誰かの駒でもない。学園は王族よりも不死鳥を愛する。琴音は金の鳥籠を突き破り、天上に自らの玉座を築きはじめていたのだ。
場所は、めったに使われない合同の「生徒会・上層部会議室」。琴音はそこに、どっしりと腰を据えた。顔ぶれは虎、和佳美、琴音、高等部学園長、何人かの教師、そして俺。言い換えれば、歩く金の処理装置にして戦略家たち。富と、人格と、教養と、先見の明を兼ね備えた大物たちだ。
藤城琴音の処遇をめぐる議論が、大人たちの主導のもとで始まった。
「藤城は入学時、母親の事務所を代表事業として選択した。したがって、在籍を継続したまま自身の事務所に切り替えることはできない。登録上の代表を変更するには、いったん学園を離れなければならない」この規則は残酷で、年度の途中で都合よく乗り換えたり、ブランドが混乱したりするのを防ぐために完璧に設計されていた。それはまた、すべての生徒にとっての失敗の代償を、見事なまでに重くしてもいた。「藤城はひとつのアイデンティティで出願し、今それを年度の途中で作り変えようとしている。そうした一貫性のなさは、我々の記録管理を乱し、評価基準を損なう」
「この虐待スキャンダルは、学園の威信を危うくする。家庭内の争いの戦場になるわけにはいかない。我々の名は、醜聞とは無縁でなければならない」
「藤城の在籍を認めれば、危険な前例となる。学園を離れずに事業を変更できるなら、ほかの者も同じことを要求するだろう。例外を作れば、反発を招く。すべての生徒が、窮状を訴えて好き勝手に代表を変えようとするはずだ」
学園は、例外アレルギーだった。
「藤城の精神状態は『学業基準』を満たしていない可能性がある。我が学園は、高い情緒の安定、社会的機能、重圧下での成果を求めている。不安定な状態と、継続中の法的紛争を考えれば、藤城は在籍を続けるのにふさわしい心理状態にはない」
「よろしければ、今この場で大学レベルの試験を課してごらんなさい」和佳美が反論した。「琴音さんの成績がその優秀さを証明することは、皆さんもよくおわかりのはずです」
「もっともだ。数々の利点を確認しよう。藤城は今や広報上の資産だ。虐待が知られるにつれ、内部でさえ、彼女をこう位置づけ直せる。『有害な遺産からの独立のために戦う、意志の強い、ひたむきな若い女性。困難に直面しながらも成果を出し続ける、エリートの生徒』。これは我々の評判を救う。藤城を追い出せば、被害者を罰し、虐待者や養育を放棄する者を守るというメッセージになってしまう」
「むしろ母親のほうを孤立させたい。我々の人脈は、体裁を気にするからな」
「まさに、藤城の母親こそがお荷物だ。藤城を救済可能なブランドとして保ちつつ、母親の前にある扉を、組織的に閉ざしはじめるのが最善だろう」
「救済可能?」
「失礼。藤城には大きな価値がある。家のブランドが崩壊しつつあっても、藤城には社会関係資本がある。新しい事務所を築くなら、それも学園の中心にいる生徒たちの後押しを受けてのことなら、近くにいる我々も利益を得られる。そしてこれは、我々の規則、法、学園の根幹へと立ち返ることになる。藤城は、世界に対する自らの権利を築かねばならない。それは校則に組み込まれている。世界を自分のものだと宣言できない生徒は、我が学園の生徒ではない。ただの子どもだ。一時的に学園を離れることこそが、我々が取りうる、最も思いやりのある選択なのだ」
「これは君の回復のための小休止であり、自分を見つめ直す機会であり、全員の尊厳を守るための一歩だ。我々が君を密かに停学処分にしたなどと、誤解しないでもらいたい。これはすべて官僚的な手続きで、正直に言えば、君たちの若さの単純さが羨ましくなるほどの大きな頭痛の種だ。あとは我々大人に任せなさい。君は驚くべき冷静さと、我々が後押ししたくなるまさにその気概を示してくれた。称賛するよ、藤城。学業でも社会的にも成果を出せば、我々は手厚く報いよう」
琴音は特別に二週間の休学を取ることになった。ゴールデンウィークが迫っていたこともあって、まったくたいしたことではなかった。
学園は琴音を手放したくなかった。それだけは確かだった。理由なら、戦略的な広報上の保全、法的な保護義務、ブランド価値の計算、和佳美のような生徒からの政治的圧力と、いくつもあった。そして何より、藤城琴音が藤城琴音だったからだ。今の、藤城琴音だったからだ。
和佳美が琴音の復学を保証し、後ろ盾となった。
琴音と俺は、和佳美に大きな借りをひとつ作った。
俺の赤いネックレスは、まだ首にかかったままだった。
「さて、君についてだが、篠原琳太郎……」




