彼の檻にひびが入る
四月十日、金曜日。期限まで、登校日はあと十四日。ゴールデンウィークはすぐそこまで来ていたが、売上はそうではなかった。シノハラ・ショコラは今週末に営業を再開する。それがうまくいくことが、何よりも重要だった。
逆に、すぐそこどころか、もう目の前に居座っているものは何だと思う? 俺のストレスだ。
俺は自分を罵倒した。
俺がこのネックレスを手にしたのは、誰に対しても、こうして厳しく距離を保ってきたからだ。心の平穏を守った結果は、それだけの価値があったのか? 自分にそう問うのは、初めてのことではない気がした。
学園の窮地を手っ取り早く切り抜ける方法は、ほかにもある。同級生たちと契約を結び、今は家業を支援してもらって、あとで返済するのだ。だが、全校生徒を素早く動かす簡単な方法など、俺にはなかった。誰に対しても適度な距離を保ってきたからこそ、親しい味方はほんの数人しかいない。だから、事業融資と同じで、見知らぬ他人には俺を信用する大した理由がなかった。
和佳美にヒントをもらって、俺は屋上で結衣を見つけた。
結衣はフェンスのそばに立ち、金網を両手で握りしめていた。離したら、体ごと飛んでいってしまうとでもいうように。ドアがかちりと鳴っても、振り返らない。
「どうしてそんなに冷たいの、琳太郎くん?」静かな問いだった。
「どうして……?」俺は繰り返した。
宣伝動画に乗り気じゃなかったせいか? 無口に見えていたのか?
わからなかった。たぶん、知りたくなかったのだ。外からどう見えているかを認めてしまったら、内側もまた本物なのだと認めなければならなくなる。
「今は、つらいんだ。すまない」
結衣が振り返った。「うん。うん、わかってる。許してあげる」習慣で下した決断のように、言葉がこぼれ出た。許すのは、そうしなければ諦めることになるからで、結衣は昔から諦めるのが下手だった。
「だから、お願い、突き放さないで。私はただ助けたいだけなの……また一緒にご飯を食べようよ。昔みたいに。そのほうが楽じゃない? 琳太郎くんが人のために料理を作るのは、わかってほしいからなんじゃないの?」
中学の頃にそう聞かれていたら、俺は照れながら頷いて、何でもないふりをしていただろう。だが今、その問いはもっと醜い何かに当たった。
「違う」俺はすぐに否定した。誰かの誠実さが近づきすぎたときに、いつもすることをした。台無しにしたのだ。「君の気持ち悪い同情を押しつけないでくれ。俺自身でさえ自分がわからないのに、どうして君に俺がわかる?」俺は止まらなかった。一度口が動き出すと、いつも会話を壊すことで勝とうとするからだ。だが、今の俺は違うところを狙っていた。「許す気分でいるなら、俺が冷たいなんて言わないでくれ。許す気分でいるなら、俺を丸ごと受け止めてくれ」それがどれほど人を操るような言い方に聞こえるか、自分が嫌になった。わざとですらなかったのに。「許しを求めるのは、もうやめたんだ。俺が探しているのは、手の届かないものだ。君が手伝うことはできても、与えることはできないもの。それは確かだ」
「どうして?」結衣が詰め寄る。「頼まれたら、私は何だってあげるのに。どうしてそんなこと――」
「受け入れてもらいたいんだ」俺ははっきりと告げた。「自分自身に。君は夢を叶えた。俺は学校を去ることで、それを君から奪おうとしている。それのどこが冷たい? ましてや、俺に夢を見ることを教えてくれたのは君で、同時にそれを打ち砕いたのも君だったのに」
危うい一線を越えて、俺たちは今にも泣き出しそうだった。「待っててくれさえしたら……」かすかなささやきだった。
「どうやって君の帰りを待てたっていうんだ?」俺は声を荒らげた。「奇跡なんだぞ。俺たちがこうしてまたここにいることは、奇跡なんだ。奇跡を信じるには心が要る。壊れた心に、夢を見ろなんて言えるか? 結衣さん、君は信じていた。君には目標があった。帰ってくるという考えが、君を希望で満たしていた。たぶん……自分の気持ちを俺に伝えるために。俺には目標なんてなかった。奇跡でも起きなければ果たされない約束を待つこと――それしか、俺には選べなかったんだ」
結衣は思いがけないことをした。俺の理屈に反論しなかったのだ。一歩前に出て、本当の間違いを正すように、そっと言った。「そうじゃないの。私が今の琳太郎くんに幻滅してるのは、琳太郎くんが諦めたからじゃない。私を信じてくれなかったからだよ」
その真実は、外科手術のように鮮やかに突き刺さった。
「私がどれだけ頑張ったか知ってる? 帰ってきて、私は大丈夫だよって伝えたいと思った夜がどれだけあったか、知ってる? 琳太郎くんの新しいお店の番号に電話をかけようとしたり、メッセージを送りかけたりして、何度自分を止めたか。私のことなんて忘れちゃってたらって、怖かったから。ずるいのはわかってる。でも、そのあいだずっと、琳太郎くんは待っててくれてるって思ってた。つらくても。寂しくても。思ってたの……琳太郎くんなら、待っててくれるって。時間をくれるって。それどころか、私が帰ってきたら、大喜びで迎えてくれるって。離れるとき、私、怖かった。すごく怖かったの。覚えてる……」
不意に、何の前触れもなく、陽の当たる公園の光景が脳裏によみがえった。俺の前に立ち、盾のように両腕を広げる少女。顔をくしゃくしゃにして、先に俺を守ってくれたのは、結衣だった。下手くそだったのに。震えていたのに。いじめっ子たちは、震えている相手に「やめて」と言われるのが気に食わない。それでも、やってのけようとした。
遅れてきた反応のように、俺はそのあとから割って入った。
「君が戦ったから、俺も反撃したんだ」
「琳太郎くんにいいところを見せたくてやったんじゃない。琳太郎くんが今にも消えちゃいそうに見えたから。そのあと、琳太郎くんは私にご飯を作ってくれた。一緒に食べた。自分たちに価値があるみたいに、心を開き合った」
俺はそれをよく覚えすぎていた。安い食材。生きる価値があると思える味の料理を作ることに抱いていた、馬鹿げた誇り。自分の空腹を俺に預けられると証明しようとするように食べていた、結衣の姿。
「そのとき、私は恋に落ちたの」当たり前のことのような、打ち明け方だった。
俺の頭はすぐにそれを拒もうとした。あまりにまっすぐで、温かすぎた。「子どもだったんだ」
「子どもだったけど、特別だった。二人ともわかってたよね、特別だって」震える息を吸う音がした。「それから、私はいなくなった。いなくなりたくていなくなったんじゃない。貧乏だったから。私の人生がどんどん小さくなっていって、それが抜け出す道のはずだったから。ロマンチックだったと思う? 私の夢だったと思う? スラムだったんだよ。キラキラした新生活なんてなかった。それで、何が私を生かしてくれたかわかる? 琳太郎くんなら、私ならやれるって今も思ってくれてる。そう信じられたことなんだよ」
結衣が一歩近づいた。「私は登り続けた。ネットで人気になった。這い上がって、帰ってきた。そしたら、琳太郎くんは、全部ただの運だったみたいな顔してた。だから、そう。琳太郎くんが諦めたからじゃない」五本の指すべてが、俺の胸に突き立てられた。「私を信じてくれなかったから。私が帰ってくるって信じてくれなかった。何も信じなくなった。また傷つかないように、自分を閉ざした。それがどういうことかわかる? 前の琳太郎くんなら即答してたよ。だから、時間をあげる」
「それは……」
「言いにくいよね? 正直に言うと、琳太郎くんは、私に待つほどの価値があるって思ってなかった。私には、痛みを引き受けるだけの価値がないって思ってたってことなんだよ」
その言葉が、とうとう俺の奥深くで何かを粉々にした。唇が開き、初めて、飾り気のない感情がこぼれ出た。「怖かったんだ」俺は認めた。
結衣の表情が一瞬だけ和らいだ。それから、強く首を横に振った。
「私だって怖かった。でも、それでも動いた。琳太郎くんはじっと立ち止まって、それを愛って呼んだの」結衣の両手が体の脇で震えていた。「一時的なものみたいな目で見られるために帰ってきたんじゃない。信じられない奇跡みたいな目で見られるためじゃない」
胸が締めつけられた。不意に、すべてがはっきりと見えた。俺はただ冷たかったり、戦略的だったりしただけではない。身勝手だったのだ。他人が生き延びようとすることを軽んじ、結衣を軽んじていた。
そう思っただけで、吐き気がした。
歯を食いしばれ、この大馬鹿野郎!
俺の拳が自分の顔を打ち抜き、頬が熱く燃え上がった。
結衣が息をのんだ。「ちょっと、何やってんのよ!?」俺が何かを切り裂きでもしたみたいな勢いで、飛びかかってくる。「自分を傷つけたら解決すると思ってるの!?」俺の腕を押さえるその目は、怒りに燃えていた。「琳太郎――!」
「感じる必要があったんだ」俺はつぶやいた。「君は俺に、平手打ちで目を覚まさせに来たんだろう?」
「できるわけないでしょ」言い放ったくせに、結衣はやった。その手のひらが、口にすることを許されなかったすべてを込めて、俺のもう片方の頬をぴしゃりと打った。
痛っ!?
「これは忘れないから」その声は震えていた。「琳太郎くんが私を傷つけた記憶、ずっと持っとく。それに、なんでそうしたのか忘れたふりしてる琳太郎くんの記憶も」
俺は自分の顔に触れた。
「あっ、やりすぎた? あっ、ほんとにごめん!」
ひりひりしたが、俺はそれを歓迎した。「正直な痛みだった」顔じゅうを赤くして、俺は認めた。
「勝ったみたいに言わないで」揺れる声だった。「痛みで許しが手に入るみたいな顔、絶対にしないで」
「勝ったわけじゃない。ただ……自分に戻れた気がするんだ」
「よかった」小さな微笑み。もう二人のあいだの隙間を言い訳にできないほど、俺たちは近くにいた。「クラスの子たち、どんどん動いてるよ」そっと、本当のことを告げる声。「どんどん距離を詰めてきてる。私、もうこれ以上待てない。だから、ちゃんと聞くね。私を、中に入れてくれる?」ささやきが続く。「なんなら……ほかの子たちは入れないでくれたほうが、いいかも」
「いちばん上手くやれるとは約束できない。昔と同じ琳太郎だとも、約束できない」
結衣はぎゅっと目を閉じた。「ひとりで決めないで。同じ琳太郎だよ」
俺の腕が動いた。結衣が、俺の胸に歩み寄ってきた。許しを待たずにそうできる瞬間を、ずっと待っていたみたいに。不器用な抱擁ではなかった。久しぶりに、そのぬくもりが、昔に戻りたいという必死の叫びのように感じられなかった。
「ただいま」肩口に、ささやきが落ちた。
俺は目を閉じた。「おかえり」言葉に本物の手触りが戻ってくるのを味わいながら、俺は言った。「結衣」
結衣が俺の襟元に顔を押し当てた。さっき自分が打った頬に、その頬の熱が触れる。まだ痛むか確かめるように、あるいは、そんなつもりはなかったというように、唇がそこをかすめた。
「もう二度としないで。私に何かを証明するために、自分を傷つけないで。ただ見せて。全部、見せて」
俺は頷いた。結衣を抱く腕に、力がこもった。俺たちのあいだで、ネックレスが温かく脈打っていた。
いちばん病んでいるのは、結衣を傷つけたことではないのだと、俺は気づいた。傷つけたかったということなのだ。残酷になりたかったからじゃない。そばにとどまって、俺がどれほど自分を憎んでいるかを見てしまう前に、遠ざけたかったからだ。
結衣を貧しくしたのは世界だった。あいつを俺から奪ったのも世界だった。俺の家族を追い詰め、締め上げて黙らせようとしているのも世界だった。世界を恨むべきだった。実際、恨んでいた。だが、それさえも気を逸らすためのものにすぎなかった。
なぜなら、俺が本当に望んでいたのは……自分を許すことだったからだ。もっと、いい味のする人間になりたかった。何より、もっといい人間になりたかった。
結衣は、俺の愛を無駄遣いさせる相手などでは決してなかった。だから今度は、俺のほうから差し出そう。意味のある誠実さを。俺を変えてくれた、そういう誠実さを。
これ以上の距離なんて、死んでしまえばいい。
今ここで、この懐かしく、祝福された瞬間に、俺は感じることができた。本当の俺が、本当の俺を大切にしている。心から大切に思う誰かを、腕に抱きながら。
⼗⼋話かけて、やっとこの場⾯まで書けました……!
ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。
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