第八十話 守護獣集結
煌びやかな緑色のドレスを纏うルアナの後ろを歩く。時折ひらひらと舞うように動く裾部分を見て妹のソックがソワソワしているが、今日はドジっ子メイドちゃんがしっかりと捕まえているので飛び出すことができないでいる。
ルアナの前にはエルミーナの面々。もちろん先頭はカトル爺。スパイツは本館でお留守番しているが、スーやルーを含めほとんどの者が参加している。
大きな扉の前に辿り着くと、室内からにぎやかな声が廊下まで漏れ聞こえてきた。すでに中には複数名が集まっていることが察せられる。
扉が開かれる前にカトル爺が振り向く。各自がここで最後の身だしなみチェックをするための間。
今日は俺もフォーマルな装いなので、首には立派な水色の蝶ネクタイをしている。赤色も候補だったのだが、アザー様の瞳の色に近い水色を選んだ。俺はまだ守護獣(仮)なのでね。前守護獣のアザー様の要素を取り入れてそれっぽく見せることにしてみた。
カトル爺が脇に控えていた使用人たちに目配せをすれば、左右の扉が同時に開かれる。隙間からあふれ出てきた音は、すぐに途絶え静寂へと変わった。代わりに多くの視線がこちらへと流れてくる。
「ようこそエルミーナ」
大きな声で歓迎の意を表してくれたのは、エルナードのギール。このパーティーの主催者。
今日はエルナードを支える四家の関係が良化したことによる祝いの場といったところらしい。
それぞれが挨拶を交わしながら自らのスペースを構築していく。今まではおまけのような扱いだった俺の所属するエルミーナであるが、今回ばかりは主役といってもいい立ち位置。なんせ俺のおかげで各家は豊かになってきているのだから。
え? 妹も活躍しただろって? それは言わないお約束ってやつでしょ。
大人たちは大人同士で集まり、子供たちは子供たちで固まり始める。そして俺はというと、妹と共に守護獣まみれになっていた……。
エルナードのエルゼに、立派なたてがみをしたライエルのクルップ。エルティガのタマもいるし、ピュエルマのチェリガーも揃っている。もちろんエルミーナのティトも。
前々から気になっていたのだが、守護獣はメス率が非常に高い。オスなのはライエルのクルップくらい。残りはみんなメス。
女子率高くて嬉しいかといえば、そんなことはない。だってみんな自分の何倍もの大きさなんだもの。自転車と自動車。バイクとトラックくらい違うのだ。
皆大きさと共に力ある守護獣だからか余裕があり、小さく非力な俺相手でも優しいのが救いか。ただ可愛がりだと思うが、じゃれつきのつもりの行為に毎度身の危険を感じはする。勢いよく頭突きされれば、それはすでに親愛の情ではなく事故なのである。
今日も何とか命をつなぎ留め、それぞれからペロペロされたあとは、俺は一歩引いた位置に下がる。今日の主役は実は妹のソックなのだ。先日遺跡発見の時に活躍したのもそうだが、多くの守護獣とは初対面。社交デビューというわけである。
目の前で行われる妹と守護獣たちの慣れあい。まずはスンスンと匂いの確認。いつもより長く行われている気がする。もしかすると黒猫のアンセの匂いも混ざっているからかな?
その後はペロペロスリスリと微笑ましい光景。しかしその傍にいる付き添いのドジっ子メイドちゃんは放心状態で死にかけている。一緒に遺跡を探索したりと経験が増えたことによって肝が据わってきたかと思いきや、さすがにこの数の守護獣に囲まれるのは無理だったもよう。
そんな様子を眺めているわけなのだが、よくよく考えるとここって動物は守護獣しかいないわけである。もしかして妹も守護獣になるのだろうか? 今のところそういった話は聞いていない。
はっ!?
もしかして、俺の立場が危うくなっているのではなかろうか。守護獣(仮)の立場が脅かされているのでは……。
「アンバーよりも妹のソックの方が役に立つわね。守護獣はソックにしてアンバーは解雇よ」
ルアナの声でそんなセリフが脳内で再生された。




