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先代様の置き土産  作者: 鈴寺杏


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第七十五話 岩石砂漠の遺跡

 先行した大人たちの明かりを頼りに横穴をしばらく進むとホールのような広い空間に出た。するとそこは驚いたことに柱などが並び、神殿か何かのような造りになっている。中は入り口のように酷く崩れたりはしておらず、かなりの部分がそのまま残されているようだ。


「いつの時代の物でしょうかね。実に興味深い!」


 なんかさっきまで面倒な雰囲気を周囲にまき散らしていたピュエルマの役人が息を吹き返したように活き活きとしている。なるほど。考古学とかそっち系に興味がある人だったのか。だからって先ほどまでのアレは担当者としてはいただけない。任された仕事はちゃんとしなさいよね。


 広い空間を大人たちがあちこち移動する。壁には奥へ続く横穴があったりとまるでロールプレイングゲームの遺跡のよう。


「アンバー様。驚きましたね」


「ミャ」


 アミーの声に同意のお返事。俺自身も驚いているのでポカーンとしたまま一緒に歩を進める。アミーにとってもこういうのは初めての経験なんじゃないかな。こっちの世界は観光なんてことをする様子もないし。


「しっかりと調査する必要がありますね!」


 やる気の役人は供を引き連れて奥へと進んでいく。罠とか大丈夫なのかね。ゲーマーとしてはちょっぴり心配。

 奥へ進むと上へ進む道と下へ向かう道に分かれた。上は階段ぽく段差に、下はスロープ状になっているね。


「下に向かいましょう!」


 役人さんは下を選択。ピュエルマでは露天掘りも行われているので下に行くほど良いものがあるという意識があるのだろう。迷いがない。俺も普通ならどこまで続いているのか想像の出来ない下を選ぶかな。なんかロマンあるし。


 さてどうするかなと迷う。同じ方へ進むのがベタではあるが、先にお宝を見つけたいみたいな気持ちもあるんだよね。ちょっと不安だけど上に行ってみようかな。最悪超能力で何とかなるだろうし。


 アミーと共に二人のライエルから派遣されている男性が付いてきてくれた。確かマタタナというおじさんとコズイっていう若い人。ライエルから来ているだけあってどっちも強そうだよ。


 テクテクピョンピョンと階段状になっているところを上って行く。途中部屋のような空間に出くわし覗いてみたりもするけれど目ぼしいものはない。人のいた形跡のようなものはあるので、こういった場所ではよくある盗掘みたいなことが行われた後なのだろう。


「ダメです! 危ないですぅ!」


 更に上の方から響いてくるドジっ子メイドの声。そういえば妹が傍からいなくなっていた。探しにいかなくてはと声のした方へと駆けつける。


 妹がいたのは先ほどの部屋より上にある一室。最上階というわけではないが、結構上ったなという感覚はある。

 室内は長さの違う柱が階段状に配置されており、それが天井付近にあるいくつかの穴へと続いている。さらには光が降り注ぎ、ここまでの道中とはまた違った雰囲気。


 で、妹はなにしているのかというと、知らない真っ黒な猫と対峙していた。とはいえ臨戦態勢とまではいかず、お互い警戒しながら様子見中。やんのかステップやお尻アゲアゲモードじゃなくてよかったよ。何かあればすぐ動ける感じだけどね。

 バトルにでもなった場合、この場で一番危ないのはむしろメイドちゃんではなかろうか。先程の声を思い出し可笑しくなる。


 さすがに増援としてきた俺たちの様子を見た相手の猫は、ピョンピョンと柱を渡り天井の穴から出て行ってしまった。なんか動きが凄くかっこよかったよ。ここに住んでる子なのかな?


「ここはなんでしょうね」


 一旦落ち着いたので冷静に周囲を見渡せば、塔の最上階っぽさがある。見張りの待機場所とかだろうか。さすがにちょっと上がって見ないとわからないけれど。


 マタタナさんとコズイさんも上を見上げているし、俺と同じように興味があるようだ。こちらへ視線を投げかけながら、親指が上を指し上下に揺れている。「行こうぜ!」ってことですね。


 わかりました。行きましょう。行けばいいんですね。


 階段状の柱は縦にした丸太くらいの広さはあるため、注意すればアミーでも平気。メイドちゃんは踏み外しそうで怖いのでここに残っててもいいと思うけど、逆に一人になる方が不安かな?


 さてこの上には何があるのだろう。ドキドキするね。

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