第七十四話 砂漠探索
時折乾いた風が通り過ぎ砂を運んでくる。遠くを見れば岩山がいくつも見えるが、今歩いている場所は周囲に遮るものがないので直接降り注ぐ太陽の光が暑く眩しい。
振り向けば屈強な男たちが数名、鋭い視線で見つめながら我々の後を追って来る。
現在、依頼を熟すために妹とドジっ子メイドを先頭に砂漠を歩いているわけなのだが、何というか思ってたんと違う!
砂漠といえば砂丘。砂がいっぱいあって、それが丘になっててとんがったそれを一生懸命額の汗を拭いながら進むイメージじゃないですか。何度も何度も。そしてようやくオアシスに辿り着いて「助かったー!」って走って行くと「残念まぼろし。蜃気楼でしたー!」みたいなさ。でもここ乾いた大地ではあるけど石や岩がゴロゴロと転がっているし、そこそこ植物も生えている。
砂漠といってもいろいろと種類があるのかな。
こんな環境の中だというのに妹はご機嫌だ。何せご褒美を大量に約束しているから。更にはいつも以上に褒められる場面とあってか、やる気に満ち溢れている。
ご褒美の内容だが、好きなおやつ一年分という俺からすると微妙なもの。一日あたり三百円として一年で十万円ちょっとということになる。本当に良いのか妹よと思うが、支払うことになる俺としては有難くもあったり。
時折野生生物にも出会う。ドドドッと集団で走って通り過ぎたりするので怖い。だって彼らがどんな能力を持っているのかわからないんだもん。
驚く俺に対して妹は意外に平気そうなのがなんだか悔しい。
背後を歩く大人たちはこの地域の支配者ピュエルマの人間もいるが、ライエルからやって来ている人も多い。真剣な表情の人もいれば、暇そうに歩いている人もいる。
俺としては二家同時に話が来ちゃって困っちゃってたわけで「サバンナとかわっかんねっす」ってことで「鉱山見つけるので共同開発したら?」って提案したら、意外にもすんなり通っちゃったというわけ。ライエルは力、労働力には自信があったみたいだから「儲かるならそれでいいぞ」というスタンス。大雑把というか豪快というべきか。
元々協力関係にあった二家というのも大きかったらしいが、そこから先の政治的な駆け引きとかいろんなことは俺しーらないってことで。でも見つけたら報酬でちょっとぐらいは俺にも分けてもらえないかなと期待はしています! 宝石を買取店に持って行ってウハウハするのだ。金ばかりでは大変なんでね。
最初はピュエルマの人が他国へ向かう際に利用していた歩き易いルートを辿っていたのだけれど、途中から妹は道をそれて歩き始めた。戸惑う巻き込まれているドジっ子メイド。先日までは「専属メイドに指名されて楽しい事ばかりです!」とか言いながら俺からもらった飴を嬉しそうに口に含んでいた彼女だが、さすがに今日は苦しそう。普段こんな場所を歩き慣れていないもんね。水分補給は忘れずに。
「お待ちください。この先は何もないはずですが……」
今回同行しているピュエルマの役人が後ろから声をかけてきた。守護獣でもない頼りなさげな猫が先導しているので不安なのはわかります。けれど新しいところを探しに来ているのだから道をそれるのは仕方のない事ですぞ。
妹は声をかけられても無視だ。彼女も屋敷生活で人間の言葉をある程度理解しているのだが、基本的にわからない振りをする。時々女の子らしく強か。誰を見て育ったのやら。
そんな妹が足を止めたのは、山なのか岩なのかという大きな塊の下部分。崩れたようになっている横穴の前。小さな体で隙間から中を覗き込めば、人工的に作られたものだとわかる。ここは岩陰になっている部分で、いつごろから崩れていたのか謎だが近づいてみないとわかりにくい穴。
「ミャアン!」
ここです! ここにあります! って妹は言っている。
「こんな場所が……」
ピュエルマの役人さんも把握してなかった場所みたい。そんなに道から離れてないのにね。この辺りは過酷な環境だからあまり真剣に調査してなかったのかな。もしくは担当者がサボったとかさ。
屈強な男たちによってあれよあれよという間に瓦礫は片付けられ、その後吸い寄せられるように横穴に入って行く大人たち。気持ちはわかる。中がどうなっているのか気になりますよね。
少しして安全が確認されたら俺も中に入ろうっと。警戒心の強い俺は割と強かなのだ。




