第七十三話
さてライエルとピュエルマの特徴だが、ライエルは木々の少ない草原。ピュエルマは低木林や砂地、要するに砂漠らしきものがあると聞いている。
以前エルティガのお手伝いをしたことでまた「植物探しかあ……」なんて考え数日悩んだのだが、よくよく考えれば特産品を見つけてることが目的で、植物である必要のないことに気付いた。
といったわけで、縛りがなくなりずいぶんと楽になったなと思ってルンルンと足取り軽く屋敷内を散策していたのだが……。困ったことに何があるのかまったく思い浮かばない!
前者はサバンナ、後者は砂漠。日本人になじみがなさすぎる!
安請け合いするんじゃなかったなあ。どうしよう。
そんな悩めるにゃんこの前を通り過ぎる一匹と一人。そう我が妹ソックと未だにドジっ子を続けているメイドである。
「ミャアアン!」
見つけた! 見つけちゃった!
俺の声は高らかに屋敷の中へと広がっていく。いつになく大きな声を上げる俺を見て、通りがかりの使用人たちもびっくりしているが知ったことではない。不満があるなら後で飴を渡して黙らせればよいのだ。
突然の大声。どうしたのかと言えば、実は最近判明したことなのだが、妹の能力は『物探し』なのである。どうも毎度毎度ネズミを捕まえたり落とし物を見つけたりする機会が多いなあと不思議に思っていたのだが、どうやらそういうことだったらしい。
エルティガの時にはまだ判明していなかったので協力してもらうことができなかったが、今回は違う。是非とも妹に手伝ってもらおうというわけなのだ。
よかったよかったと再度ルンルンと今度は中庭に移動したところで気付く。妹に手伝ってもらうのはいい。だが何を探してもらうのかと……。
「ということのようです」
「そう。アンバーが私を頼るなんて珍しい」
浮かばなければ誰かを頼ればいい。そんなわけでルアナの元へとやって来た。狙い通りにアミーも一緒にいたので通訳してもらうのに丁度良い。
他家の情報なら彼女に聞くのが一番。なにせ奥様ネットワークを持っている。もちろん当主であるカトル爺でもライエルとピュエルマについて聞くことが可能だが、今回でいえば話をこっちに振ってきたのは彼。期待できないってことになる。なので別ルートで情報収集というわけだ。
「んー。今回の件はスースやルールーにも関わることですから、手伝うのも吝かではありませんが……。そちらの二家に関してはそれほど話せることがないのです」
「ミャア……」
残念だ。何かヒントになる情報が得られればと、頑張ってルアナを頼って見たけれど成果は無しか。
じゃあ情報の対価として渡すはずだった綺麗な飴は今回持ち帰ろうかな。
「待ちなさい」
「ミャミャ?」
「先ほどから気になっていましたが、それを見せなさい」
えー。だめだよ。これはポケットマネーで買ったやつだからね。
超能力で運んで来ていた小箱をお腹の下に仕舞いこむ。
「アミー」
「かしこまりました」
えっ!
ズルです! それはルール違反!
ガシッとクレーンゲームのように両脇から手を入れられ持ち上げられた。ジタバタと怪我をさせない程度に身を捩る。
急にお腹の下の物がなくなってスースーするなあ。
この間に歩み寄ってきた別のメイドが小箱を回収しルアナの元へと届けられてしまった。くそう。これはパワハラだ。訴えてやる!
小箱を開けたルアナは中に入っていたお菓子を見て、一瞬動きが止まる。
「これはなんです?」
「ミャ」
飴ですよ。甘いお菓子。ってそれは知ってるか。味だけじゃなくて形にもこだわったタイプだよ。
「アンバー。これを見て思い出しました。ピュエルマでは宝石などといった鉱物が見つかることが多いのだと自慢されたことがあります」
おー! それそれ。そういう情報が欲しかったんですよ。お礼にその飴はあげますからね。存分に味わってください。どうぞ遠慮なく。
お互いに用は済んだとばかりにそれぞれの活動に戻っていく。ルアナとの関係はこういう無駄に気を使う必要がないところがよい。
探しべきものの目途は立った。妹に協力してもらえばすぐだろう。でも鉱石って掘り出す必要があるよね。そこは向こうにお任せでいいよね?




