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先代様の置き土産  作者: 鈴寺杏


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第七十一話 報告会

 報告のためエルティガに訪れると、その場にはキンガだけでなくウスリも同席していた。すでにこういった場へ顔を出すのにも問題ないレベルまで回復したらしい。と言っても主役というわけではなく、俺と一緒に様子を眺めている係。

 今回は薬師から受け取った結果をまとめ、メモにしてパザンに渡しているので説明するのは彼の役目。次期当主の仕事を頑張ってください。


「実の方は体の内側に効果があり、気持ちを落ち着ける作用も期待できます。根の方も体によく、葉は茶とするとよいようです」


「ほう。ならば捨てるところがないということか」


「ただし取り過ぎはよろしくありません。実は特に注意が必要です」


 汗をかきながら話をするパザン。その様子をアミーの膝の上で眺めている。今日はちょっと硬いかな。傍にウスリとタマがいるとこで体に力が入っているのを感じる。 

 少し前に通訳として同行することに決まったばかりのため、メイドであるアミーはこういう扱いには慣れていない。緊張するのも仕方がないこと。でもこれからは一緒。必然的に似たような機会は増えることになるだろう。個人的には増えないで欲しいのだけどね。要するに俺の仕事が増えることになるから。


 メモに書かれた内容が抽象的な表現なのは、詳しく説明しても理解されないから。俺だって医者に難しい事をいわれてもチンプンカンプンなわけだ。ならばこっちの人相手であれば「体にいいよ」とか「高齢者におすすめ」とかこれくらいで丁度いい。多くの人は必要な情報だけもらえればそれでよいのだから。

 実は心臓病の人だと量に注意が必要。そういったこともメモには書かれているので、渡したそれを確認してほしい。


 積極的な彼らは、さっそく試してみようという話になる。まずは簡単に用意できる茶を飲むことに。続けて用意ができたらレンコンと続く。これらは地球産とまぜていないので効果がすぐにでるようなことはない。


 出てくる物を率先して口に運ぶパザン。安全であることを示すために自らの行為で示す。信頼して素材を全て預けてくれたことへ対する態度といったところか。


 最後に蓮の実だ。


「これは体から力が漲るようだ」


「ほんにな」


 ガタイのよいエルティガの二人が効果を確かめるようにフンッと声に出しながら力こぶを作ったりポージングをしている。ボディビルダーかな?


「この実だけでも我が方には価値がある。感謝する」


 よかったよかった。無事依頼完了ということだね。


 この後力のあり余った大人たちが動き回り、一斉にトイレに駆け込んでいった。胃腸が活発に働いてしまったらしい。ここは大きな屋敷なのでトイレは多いと思うがみんな間に合ったよね? ちょっとだけ心配だ。


 今回予想以上の結果ということで、追加の報酬がもらえるらしい。羽毛布団以外にもいくつか手に入るようでウキウキ。前の羽毛布団は妹にあげてもいいかもね。たまにはお兄ちゃんらしいこともしなければなるまい。


 エルミーナに帰るとまずはカトル爺に報告。今回は同行していなかったのだ。


「アンバーよくやってくれた」


「さすがアンバー様です」


 カトル爺だけでなく、シェバスにも褒められる。

 そうでしょう。そうでしょう。今回は大仕事を成し遂げましたからね。エルティガから以外にも、エルミーナからご褒美があっていいんですよ?


「と、アンバー様は申しております」


 あ。アミーちゃん。そこは通訳しなくていいですよ!?


「ふむ。何か希望はあるか?」


 あれ? いいんですか?

 と言っても急にはなあ。ウルシのいる下町の土地建物は前に手続きを終わらせてしまったし。他に何かあったっけ?


「何か考えておくとよい。でな、メイドに新しい菓子を与えたと聞いておるんじゃが、どうもワシの知らん物のようでな」


 もうここまで情報が!?


「口に入れると甘く果実の風味が広がりその至福の時間は永遠とも思えるほどに長く、おかげで仕事の疲れを忘れさせてくれると伺っております」


 誰なのキャンディー一つをそんなに大げさに言ったの!


 でもバレちゃー仕方がない。あとで缶一つだけカトル爺にあげるよ。でも気に入ったからって他の物に追加じゃないからね。その分次回以降他の菓子が減ることになるのは考えておいてください。


 それにしても初老の男性二人は大人げない。ティトを見て見なよ。とろとろのをちゅるちゅるっとペロペロできれば贅沢に味なんて指定しないよ。とっても大きくて賢い猫さんだ。

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