第六十八話 大工とカラシ
結論だけ述べると、アミーも一緒に地球に移動することができた。そしてなぜかアミーに抱かれたウルシもである。
アミーはわかるんだ。アザー様に鍵をもらったから、そういうことなのかなって受け入れられる。でもウルシは何でだろうね。アザー様のサービスだろうか。望まなくても事件は起きるものだ。
ともかく、地球での一か月のお勤めを終えて我々は帰ってきたのだった。今はもう帰ってきた翌日。すでに猫の姿に戻っている。
昨日のうちにノストスに荷物預けたりといった諸々の作業も完了していて、今日はこの正式に買い取った倉庫のリフォームのために残っているところ。
屋根の部分は昨日のうちに大工さんにお願いして塞いでもらっている。依頼するときに場所を説明すると渋ったんだけど、そこそこの報酬とアミーの笑顔でなんとか受けてもらえた。ウルシに言い聞かせて安全をアピールしてからの彼らは早かった。親方とその弟子たちは腕がいいのか早く帰りたいのか、物凄いスピードで仕上げて去って行った。こちらとしてもやることやってくれれば文句はないのでいいんだけどね。
帰り際には「あの壁じゃダメだろ。猫用の入り口を作って明日届けてやる」と言っていたので今はそれを待っているところ。
ゴロゴロと重そうな車輪の音が聞こえると、昨日の親方たちがやって来た。
「おう今日はお嬢ちゃん一人か」
「はい。ネリードさん。よろしくお願いします」
「ワシら相手にも丁寧なこって」
アミーは今日、日本で買った服を着ている。ザ・女子高生みたいなひざ丈スカートに上はカーディガンというスタイル。
俺が「アミーくらいの年齢だとこういう服装が多い」と説明したところ好んで着るようになったのだ。屋敷では着るわけにはいかないだろうけど。
別に俺の好みでコスプレさせているわけではない。アミーは黒髪だからね。ほとんど違和感なく着こなしていてよく似合っている。
現に弟子の男の子たちの視線は釘付け。可愛いのもそうだが、見慣れぬ服装ということもあるだろう。
「じゃあはじめっかな。猫ちゃんの方は頼むぜ。お互い怪我したくないんでな」
「はい。大丈夫です」
やるとなれば早いのがネリード親方。まずは建物全体を見て回り、次に穴の部分を調べるとそこを一気に崩してしまった。こちらが「大丈夫か」と心配してみているとすぐに支えの柱を立てて補強。そして弟子が瓦礫などを片付けている間にシュババと手を加えて、トンテンカンテンと持ってきた木材で完成させてしまった。まさに職人芸。
「完成だな。ただまだ気になるところがあるから余った木材で内側から補強するけどいいよな?」
「お願いします」
「よし! おめえらいくぞ!」
その後、中での作業を終えたネリード親方のそばには例の黄色い猫がいた。
「お嬢ちゃん。なんだかこいつが付きまとうんだが、どうしたらいい?」
アミーが困ったような顔をしてこちらを見るが、あの子についてはウルシに任せっきりなんだよね。
今度は俺がウルシの方を見れば「あの子に決めさせるといい」という態度を取った。
「その子は親方のことが気になるようですので、問題なければ連れて帰りませんか?」
「ワシんとこにか? うーん。母ちゃんがなんていうかなあ」
「ダメでしたらこちらにまた連れて来てくださればいいのでは?」
「それでいいんならいいけどよ。お前家にくんのか?」
「ニャ」
「そうか。んじゃそうすっか。じゃあお嬢ちゃん。終わったからワシらは帰るぞ。またなんかあったらいいに来てくれ。すぐ直しにくっからよ」
「ありがとうございました」
餞別代りだろうか。ウルシは猫にカリカリ食感のボール型おやつの一部をあげていた。なんだかんだ言って最後まで面倒をみてやる優しい子。
それを受け嬉しそうに尻尾を揺らしながらネリード親方と共に帰る黄色い猫。よかったねという気持ちもありつつ、すでに呼び名を考えていたので少しだけ残念だったり。ちなみに俺は「カラシ」という名前で呼ぶつもりだった。単純に黄色だからっていう理由で深い意味は無い。
「二人ともよろしかったのですか?」
親方たちが帰ったあとにアミーが聞いて来た。
親方は猫好きぽかったからね。きっと大事にしてくれる。これで良かったんだと思う。隣にいるウルシもそういう顔をしている。でも少しだけ寂しそうではあるかな。またしばらくは一人でここにいないといけないもんね。でもまたきっと、出会いはあるさ。
すでに時間は昼を過ぎている。
「少し遅くなりましたがお昼にしましょうか」
「ミャ!」
今日はウルシの好物をいっぱいあげようかな。新しく持ち込んだスープタイプも一緒にね。




