第六十七話 ウルシとアミー
ドナドナ気分で馬車に揺られている。現在は朝食を終えて少し経った時間。上り始めている太陽の日差しが降り注ぎ、馬車の内部は熱くなり始めている。車内にはアミーと俺。そして途中まで護衛としてセーラ。ハーレムだ。そんな気分や状況ではないけれど。
我ら一行の目的地はもちろん俺が利用する下町の倉庫兼拠点。
アミー同行問題だが、結局自分で言い出したアザー様からの許可をアミーが得てしまったこともあり、これ以上断ることも出来ず覚悟を決めた。以前からいつかは話そうと思っていたので丁度良かったと諦めることにした。
アザー様から鍵を預かった事件だが、あの後気配を感じ取ったラーナツがやって来て面倒なことになった。さすが狂信者。ある意味すごい能力だと思う。そしてアミーから話を聞くなり「自分も許可を頂きたい!」とか言いながら俺の部屋で祈り始めたから困った。残念ながらアザー様の絵は光りませんでしたけどね。必死でアミーに鍵を売ってくれるように交渉していたのには笑った。「これはアザー様の意思です」とアミーに言われれば、さすがのラーナツも諦めたけど。
街中に着くと適当なところでアミーと一緒に降ろしてもらい馬車やセーラとお別れ。そして尾行がいないか注意を払いつつ回り道をしながら進む。こうしても意味ないことはわかっているが、心残りというかまだ燻ぶっている抗いたい気持ちが勝手に行動として出てしまっている感じ。
ついでに買い物をする。魚とかウルシ用の食べ物をいくつか。これはアミーとウルシが仲良くするための物。初回から上手くいくかはわからないけれど努力はすべき。ダメだったら諦めてもらおう。あそこはウルシのテリトリーだからね。
魚売りのオヤジがアミーにおまけしていた。やっぱりかわいいと得らしい。
「この辺りですか?」
倉庫付近で足を止めるとアミーは困惑気味。そりゃそうだよね。どうみても甘味が売っていそうな場所には見えないもの。周辺に比べると寂しい感じ。理由は倉庫付近はウルシが人をあまり寄せ付けないとかまあいろいろある。
そのまま進むといつものようにウルシが出迎えてくれた。でも横に人間がいるので距離を保ったままこちらを伺っていて近づいては来ない。さすがに威嚇まではするつもりはないらしい。彼女からすればアミーなんて威嚇するまでもない相手ということ。
「この方がアンバー様の恋人ですか。こんにちはアミーと申します。普段はアンバー様が生活される屋敷でメイドをしております」
猫に向かって丁寧な姿勢で挨拶をするアミー。そういえばこの子は俺に対しても最初からそうだった。守護獣という存在が身近にいるので動物相手でも自然とそういった態度で接することができるのだろう。
二人は見つめ合っている。俺にできるのはそれを見守ることくらいだ。お互いを紹介したりはしない。こういう時介入すると面倒なことになるんだもん。男は黙って及び腰。
「申し訳ございません。奥様でいらっしゃいましたか?」
アミーがそう言った瞬間ウルシの毛が逆立った。
さすがにまずいと思って飛び出そうとしたのだが、それは一瞬で収まってしまいウルシはアミーに歩み寄り足元で頭突きを繰り返し始めた。
「ミャア?」
あれぇ?
この状態からしてウルシの自認は俺の奥様だったってこと?
ちょちょちょ。ちょっと待って。俺は手も出してないし無罪だよ。猫だから手じゃなくて足ですとかそういう話じゃなくて本当に。
なんかこっちが呆然としているうちに二人して倉庫の中に移動しているんだけど。どうしてこうなった……。というかおいて行かないで欲しいんだが。
「あら。他にも恋人か奥様が?」
中に入るとこの前の黄色もいてアミーが勘違いしてるうぅ。
違います。その子は完全に他人。余所の子だよ。だからってウルシのことを認めたわけじゃないけど、それだけは言っておく。
「ニャアア!」
「申し訳ありません奥様。こちらの方は違うわけですか」
俺じゃなくてウルシの言うことを信じるんですね。なるほど。そういう感じですか。わかりました。
それにしてもこの黄色い子も住み着いちゃってるのか。俺は頻繁に来れるわけじゃないから面倒みれないよ。ウルシが責任持つってことなのかな?
一旦この子のことは置いておいて、そのまま三人……二匹と一人で奥の部屋に移動する。
「普段はここで生活されているのですか?」
ウルシはその質問を否定する。真面目だからね。俺がいない間はここに入らないんだ。だから違いますよ。
「それでアンバー様。お店の方にはここからどう移動するのでしょうか?」
いっぱいつっこむところありそうなのに、チョコレートやクッキーといったお菓子へ意識が向いているのかあまり気にしていない様子のアミー。それでいいのかと思いつつ、この方がありがたいような気もして吾輩複雑な心境。




