第六十六話 ついに……
薬草の本だけ読んで終わらせようと思っていたのだが、丁度満月も近いということで結局日本に一度帰ることに決めた。ということで帰国の準備をしなければならない。帰国とか格好良く言ってみたが、ただ部屋に戻るだけ。
いつものように巾着の中を確認。中には三枚の金貨。一枚がルアナから預かった物で、もう一枚はカトル爺のやつ。最後のは俺自身が稼いだ分。
大金の場合はノストスに任せちゃうんだけど、こっちはお小遣いみたいなもの。とはいえ二人以外、他家関連の物を買う必要があるのでそれの資金ともいえる。カレーとかお灸とかね。
「アンバー様。本日より外出時も同行することになりました。どうぞよろしくお願いしたします」
「ミャア?」
部屋にアミーがやってきた。そしてこう言ってきたのである。
確かにエルティガの湿地から帰って来て同行通訳についての進言は行った。でも数日反応がないので却下なのかなと思っていたんだけど、まさかこのタイミングか。
「またお出かけの時期でございますね」
いつもよりニコニコ顔のアミー。
今日の笑顔はどこかルアナっぽさがあるような?
さすがに一年以上同じことを繰り返せば、みんなその時期を把握している。ルアナなんかはそれに合わせてチョコレートの消費量を調整している節すらある。
で、今回も銀貨を預かればいいのかな。じゃあ巾着の中にお願いね。
袋の口を開けてアミーの前に差し出すが、今日はすぐに入れてこない。もしかしてお小遣いがないとかなのかな?
「いえ。今回は同行させていただこうと思いまして」
「ミャ!?」
えっ⁉ ナンダッテー!?
いやいや。アミーちゃん。それは困りますよ。だって未だに俺は正体について誰にも教えていないんですから。しかも、買い物するところまで付いてくる気でしょ? むりむりかたつむりです。
そもそも自分以外が一緒に移動できるかもわからないんだよね。試したい気持ちはありつつも未だに躊躇しているところ。それをアミーで試すってのはダメです。
必死にダメダメと首を左右に振りながら「ミャ! ミャミャミャ!」と拒否することを伝える。
「もしや行先に恋人がいらっしゃるのですか? それなら気になさらずとも問題ありません」
でたー! たまに上手く伝わってないやつー!
しかも何か勘違いされている。別に女の子なんて囲っていませんよ。もしそうだとしたら距離がそこまで遠くないわりに会いに行かなさすぎで遠距離恋愛も真っ青じゃんね。
必死にダメだと伝えるのに、今回に限って諦めの悪いアミー。終いには「同行について進言されたのはアンバー様ではないですか」とか言い出すしこ奴やりおる。
そうなんですけどね。でもそれとこれとは違うじゃないですか。
どうにか上手く断る方法は無いだろうか。
うーん。うーん。と悩みながら室内を見渡す。
おっ!
アザー様の絵が目に入った。これはいい。
「ミャ。ミャアン。ミャミャ!」
「なるほど。先代様がお認めになれば良いということですか」
そうです。そうです。俺はまだ守護獣(仮)ですからね。大事な決定はできませんので、代わりに先代様に決めていただきましょう。絵なのでしゃべれませんけどね。フフフ。
「偉大なる先代守護獣様。このアミーにアンバー様と同行する許可を。何卒よろしくお願い致します」
アミーはアザー様の絵に近づき、地面に両膝を付け両手を組み祈りを捧げる。それはまるで神に祈るシスターのよう。どこかでみたことのある絵画みたいだ。
でもたぶんアミーの心の中は邪だよ。さっきから目が甘い物を狙う時と一緒だったもん。そんな状態で何か起きるはずが――
「シャー!?」
なんか絵が光ってる⁉ これなんかダメなやつだよ!
ラーナツの時と似たものを感じる。今回は動けないわけじゃないけど、変だよ! だって絵が光ってるし!
光はやがて収束していき、アミーの目の前で一つの形を作った。そしてそれがポトリと地面に落ちると、強大な何者かの気配は消えた。
二回目ともなるとさすがにわかる。あれはアザー様の力だ。どういう原理なのかしらないけどさ。もしかすると自分に縁のある物を通じて死後でも限定的に力を発揮できるのかな?
ラーナツの時はなんか信仰とお祈りみたいなのがあったのでわかるけど、この部屋の絵は違うじゃないですか。どいうことなのよ。
「アンバー様。先代様より鍵のような物を預かりました。これは許可と見て間違いないですね」
ちょっとアミーちゃん。俺今真剣に考えているところだから待ってもらっていいですかね。というかその鍵どこかで見たことあるような……。ってそれ俺の部屋の鍵じゃん!? アイエー!? なんで!?
鍵はあっちの世界に置いてあるはずなのになあ。おかしいなあ。




