第六十三話 湿地へ
コトコト、カラカラ。今日はスーとルーも一緒なのでいつものメルヘン馬車かと思いきや、パザンやジャンくんも一緒と大所帯。そんなわけでエルミーナ家のスタンダードの馬車。もちろん一台はなくパザンたちとは別で乗っているけどね。
本日の湿地見学。引率はカトル爺先生。
合流する時に「今日は頼むの」と言われた。なのでほどほど頑張ります。
双子の親としてルアナも参加するのかと思っていたけれど、来なかったみたい。彼女は彼女で忙しいだろうしね。シャスタや他の奥様方との付き合いとかさ。
おっと。忘れるところだった。おまけとして妹のソックも今日は参加している。行った先で迷子になりやしないかと心配だったりするのだが、その時は母猫みたいに超能力で無理やり呼び戻せばいいかなと思っている次第。ただあまり他者へ使ってこなかったので不安ではある。超能力は便利で平和的に使うのだ。力に溺れては碌なことがないからさ。決してウルシや他の能力の方が強いのを見てビビってるわけではない。ほんとだよ? あっ。逃走の時は別腹ね。
エルティガの屋敷に着くと偉い人たちが挨拶して、そのまま目的地へ出発となった。先方からは一応馬車まで来て「ようこそ」みたいな挨拶はあったので、手抜きとかそういうのではない。効率的な判断。
車列は進み、やってきました観光地!
まあ冗談なんだけど、本当に観光地みたいな場所なんだ。駐車場のような中心にある広場に馬車を止めたんだけど、外に出てみるとぐるりと建物に囲まれていた。
「あちらで休憩してから先に進もうか」
大人たちなりの段取りがあり、それにしたがって進めているのようなので、とりあえず素直に同行。ペンションでいいのかな、周囲より立派な建物に入ると使用人たちが休憩の準備を始めた。それを見てソックの専属メイドちゃんがあたふたする。自分がどうしたらいいのかわからないのだろう。たぶん指示がなければそのままでいいと思うよ。今回はゲスト側だし、そもそも君の役割はお守りだからね。
入ってすぐ脇の広間には大きなテーブルが配置されており、各自が席に着き飲み物やちょっとした摘まむものを提供されたところで、改めてエルティガの参加者からの挨拶を受ける。
まずキンガというウスリの息子さんで現当主の男性。がっちりしていてウスリによく似ていると思う。一見怖そうだけど笑みを絶やさないようにしているので威圧感はない。さすが当主様だね。
その息子のスタンくん。スーとルーはもちろんのこと、パザンの息子ジャンくんよりも年上のお兄さん。年齢は中学生くらいなのかな。こちらもしっかりとした骨格に大人びた顔つき。遺伝だろうね。同系統の容姿。
あとはラシアという奥様に、パルレという娘さん。共に金髪で少しだけふくよかな女性陣。
この二人は今回ここで待機していて、この先にはついてこないそうだ。じゃあここまで来なくていいのにって思うけど、こうすることで今回の件にどれほどエルティガが力を入れようとしているかのアピールなんだろう。わざわざ一家揃って出迎えてますよってね。
もちろんタマもいるんだけど、気付いたら妹の近くによって凝視していた。知らないちびっ子がいて何だろうと思っているみたい。
毛色とかあまり似てないけどそれうちの妹なんですよ。よろしくどうぞ。
専属メイドちゃんはタマが近づいてビビっている。大きくて怖いもんね。現在の彼女にとっては、エルティガの使用人たちを手伝って妹の傍にいない方が幸せだったかもしれない。
休憩を終えると再び広場へ移動。カトル爺はラシアたちとここで待つことにしたみたい。結構移動するみたいだからおさぼりかな? 羨ましい。俺もサボりたい。
キンガたちはこの間に動きやすい服装に着替えていたようで、先ほどまでの「その恰好でいくの?」という見た目とは変わっていた。そりゃそうか。
さて行きますかということろで、進行方向より車輪が付いた不思議な船を荷車のように引いて歩く集団が近寄ってきた。見たことのない怪しいそれに妹が反応して少し興奮気味。どうどう。
「家で抱えている者たちだ。おい。挨拶をしろ」
「案内と荷運び。それに警護を担当いたします」
短くそう告げてきた人たちは、エルティガの専属ハンターさんたちみたい。手には槍や弓といった武器を持っている。そういえばワニの革が送られてくるくらいの場所だから危ないんだっけ。なんだかますます妹のことが心配になってきた。ちゃんと大人しくいうことを聞くんだよ? 興奮して聞いてないね。あらら。




