第五十八話 お返しはふわふわ
本日午後の天気は曇り。少しばかり世界が暗くて、その上湿度が高いからか気分はどんより気味。別に沈んでいるわけではないんだけれど、体が重い気がしてあまり動きたくはない。午前中のうちに用事は済ませているのでフリータイムなのはありがたいところ。こんな日は室内にいるに限る。
明日は雨かな。体がそう告げている。
先日治療を行ったウスリの体調は、日に日に良くなっていっているらしい。カトル爺と一緒にお礼の使者と会ったので知っている。その時にエルティガの屋敷ではお灸が人気だとも聞いた。なんでもウスリが自らと同じような体の悩みを持つ者にお灸を使う許可を出したところ、やっぱりそちらでも効果があったのだとか。それが若い使用人たちにも広がり「ウスリ様のため」という建前で自らを検体として、専門家から聞いた様々なツボで試しているんだって。すごいというべきか、何というべきか。ともかく次回の注文数が増えそうで俺としては怖い。
そうそう。治療のお礼なんだけど、こういう時ってお金よりも物で返ってくるんだね。ワニの皮とかそういう高級素材が中心だった。俺みたいなのだとお金の方が良さそうに思えるんだけど、お金出しても中々買うことのできない物の方が上流社会だとありがたがられるらしい。
お礼の品だが、もちろん俺にも届いている。水鳥の胸から取れた柔らかい羽毛で作られた布団。さすがウスリ。伊達に歳を取ってない。よくわかってる。俺みたいに小さな体だと重い布団は辛いからね。ふかふかでふわふわのやつがいいのだ!
「アンバー様。こちら非常に高価な品ですので、取り扱いにはお気を付けください」
話をすればなんとやらで、丁度アミーが運び込んでくれた。慎重にベッドの上に置いてくれたよ。改めて物を見ると、中の羽毛もさることながら周囲を覆う布も絹のような高級品ですごく肌触りが良い。いや、猫だから毛ざわりか?
ともかく、地球でも使ったことのないような高級布団!
ベッドメイキングするふりをしてスリスリと手触りを確かめるアミー。見ていると目が合ったが、恥ずかしそうにしていた。その仕草が可愛い。この子は時々年相応の行動をする。
せっかくなので使い心地を試しますかね。テシテシとアミーを添い寝のパートナーとして誘い、一緒にごろん。最近はこういったことに躊躇していたアミーだが、高級な羽毛布団には抗えなかったようで無事陥落。試してみたい気持ちわかるよ。うんうん。
「重さを感じないのに温かいです」
重さを感じないという表現は少し大げさではないかと思うのだが、その辺りは人と猫で生活様式や使う寝具が違うからアミーにとったらそうなのかな。
たしかに姿勢を変えるのもスムーズにできるし、これはいいものだ。今日みたいな少し肌寒い日に丁度いい。むにゃむにゃ。
丸くなって目を閉じていると、気持ち良くなって寝てしまっていた。珍しく隣からすぅすぅと寝息が聞こえる。普段こんなことはないのに、アミーが本格的にねているみたい。布団から少し身を出して顔を見ると、寝顔は少し幼く見える。
それにしてもこの布団すごいね。アミーがころりだもん。
はっ!?
もしかしてこれ特殊能力付きなのでは!?
いやあ、あまりにも気持ちいいからおかしいと思ったんだよね。そりゃ高価だ高級だって言われますわ。大切にしなくちゃ。
どれくらい寝ていたかわからないけれど、そろそろアミーは起こさないと不味いだろうと思い、顔を肉球で押して起こしてあげる。サボってると思われてルアナに怒られたら可哀そうだもん。誘ったの俺だしさ。
「んん……。ハッ!?」
さすがに刺激を与えると目が覚めたみたい。両手で顔をペタペタと触って確認した後、すぐにベッドから降りて身だしなみを整え始めた。寝起きはいつもこんな感じなのかな?
「失礼いたしました」
そのまま部屋を出て行ってしまった。何か仕事でも思い出したのかも。
外を見ると曇りなので時間がわかりにくい。俺のお腹はまだ大丈夫っていっているのでもうひと眠りしようかな。せっかくお礼にもらったんだもん。有効活用しなくちゃ。
たまにはこんな日があってもいいよね。




