第五十三話 一年後と新たな問題
時が経つのは早いもので、妹が来てから一年くらいが経った。
スーやルーはまだ子供なので成長が早い。背が伸びて、少しずつ顔がしっかりしてきている。とはいえまだまだ子供。スーは水を扱う力が上達し、ルーはお転婆に磨きがかかった。どちらも伸び盛りだ。
それだけの期間が過ぎれば俺だって成長してよさそうなものだが、屋敷に来たころとそれほど変わりはない。なんだか悔しい。
「力が強いほど成長が遅れますので、アンバー様は将来有望でございます」
アミーからこんなことを言われ、まんざらでもない俺。
将来有望ということはですよ、女性人気に拍車がかかるということなんです。カフェで大人の女性たちが話していたからね。間違いない。
体は成長していないようなものだが、お土産輸送関連の問題は解決した。たんぽぽを回収してきた後、一年もさぼっていたわけではない。
輸送の解決方法だが、なんと契約を結んだのである。
契約とは言葉の通り。エルティガには約束を守らせる特殊な力を持つ動物がいて、その効果を利用した契約書を用いた。こっちの世界はこういった便利な物があっていいよね。ちょっと高かったけどさ。
イメージ的には従業員契約と奴隷契約の間くらいだろうか。決まり事以外は自由なので、約束を守るつもりがあればなにも困ることはない。
問題はその強制力。どの程度かという話だが、守られなければ死ぬことになる。単純であるがゆえに恐ろしいもの。悪意があれば即死。そうでなければ徐々に契約を破った者は肉体を失っていくのだそうだ。
契約相手だが、ノストスという名前の陰がある地味な男性。容姿は黒髪に茶色い瞳ということもあり、日本人の俺からすると見慣れていて安心する感じ。口数はあまり多い方ではないが、護衛の仕事なんかをしていたらしく体つきはしっかりしていて頼りになりそう。馬の扱いにも慣れていて、馭者もこなせるといった便利な人。
肝心の契約内容は「月に一度指定された内容を熟すこと」と「俺の情報を他人に漏らさないこと」大きく分けるとこの二点。もちろんもっと細かい内容にして穴が無いようにしている。
前者は基本的には地球から持ち込まれた商品の配達。時々何かお願いしたいことがあれば相談しますよって内容。後者はそのままかな。
エルミーナ以外で変わったことといえば、他家との関係性。今問題となっているのはこの部分。
以前、この街の王エルナード家に赴いてカレーによりシャスタの体調を改善させるという行為を行った。そのついでに娘のルナリアの火傷問題にも関わり、地球の軟膏とアロエの力によって火傷の痕が少しずつ良くなっていったのだが、それによって完治すればスーとの婚約という話も出ていた。
この話、最初はエルナード当主ギールが娘の火傷の痕が良くなる兆候を見せ、喜びのあまり勢いで始めた話だったのだと思う。そして当初、他家では完治すると思われていなかったのか大きな問題にもならなかった。
だがここにきてそれが現実味を帯びて来てしまった。今まで四天王最弱と思われてきたエルミーナが力を持ちそうだということで焦り始める家が出てきたのだ。
結果、ルナリアの婚約者争いというものが勃発した。
候補者だが、ライエルとピュエルマの二家は年の近い後継者候補が名乗りを上げ、エルティガは未だ選出中。我がエルミーナは今まで通りにスーといったメンバー。
ルナリアの婚約者に相応しいとされる条件であるが「外敵より街を守れるだけの力」だそうだ。新しく家を興すとなれば必要なものだというのは理解できるが、スーより他家の方が有利なのはいただけない。
ちなみに条件について勝手に語っているのはライエルの現当主。要するに外野が勝手に騒いでいるだけの状態。エルナードはまだ何も公的には発言していない。
そんなわけで、なんだかせっかく俺が成果を上げたのに台無しになってしまった。でもそれに怒っているかというと、元々ルナリアとスーをくっつけたくてやっていたわけではないし別に構わないかも?
でもカトル爺やルアナといった家のことを考える立場だとそれはまた違うらしく、二人とも最近はプリプリ怒っている。
まとめると、またなんか巻き込まれそうで面倒なのである。大人たちだけでやってくれればいいのにね。それにエルミーナの守護獣はティトなのだから、ティトに何とかしてほしいがいつもちゅるりとペロペロしてるだけなのよな。
吾輩、先行き不安です。




