第五十話 ソックと舎弟
「ソックちゃんご飯ですよ。アンバー様もお越しください」
「ニャ!」
専属メイドの呼びかけに嬉しそうに歩み寄る妹の尻尾はピーンと立っている。ご飯を前にして興奮状態らしい。メイドに対してスリスリ中。
妹の名前はソックに決まった。命名はスース。由来については足先は色が違うからだって。要はソックスってこと。名前の響きが男の子っぽいような、でもそこまで気になるほどでもないかも? やんちゃな妹には丁度良いかもしれない。
ここ数日ご飯の時、どうも最近俺がおまけのような扱いをされているが、彼女は妹の専属メイドだししょうがないのかな。俺だけ「様」付けだし敬う気持ちはあるらしいし様子見としますか。俺はお兄ちゃんだからさ。
二匹で並びハグハグと食べる。今日の朝食も中々の出来でした。さすがラーナツだ。今朝が鳥肉なので昼か夜は魚かな。楽しみである。
食事が終わると俺は中庭に移動する。妹は知らない。完全にメイド任せ。
色とりどりの花が咲いている花壇を抜け、噴水で水魚たちに挨拶したあとは、一度付近の土の上でゴロゴロ。背中が汚れてしまうが、習性で勝手に身体が動くことも。
そのあとは林の中に移動する。ここで何をするかといえば、新しく舎弟になったミミズクの世話をするのだ。
このミミズクどうしたのかというと、ある朝ベランダに放置されていた。まだ幼く小さな体は淡い色のホワホワした毛で覆われており、目は大きくまんまるで目立つオレンジ色。どうみても飛べるようには見えず、とても一人でここに来たとは思えなかった。俺みたいに特殊能力があるのかとも考えたが、それならすでにここから移動していてもおかしくない。
突然のことでびっくりしながらも様子を窺うべく近づこうとすると、俺を見てひどく怯えた目をするのだ。そこで気付いた。これ母さんが持ってきた妹の生活費代わりなのではないかと。
そうとなればこれを食べればいいのか、素材として利用すればいいのかわからずアミーを呼びに行く。すると「こっこれは!?」とか慌てだしたのだ。
メイド服のスカートをたくし上げながら走り出したアミーは、すぐにルアナや執事のセルトといったこの屋敷の主要なメンバーを集めて来た。
大人たちがワーワー騒いでいるところ、ルーの「これなあに? かわいい」という質問によりやっとセルトから説明が行われた。簡単にいうと「家を与えて住み着かせると良いことがある鳥」らしい。水魚とかみたいに扱われる生物の一つであり、非常に高値なんだって。しかも珍しいのでお金出せば買えるわけではないので時価だそうだ。もしかして俺より価値が高い生物なのかも……。
そんなわけで中庭の木の上で飼うことになったのであるが、なぜか飼育係が俺ということになってしまった。ルアナ曰く「あなたの家族が運んできたのでしょう?」ということみたい。恩恵を受けるのはこの屋敷なのにな。おかしいなあ。
たしかに木の上に設置した家で世話をするとなると俺が適任なのも事実。なにせ超能力でひょいひょいと高いところまで行くことが可能なのだ。餌さえ用意してくれれば運ぶだけでいい。
あとこいつ俺以外の言うことは聞かない。見た目は幼いが非常に賢いらしく、相手を見て態度を変える。
「ミャミャ」
母親になった気分で餌を運んでやれば、この時ばかりは俺相手でも愛想よく振りまいてくるミミズク。幼く見えても非常に強か。
メニューは仕留めたばかりのネズミ。自分では食べないので積極的にネズミを狩ってこなかったが、やろうと思えば簡単にできる。すごいでしょ!
餌やりが終わると屋敷へと戻る。すると耳にメイドが騒いでる声が聞こえた。ぴこぴこと動かし場所を特定して向かうとそこは倉庫。
室内には数人のメイドと共に妹のソックがいる。
「ソックちゃんは偉いですね!」
「ミャアアン!」
なんと妹もネズミを捕えていたらしい。そして複数のメイドに頭を撫でられて誇らしげである。
俺だってネズミ捕まえたんです! しかもミミズクに餌やりまでしたんですよ!
伝えたいこの想い。
しかしこの場にアミーはいないので伝わることもなく、悲しみの中一人で部屋に帰るのだった。




