第四十九話
昨日、母が屋敷にやって来た。もちろん人間じゃなくて猫の方です。
独り立ちしてからだから数か月ぶりになるのかな。
どうも俺が母のことを考えていたのがテレパシーで伝わったらしく、それを受けて来てくれたらしい。しかも妹を連れて。
屋敷から街中って結構遠いよ。よく伝わったものだと思う。俺よりも長い年月を生きているからか、超能力は母の方が全然上みたいだね。俺も数年もすれば同じようなことができるようになるのだろうか。
「ミャア」
「アンバー様とは毛色が違うのですね」
母は一日だけいて屋敷の調査を終えたらどっかに飛んで行ってしまった。もしかすると俺から発する輸送を手伝って欲しい気持ちを勝手に感じ取って面倒になって逃げてしまったのかもしれない。しょうがないか。母は正真正銘猫ちゃんだから自由気まま。俺や人間の都合なんて配慮しないし。独り立ちした息子には冷たいらしい。
でね。妹だけおいて行っちゃったわけ。となれば当然俺の部屋で過ごすことになるわけで、現在は目の前でアミーと妹が遊んでいる状態。
安全な場所と思って預けちゃったのかな。そうなんだろうな。いつの間にか兄弟集合とかそういうのは避けたいところ。兄弟の方が気に入られて解雇とかになると悲しいもんね。
たった一日にしてアミーに懐いた妹は、手を甘噛みしつつ後ろ足でキックを連打している。あれって猫飼っている人ならわかると思うが、噛む方は加減していても蹴る力は強く結構痛い。
そして楽しくなって興奮してくると噛む方も強くなっちゃって、結局そっちも痛い。アミーの手を傷つけないように気をつけてほしいところ。
相変わらず妹は自らの特殊能力がわかっていないようで、ただの白っぽい猫。顔の中心、鼻の付近が黒くシャム系の血が入っているのだろう。一応顔は俺にも結構似ていると思う。だから美人さん。
最近収入があったから妹のことを養うことは構わないのだが、ベッドが占領されていることが解せぬ。実は妹の方が若干体が大きいので、センターが奪われる。そのガーゼのクッションは俺のなのに……。
でも寒い日には暖かそうだし暖房代わりにいいかも?
とにかく居候が増えてしまった。
「お食事の時間ですよ」
「ミャッミャ!」
野良として生活していた姿はどこに行ってしまったのか。猫まっしぐらといわんばかりに食べ物へと近づいていく妹。ラーナツはちゃんと二匹分用意してくれてるのでありがたい。けれど急いで食べないと妹が俺の分を奪いに来る。優雅な食事の時間が奪われて悲しい。急いで食べるとゲロゲロになって体に良くないのに。
食後はルアナの元に行ってご挨拶。今日はスーとルーも一緒にいる。
「よく似ているわね」
「アンバーの兄妹?」
「かわいい!」
無事受け入れられているようで一安心。生活費は俺がシャスタやルナリアの件で稼いだものから賄われるとしても、それをするのはルアナたちだからね。挨拶は基本。挨拶は大事。
どうも妹は女性と仲良くなるのが得意なようですぐにルーと仲良くなった。こういうのってメスと男性が仲良くなりやすいイメージだったのだけれど今回は違ったようだ。
「メイドを一人付けましょうか」
あれ?
それ妹のことですよね?
未だに俺には専属メイドいませんけど……。なんだか待遇が違う件。あれおっかしーぞーとばかりに顔を横にコテンと倒す。
「アンバーは専属メイドは必要ないでしょう?」
まあそうっちゃそうなんですけどね。それに専属はいなくても何人かは部屋に出入りしてお世話してくれますし。大半がクッキー目当てですけど!
ルアナの指示でやってきたメイドは、例の若いドジっ子さんだった。この子が妹の専属になるらしい。もしかしていっぱいやらかすから選ばれたのだろうか?
ちょっと不安ではあるけれど、知らない相手よりはいいかも。
挨拶が終わると厨房へ移動。兄としてラーナツに「今後は妹もお世話になります」と伝えねばなるまい。妹は置いてきた。厨房で暴れたりつまみ食いをしても困るのと、まだルーと遊んでいたからね。帰りも専属メイドが付いたので安心だ。俺が付いている必要もなくなった。そう考えるとルアナの判断は有難いものだったと言える。
「アンバー様のご家族でしたら何も問題ございません!」
そういうことらしい。
他に挨拶が必要な相手は……カトル爺とティトかな。でも少し遠いからね。また明日以降に機会があればでいいかな。




