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先代様の置き土産  作者: 鈴寺杏


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第四十八話 薬の成果

 ルナリアの火傷が良くなり始めたんだって。よかったね。


「お主あれはなんじゃ?」


 よかったねと喜んで終わらないのがこの世界。普段ならまずルアナに捕まるところだけれど、今回は外交問題もあるため相手はカトル爺だ。

 でさ、目の前ですんごい顔してるんだよね。怒ってるってわけじゃないけど、鬼気迫るっていうかさ。「あれ俺なんかやっちゃいました?」そんな気分。地球産の軟膏どれくらい効いたんだろう。


 詳しく聞いてみると、日に日に火傷の痕が消えていくレベルだとか。うん。聞いてもよくわからない。消えていくとかそんなわけないでしょうに。こっちの人たちって大げさなところあるから実際見てみないとね。


 どうも何通りか試した結果、軟膏を塗りつつアロエを貼ると効果的なんだって。ふうん。とすれば俺の持ち込んだ軟膏じゃなくてアロエのせいでは?


「ふむ。あの植物がな」


 あれは山で見つけたので俺よりティトの成果だよね。だから一緒にティトもお話に参加しましょうよ。俺だけ詰められるの嫌なんだよ。


 助けを求めるようにティトを見ると、目がおやつ寄こせって言ってる。大丈夫準備してあります。ちゅるりといっちゃってください。とろっとしたのもあるからね。


 目の前で守護獣様に対してペロペロタイムのご奉仕をしているのにカトル爺のお話は止まる様子がない。


「それにあの良い匂いのスープ。あれも問題じゃな」


 二回目のカレーでついにシャスタは歩き始めたんだとか。「シャスタが立った!」きっとギールとルナリアはそう言いながら喜んだことだろう。


 あれ?

 そうなるともう結果だしたからスーの件終わりで良くない?

 俺はスーの守護獣(仮)なので「お前の功はスーの物」的な解釈をすれば十分じゃないですか。なんで褒められるわけじゃなくて、若干責められている感じなのだろう。


 理解が追い付かず首をこてんと横に倒す。目はパッチリでよくわかってない子のポーズ。


「実はルナリア様の火傷の痕が消えるようなら、スースとの婚約という話が出ておってな――」


 えええぇ!?

 まだ小学生でしょ。そんな物語の主人公みたいなことあるう?

 でもよくよく考えると、二人とも貴族なんだもんね。あり得るのかな。


「スパイツに男児はスースのみ。どうしたものか」


 仮にルナリアとスースが一緒になるとしたら、エルミーナとのパワーバランスがおかしなことになっちゃうのが問題らしい。スースは次男スパイツの子だから今のところ次期党首ではない。

 かといってエルナドの王ともいえるエルナードから嫁をもらっておいて分家ってのは難しいわけで。それならば新たな家を興すのはどうだってことになるみたい。エルナードを除いた四天王が五人になっちゃうね。それは大変だ。大問題ですよ!


 するとスパイツの後を継いで別館の管理をする人間がいなくなると……。なるほどなるほど。別になくてもよくないそれ? 別の人に任せるのはだめなのかな。


 あとは下世話な話、スパイツとルアナが頑張るとかどうだい?

 

「ふむ。新しい孫とな」


 こういう時だけ上手く伝わるのね。まあ多少ジェスチャーで補足しましたけども。 

 ほら。カトル爺もそっちの方が嬉しいんじゃない。その線で行けばどうでしょう。あとはルーが継いでお婿さんを入れるとかも方法としてはある。


「それはならん!」


 お爺ちゃん怒っちゃった。まだ小さな孫の結婚した姿でも想像したんだろうか。でもね、考え方によっては余所の家に嫁に行って会えなくなるよりはずっとマシなんですよ。


「なるほどの」


 考え込むカトル爺を見て隣のシェバスが声を殺して笑っている。そりゃ笑うよね。俺も笑いそうになってるのを我慢してるもん。猫だから笑ってもバレないかな?


 そもそもの話、これってまだ先の話でしょ。ルナリアの火傷の痕がどこまで消えるかわからないし。それに消えたら消えたで他の街の権力者との話ってのも再燃するんじゃないだろうか。たぶん貴族ってそういうものでしょ。


 そう思うとルナリアが可哀そうな気がしないでもない。だけど火傷のことまでは手を出したけど、さすがに彼女のその先についてはしーらない。俺はルナリアの守護獣ではないのだ。もし本当にスーと一緒になるなら話は別だけどね。なんせ俺はスーたちの守護獣(仮)なのだから。


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