第四十七話 缶入りクッキー
最近部屋に出入りするメイドが増えた気がする。前はアミー含めて三人くらいだったのにね。しかも新人教育ってわけではなくて、そこそこベテランのお姉さんメイドが多いのだ。カレーやチョコレートの関係でエルミーナの家における俺の重要度が上がり、お世話する人が増えたのかな?
「アンバー様のお菓子が原因でございますよ」
ちょっと拗ねた感じのアミーにそう言われてしまう。俺の顔を見て何を考えているのか読み取ったらしい。
さすがアミーちゃん。でもなんで拗ねているんだい?
「受け取ったメイドが嬉しそうに話しておりましたよ。ずいぶんと美味しいらしいではありませんか。まるで天にも昇る菓子だとか。奥様に伝わると大変なことになりますよ」
天にも昇るってちょっと大げさすぎない? それ死んじゃってるよ!
ともかくとして、今の話しぶりからわかった。アミーも欲しかったのか。そういえばチョコレートも食べたがっていたもんね。じゃあこの缶の中から一枚だけ上げます。好きなの選んでいいよ。
「よろしいのですか? ではこれを……」
おそるおそる缶の中に手を伸ばすアミー。そして選ばれたのは綾〇……ではなくてジャムの付いた可愛らしい見た目のもの。女の子はそういうの好きだよね。男の俺も好きだけどさ。ジャムの部分がくっちゃら感があってたまに食べるといいんだそれ。
あ。食べたからルアナには秘密にしておいてね。買ってくるものが増えると困るから。今でさえ運ぶ方法に悩んでいるところだし。せめてそれが解決してからにしてほしい。
「口止め料……いえ、私は何も知りません。日頃のお世話の対価に不思議な食べ物の味見をしただけ」
いつもはしっかり者のアミーからそんな言葉が出てくるから笑ってしまった。いいんじゃないでしょうか。そういう個性的な部分も出してくれると親近感が増す。そうでなくても今のところ一番身近な存在だけど。
それにしてもそうか。クッキーも人気か。こっちにもクッキーあるのにあれじゃダメなのかね。ルアナやスーやルーが食べているのを見たけど、高級品だったのかな?
今度街中で値段を確かめてみようかね。
さて、スーの能力の件ではないが、いずれは秘密はバレるもの。このクッキーもそのうちバレてルアナにせっつかれることははっきりした。これは本格的に運ぶ術をどうにかしなければいけない。
最初に考え付いたのは、シャスタの時に案として浮かんでいた御用商人ムーブ。満月の日にえっほえっほと運べばいい。ただし馬車なんて扱ったことがないのよな。猫語を理解してくれるお馬さんを探す必要がある。でもこれはちょっと難しそう。すぐには対応できない。
とすれば、街中にエルミーナ家で場所を確保してもらうことの方が楽か。そこに荷物を運び込むと屋敷まで配送してくれる人を配置するのだ。
これの問題点は、早くても一か月に一度しかお仕事がないこと。その間場所と人員が無駄になってしまう。それに毎月あっちで仕事したくないでござる。そのために今回たくさんチョコレートを持ち込んだのだからせめて二か月は帰りたくない。今頃ルアナがホイホイ口に運んでそうで怖いなあ。
付け加えると決まったタイミングであっちへ帰った場合、要求がエスカレートすることが考えられる。今の様子を見ていると、そうなるのは目に見えている。このままじゃルアナが肥えちゃうからね。守護獣(仮)としては、ルアナの体型も守護する必要があるだろう。よし、そういうことにしよう。
本当はお金が儲かるからやりたい気持ちもあるんだけどな。毎月金貨三枚あれば仕事しなくてもなんとかなるもん。ただ金貨を換金するのもノーリスクってわけじゃないのが問題。一枚二枚なら珍しいの持って来たなくらいでどうにかなりそうな気がするけれど、さすがに複数枚となるとねえ。怪しいお店なら買い取ってくれそうだけど、その分買い取り額が低い上にリスクがありそうで可能なら避けたい。
潰しちゃえば大丈夫なのかな? 前回浮かれて調べ切れていないので、次戻った時に確認しておこう。
考え事をしているとクッキーを食べ終えたアミーは居なくなっていた。
呼び出しも無いということは自由時間みたいなので中庭に行く。今日も天気は良さそうだ。空には猫みたいな形の雲も見える。ふと猫の母が今何をしているのか気になった。




