第四十六話
ルナリアに軟膏を塗り塗り。
さすがに魔法みたいにすぐに効果なんかでやしない。
「痛くない」
薬と言われ変なものを塗られたけれど、痛みが無かったようでお嬢様もご機嫌だ。これでしばらく様子をみましょう。まるで本当の医者のようなセリフ。フフフ。少しかっこいい気がする。白衣のにゃんことかいいんではないだろうか。俺はこげ茶色なのでよく似合うはず。
「これは火傷にしか使えないのかしら?」
シャスタの質問に対して即答できない俺は、パッケージに書かれている内容を確認する。火傷用ってことで買ったからそれ以外の効能を知らないのは仕方ないよね。
どれどれと見てみると、あかぎれ、しもやけ、打撲、筋肉痛とかにも効くみたい。
「そうなのね」
なんかすり込む以外にもガーゼで覆うとかもいいらしいので、せっかくアロエもあることだしこれを使って伸ばしつつ、幹部に貼ってみてはどうだろうか。アロエパックって言葉聞いたことあるし。
「ひんやりして気持ちいい!」
そんなわけで表面のかたい皮を剥いで、とろとろつるんとしたアロエでルナリアの幹部を覆う。火傷の痕はひどいのに感覚はしっかり残っているのかな。かさぶたに触れると痒いし、そういうたぐいだろう。
アロエを見ていると、コンビニでアロエの入ったぶどう味のドリンクをよく飲んでいたことを思い出す。あのパックのやつ美味しかったんだよね。中のアロエがつるりんとしててさ。
思い出しついでに余っているアロエをあぐあぐと噛む。特に味らしものはない。植物って感じがするだけ。なので食べても苦ではない。
「あら? 食べられもするのね。アンバーちゃん美味しい?」
「ミャアア?」
単体で食べて美味しいかと言われるとどうなんでしょう。不味くはないよ。
俺の様子を見てシャスタもガジガジしてた。使用人たちが慌ててたけど、死にはしないから大丈夫だと思うよ。たぶん。
こういうところを見ると、元気な時のシャスタは今のルナリアみたいにお転婆だったのかもね。顔だけじゃなくてそこも似ているんではなかろうか。
帰りの馬車ではカトル爺が神妙な顔をしていた。
「アンバー。お礼ということで金貨を預かっておる。後ほど届けさせるからの」
カレーの代金が金貨ですか。オアシスの水、富士山頂の飲み物のようですね。需要のあるところに持っていくと価値が上がるやつ。
嬉しいけど半分はエルミーナの取り分かな。スパイスの多くはそこから出ているし、作り上げたのはラーナツ。報酬は払われるべき。
「での。このまま体調が回復するようであれば、定期的に頼みたいという話なんじゃがどうする?」
元々この話の発端はカトル爺が言い出したスーの功績のため。あなたが始めた物語ですよ。良い事なら続ければいいんだ。俺としてもシャスタに良くなって欲しいし。
「孫のためにすまぬな」
顔を見てればなんとなく伝わったみたいだね。すまぬなって言われるほどじゃないのでお気になさらずに。
別館に帰るとアミー含めた使用人が並んで迎えてくれた。なんか急に偉くなった人みたいでムズムズする。お勤めご苦労様ですってことでいいのかな。こういうのは慣れないね。
部屋に入るといつものようにベッドに上がり横たわる。
ふう疲れた。シャスタがほんわかしているのでそこまででもないが、やはり他人と長時間接するのは猫には苦痛。
大きくお口を開けて欠伸を一回。このまま寝てしまいたいところだけれど、先に爪とぎをしておこう。専用の木材を拾ってきているのでこれでバッチリだ。バリバリと引っ掻いているとテンションが上がってくる。このかっこいい姿を誰かに見せつけたいがアミーは部屋まで付き添ってくれたあとまたルアナのところに戻ってしまったしな。相手がいない。
終わると気分が変わってしまった。今日は椅子の下で寝ることにしよう。絨毯が敷かれているのでそれほど悪くはない。それではおやすみなさい。
「ひゃあっ!?」
悲鳴に反応してサッと動き構える。メイドの一人が入ってきていたことに気付いていたのですぐに動けた。耳のセンサーは優秀なのだ。伊達に毛が多いわけではない。ところで何事だい?
あっ。
俺がいつもと寝ている場所が違ったので驚いたのか。水の交換お疲れ様です。
こぼれなくてよかったよ。
お詫びに自分用のクッキーを一枚上げよう。缶に入った高そうに見えるやつだからね。これで許してほしい。でも空が茜色で日暮れが近いから一枚だけだよ?




