第四十五話 火傷と薬
どうやってルナリアに火傷用の軟膏を渡そうかと思っていると、勝手にあちらからお呼び出しがかかった。ラッキーだ。
エルナード家の要件は「カレーまた持ってきてよね」ってこと。シャスタへの効果が十分にあったということだろう。大きな声では言えないがきっとブリブリしたんだと思う。
道中の馬車ではカトル爺がプリプリしている。ルアナに比べてお土産が少ないことが不満らしい。怒るというよりも、拗ねたおじいちゃんなので怖いわけではない。
どっちかというと執事シェバスの方が怖かったくらいだ。無理やり金貨を二枚も渡してきたからね。笑顔で大金渡されるって凡人からすると恐ろしいってことにこの歳になって初めて気づいたよ。
エルナード家につくと歓待される。当主のギールはご機嫌だ。そりゃ奥さんの体調が良くなればそうなるよねって話。
「アンバーくんはシャスタが部屋で待っているのでそちらに向かってくれ」
いつのまにかアンバーくんというフレンドリーな呼ばれ方になっているが気にしない。長い物には巻かれておいたほうがいい。
案内してくれる使用人も以前より丁寧な印象を受ける。こちらに対する配慮といえば良いのか、気にしてくれてるのがわかりやすい。
「待っていたわアンバーちゃん。おかげさまであれからすごく体調が良いのよ」
部屋に入り見えたシャスタの姿は、たしかに以前より体調が良さそうだ。でもまだベッドにいるってことは、完全に良くなってはいないってこと。
「あのスープを飲んでから動く気力が湧いてくるのよ。特殊な力でも使われているの?」
んん?
俺の力は超能力。そんな錬金術師か薬師みたいな不思議パワーではない。
カレーってそんな効果もありましたっけ?
血行が良くなったからとかそういうことなんだろうか。顔色も良くなっているし、そういうことなら辻褄が合う。あとはブリブリして体が軽くなったとかどうだろう。
「奥様。本日もお持ちいただいております」
「あら本当。いい匂いがしてきた」
メイドがカートに乗せていい匂いのスープことカレーを運んできた。
今回は何と、わざわざあっちから取り寄せたターメリックに市販のルウが少しだけ入っている特製のやつなのだ。きっと前より美味しいはず。もう味見済みだよ。その時より熟成されてよくなってるかもね。カレーは出来上がりよりも少し経った方が美味しい。
「前回より少しとろみがあるかしら?」
そうです。その通り。
ルウってメーカーによってとろみが出やすいものとかあるよね。今回はそれ。食べやすいちょっと甘めのタイプ。最近ではいろいろ出ているけど、食べたことないのはどういう感じかわかんないし無難なものにした。
「美味しい」
「ミャミャン!」
うんうん。ブレンドした結果完成度上がってるよね!
嬉しいは伝わるのだ。俺もご機嫌になる。
「お母さま!」
で、匂いがすれば前回同様ルナリアがやって来ると。後ろからあわててメイドが追って来たので、どこかから抜け出してきたのかな?
「まずはご挨拶でしょう?」
「はい。アンバーこんにちは。私のもある?」
なんだろうこのカレーの添え物感。
俺は今福神漬けや、らっきょうの気分を味わっている。
冗談は置いておいて、鍋はここの使用人に渡しているので分配に関しては聞かれてもわからないんだよね。「メイド殿どうですか?」って感じで見るんだが、少しだけ微笑まれて終わり。
「これはお薬なんだから、少しだけよ。はいあーんして」
雛のように母親に口を開けて催促するルナリア。たぶん普段はこんなことしないんだろうね。ベテランメイドが何か言いたそうにしている姿が視界の端に映った。シャスタも体調が良くなったから、気分的にやっちゃったんだろう。
それにしてもお薬か。言い得て妙だ。カレーって見方を変えると薬をまぜまぜしたものだもんね。
「おいしい!」
今回は服が汚れることなく無事に終わりそう。母娘の微笑ましい姿を見て吾輩ほっこりである。
丁度ルナリアも来たことだし、食後に持ってきた軟膏を試してもらおうかな。実は山からアロエも回収してきている。そっちも試してみたい。戻った時に気になっていたのでアロエの効能調べておいたんだよね。まずはパッチテストかな。




