第四十四話 金貨と銀貨
「おかえりなさいませアンバー様」
薬やらチョコレートを持ってエルミーナの別館こと我が家へ帰ってくると、今回もアミーが待っていてくれた。今回は事前に外出は伝わっていたはず。なのにここにいるのは楽しみにしていたのかな?
だとすれば微笑ましくもある。
そんなわけで深夜なのだがその場でチョコレートを渡してあげる。
はいどうぞ。
「こちらは?」
「ミャアン」
「私がお願いした物でしょうか?」
自信なさげに確認してくる。
それに対して首を縦に振り「そうですよ」と教えてあげる。アミーが相手でも時々伝わらないことがあるのでね。シンプルに動きで表現。
もしかすると結構お高い物を買ってきたので、自分の物ではなくてルアナの物だと勘違いしているのかな。いい感じの高級そうな箱に入っているものなのでそう思うのも仕方がない。実は銀貨を換金したら千円どころかその四倍の四千円にもなったんだよね。だから予定よりも更に高級で数も多いチョコレートになっている。
「ありがとうございます!」
ひしっと抱きしめられた。
うん。とても良い匂いがする。役得役得。俺の懐は痛んでいないのにね。ちょっとだけ申し訳ないや。
翌日になるといつものようにルアナの元に行く。
今回はお遣いってことが伝わっているし呼び出しって感じではなかった。ただの納品だねこれ。これではまるで商人だ。
「アンバー様。これがすべて当家の物ということでよろしいでしょうか?」
沢山積まれたチョコレートの箱を見て執事のセルトも戸惑っている。
今回は量が多くて大変だった。これ以上増えると持ち運びがきつくなるので、別の方法で運び込むことを考えねばならない。チョコレートって意外と重いのよな。あんなに小さいのに不思議。
ちなみに沢山買ってきたのは事実なのだが、預かった金貨の価値からすると一部しか使っていない。だってまさかの二十万円超えですよ。二十万!
もし律義に全部チョコレートを買っていたならば、俺は箱に潰されていたことだろう。さすがにちょっと大げさかな? でもそれくらい多いってこと。
実際に使った金額は五万円くらい。それでもずいぶんな量になってしまった。
「アンバーまたお願いね。それからセルト、次回分の金貨を渡しておくように」
「かしこまりました」
珍しくにこにこ顔のルアナ。こうしてると本当に美人さん。チョコレート好きなんだね。そういえば嫌いって人、身近にはいなかったな。
見ているとすぐに包装を開けて口に一つ放り込んでいる。二回目ともなれば手慣れたものだ。嬉しそうにパクっとしていると、少し幼く見えるので不思議。
とにかく量にも質にも満足しているようで一安心。まさか手数料として半分以上俺が得しているとは思うまい。フフフ。
渡す物は渡したし、もう帰っていいよね。分配をどうするかってのはそちらで決めて欲しい。ちゃんとスーパーマーケットでも買えるようなお安い物や、子供たちが喜びそうなカラフルな袋に包まれてるやつもある。舌の肥えた人たちなら、一つ食べればこっちの意図は汲んでくれるはず。もし使用人たちがもらえなくてもそれは俺のせいではない。
「ミャ!」
おててを掲げて逃げるように退室する。やることはやっているので呼び止められることはない。ルアナはチョコレートに夢中だし。
ルアナの元を去ると次はラーナツのところかな。今回ちゃんとターメリックを仕入れて来たんだよね。これでカレーの完成度も一段アップするだろう。
厨房前でいつものように迎えられると、通販で購入したターメリックをラーナツへと渡す。英語で書かれた本場っぽいかっこいいパッケージだよ。
「これは?」
そう言いながらラーナツが臭いを確認する。
「質の良いウコンですね」
「ミャア?」
ウコン?
いやいや。バカ言っちゃいけませんよ。それターメリックなのよね。
近寄って自分でも確認すると、見た目はよく似ている。
買い間違えじゃないよな。パッケージはターメリックになっているし……って、えええ⁉
裏面のシールに小さくウコンて書いてあるうう!?
まさか同じ物なの?
なんだかすごくショック。
今日はもうお部屋に帰ろう。
「この容器は便利ですね! アンバー様。ありがとうございます!」
背後から聞こえるラーナツの声。
それ追い打ちなのよね。とほほ。




