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先代様の置き土産  作者: 鈴寺杏


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第二十五話 スーの秘密

 いつもとは違った場所へ運ばれているようで、さすがの俺も警戒を強める。


 屋敷の外に出ると俺を抱いたセーラはそのまま駆け、林の中に作られた道へと突っ込んでいく。説明もなく未知の場所に連れてこられて困惑気味。ただセーラが酷いことするわけではないのだろうという信頼感はある。そういう匂いがする。これは変な意味じゃなくて、安心する雰囲気というか言うなればアロマとかそういった効果に近いものだと思う。


 段々と耳に届いていた音たちが鮮明になりはじめ、言葉として、情報として捉えられるようになってきた。ただ主となる声はただの拒絶であり知れることは少ない。


「うわあああああぁぁ! 来るなあ!」


 スーが叫んでいる。


 ちょっとした林を抜けると、そこは開けた場所になっていた。

 まず視界に入ってきたのは何かを囲むように円状に立つ兵士たち。一目でその中心では何かが起こっているであろうことは明白。「落ち着いて下さい」なんて声が聞こえてくる。

 未だスーが叫んでいるが、兵士たちの態度を見るにそれほど緊急性のある状況ではなさそうか。ホッと胸を撫でおろす。


 そこから少し離れた場所にはルアナ。それにセルトやアミーといった使用人たち。セーラが向かう先はそのルアナたちがいる場所のようだ。


 息を切らせセーラが立ち止まる。

 一同がこちらに注目するなか、ルアナが冷静に「アンバー見ての通りよ。お願いね」といつものように語り掛けてくる。相変わらず言葉は少ない。


 見ての通り。


 兵士たちの隙間から見える中心部分では、ルーをかばうような態勢で叫ぶ半狂乱の双子の兄スー。そしてその周囲には水で出来た球状のものがいくつか浮いている。


 明らかにあの状態を起こしているのはスー。

 以前中庭にて「人以外は特殊な力を備えている」そんな風にアミーから聞いていたのだが?

 チラリと目を向けるが、それに対して今答えがもらえるわけでもない。


 まあ、その辺りの事は一旦忘れて、まずはスーを落ち着かせるとしますか。


 トトトッとスーたちの元へ近づき、超能力で双子の体を少し浮かせる。

 慌てたスーの声が大きくなりそれに呼応するかのように水の玉が大きくなったが、所詮はピンポン玉より少し大きな程度。苦も無くそれらの水球を地面に叩き落とすとスーは一気に脱力した状態へと変わった。


 そして二人を座った態勢になるよう地面に降ろして、近づいて「ニャ!」と一言挨拶。


「アンバー!」


 ルーが泣きながら抱き上げてくる。その姿をボーっと視線で追っていた兄のスーは気を失ってしまった。能力の暴走、使い過ぎによる一時的な症状。


「ごくろうさま」


 いつの間にか後ろに立っていたルアナが声をかけてくる。

 とりあえず場は落ち着いた。


 スーを抱き上げたバーマンがルアナの指示に従い、広場の中にいくつか設置されている小屋の方へと向かう。俺はルーがまだ放してくれないので、一緒になってセーラに抱えられている状態。


 道中改めて広場を見渡せば、どうやらここは兵士の訓練所とかそういった場所のように見える。周囲は木で囲まれており、屋敷から見える景観を損なわない様に配慮されていることが想像できた。


 小屋の中は意外といっては何だが、こんな訓練所の中にあるわりには臭くもなく清潔な印象。兵士たちが使う小屋とは分けられているということなのだろう。

 中にはソファも設置されているので、その上にスーは静かに降ろされていた。

 ルーはルアナの膝の上に移動。よって俺はようやく解放されることになった。


 アミーの方を見るが彼女は仕事中。仕方なく適当な椅子を選び、トンと飛び上がると一人で座ることに。少しだけルーが羨ましい。できれば俺も柔らかいクッション的な存在が欲しい。そんな気分のせいか髭の先がへにょんと下がり気味になる。


 この場にいるメンバーを眺めながら「バーマンをまともに見るのは久しぶりだな」とか考えている内に、メイドたちによってルアナの前に茶が用意される。すると騒ぎが収まったことでの安心からか若干緩い感じのしていた空気が一変。緊張感のあるものに変化した。


 お茶飲むんじゃないの?


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