第二十四話
まだ薄暗い時間。
いつも通りの朝。今日も今日とて使用人たちの活動が始まり、俺を眠りから呼び覚ます。二度寝しようかなんて考えるが、寝すぎると動きたくなくなるのは猫も一緒。それに寝るならアミーの膝の上がいいし。そんな機会はなかなかないのだが。
ということで自らに活を入れその場で一つ伸びをする。
さすがに窓を開けてくれそうなメイドはまだ来ないので、自らの力で開け外の空気を入れる。早朝ということで外の空気は冷たい。こうするとたまにキャンプした日の朝を思い出す。脳内で再生される景色は霧が薄っすらとかかっており、そこに光が差すというなんとも神秘的な光景。この記憶は子供の頃のものなので良い方の思い出。
そういえば外の冷たい空気を体に取り入れるとシャキッとするあの感覚はなんなのか。あれがマイナスイオンってやつなのかも?
考え事をしながらまったりと過ごす時間。
少しずつ太陽が顔を出す面積が広くなってくれば朝食の合図。
以前はもう少し遅かったのだけれど、ラーナツとの関係が変化してからは早くなった。早朝から厨房近くを歩くメイドを捕まえて中に引き入れては俺のところに早く届けるように催促するようになっているのだとか。
そこだけ聞くとヤバイ奴だ。実際ちょっと前までヤバイ奴だったけど。
結果としてここのところ朝一に出会う相手はアミーではなく別のメイドになってしまった。少しおどおどした幼さの残る娘なので、見ていて不安になる。彼女はたぶんドジっ子枠での採用のはず。漫画ならきっとそうだ。
そうしていつも通りの朝食。
お上品に食べたいところであるが、ハグハグとがっつく癖はなかなか抜けない。家族と取り合いをしていた影響から身体に染みついてしまっている。
この後ルアナからの呼び出しがある日ならばアミーがそれを伝えにやってくる。本日はその様子が無い。ゆっくりとした時間を過ごすことができそうだ。双子も今日座学からじゃないし。
ベランダに出て日向ぼっこを始める。最初は手摺の上でのんびりと。この猫ボディは本能的に少し高いところを好む傾向にある。なので一見危なそうな細い場所に乗っていることも多い。
そんな姿を見てビックリしたり、おろおろ心配したりする使用人もいる。例のメイドなど主に若い子たち。ベテランの人たちはにこやかに微笑んだり、挨拶をしてくれたりと慣れている様子。きっと先代のアザー様も同じようにしていたのだろう。
ここのところ日中の気温が上がってきている。朝の内に陽の光を多く浴び、午後からは涼しい日陰で過ごすのがよいだろう。
下町で生活していた時は気にすることもなかったが、日本の四季のようなこういった気温変化もティトたち守護獣の影響なのだろうかとふと思い浮かんだ。
守護獣といえば、先日ヘムテイロ氏の講義で俺も守護獣(仮)ということが判明したわけだが、現状何をすべきかの説明はまだない。
相も変わらず俺はこの家で双子と時間を過ごす仕事しかしてないのである。
守護獣なんて立派な役職を与えられてしまったので、以前にも増して何かしなければいけない使命感というか、義務感がわいてきているのだが……。
だって主任だ班長だと役職貰うと、多くの場合そういう気になるじゃない。給料や報酬の増加が無く、仕事や責任だけ増えてやる気ダウンなんてこともあるけどさ。
先代のアザー様はどうしていたんだろう?
こういったことを教えてくれる相手がほしいが、適切な相手が思い浮かばない。ルアナは用事がある時以外はあまり話しかけてこないし、わざわざ説明してくれるようなタイプではない。ヘムテイロ氏は双子に合わせた内容だし、アミーは最近ちょっと忙しそう。
ラーナツという選択肢もなくはないが、奴が守護獣について語れるかというと……無理だろう。
考えも煮詰まったところで、体も暑さを感じ始めた。部屋に入るとしますかね。
動き始めたところにバタバタと誰かが走り寄る音を耳が感じ取る。
バタッ! という音と共に中に走り込んできたのはセーラ。
「アンバー様! 急ぎお越しください!」
唐突に抱え上げられると、そのまま連れ去られる俺。
何事ですかにゃ?




