第二十三話
今日も今日とて朝からお仕事。
と言ってもいつもの双子の座学に付き合うってやつ。
「先日エルナド周辺の地図を見ながら話しましたので、今回はその続き。それぞれの家の特徴などを聞いていただきます」
いつものようにヘムテイロ氏による講義。
「以前エルナード家を中心として、それを囲むように四家が都市の拡張を続け街を守っていると話したかと思います。この四家。エルナード家の一族が分かれ興した家なのは言うまでもありませんが、本日お話しするのはそうした理由です」
真剣にその話を聞くスーとルーの双子。もちろん俺も真剣に聞いている。だってまだ始まったばかりだしね。もう少し集中力は続く。これが獲物を狙う時ならもっと頑張れるんだけど、このボディ頭脳労働はそれほど得意ではない。
「お二方は守護獣という言葉をご存じですね?」
二人と一緒に自然と俺も頷く。
聞いたばかりの守護獣についてと、とてもタイムリーな話。
ヘムテイロ氏。いいですぞ!
「そこにおられるアンバー様や、本館におられるティト様がそうです。まあアンバー様の場合はまだ幼いようですので正式な契約というわけではないと聞いておりますが――」
知らないうちに契約(仮)していたらしい件。
ちょっと待ってください。
契約書とか書いてないんですけど。これ勝手に契約されたことになっているなら大問題じゃないですか?
警察。いや、弁護士を呼んでください!
「その役割というのは言葉の通りに家を守護することなのですが、我ら人がそれらの方々と契約により得られる恩恵は他にもあります」
俺が抗議の意を込めて籠の中で爪とぎのようにバリバリとし始めても続くヘムテイロ氏の講義。
「守護獣様といえば、その強いお力の影響で次第に周辺環境が変化するというのが大きな特徴です」
バリバリタイムであろうと勝手に耳に入ってくる情報。
整理すると、守護獣は精霊みたいな感じでいいのか?
精霊なんて久しぶりにファンタジーな言葉を耳にして冷静になる俺。
「というこを踏まえ、改めてこちらの地図を見てください。ライエルは見通しの良い木々の少ない草原。エルティガは森に水気の多い湿地。ピュエルマは低木林や砂地。そしてエルミーナは木々豊かな山。そういった特徴があります」
説明されてから改めて地図を見返すと、たしかに周辺環境はおかしいと言わざる負えない。事前説明が無ければ、嘘というか素人が適当に作ったものだと思うほどに。
だって正確な広さはわからないけど、一つの都市の周辺だけでいくつもの自然環境が共存しているわけで。もしかすると俺が知らなかっただけで地球上にもそういった場所があったのかもしれないが、それは極めて稀な例なんじゃないかと思う。
「それぞれの環境により得られる物資が変わってくるのは言うまでもありません。我々が口にする食料が豊かであるのは、こうしたいくつもの環境から恩恵を受けているからなのです。もちろんメリットばかりではなく、デメリットもあるのですが――」
なるほど。それぞれの守護獣による環境変化を活かそうと思えば、今のように家を分けて配置する必要があったということか。それに加えて小さな地域で強力な守護獣と契約し、多く抱えるというのは良くないのだろう。
例えばエルミーナとライエルの特徴。山と木々の少ない草原。「どっちなんだい!」と筋肉の精霊が怒りはじめるのが想像できる。
おそらくより力の強い守護獣の影響によって、一方から得られるはずだった恩恵が消されることになるのではないだろうか。それならば家を分けて、距離を取っちゃおうと考えるのはあたりまえのこと。
結果、複数の守護獣と契約することが可能となり、都市を守る戦力も増強できる。やらない手はない。
そんなこんなで今日は興味深い内容だったので途中テンションが上がったこともあり、講義を完走することができた。たまにはこういうことがあっても良い。
窓から外を眺めれば、たしかに緑豊かな山々が視界に入る。説明通りならば、この景色はティトの影響によるもの。改めて守護獣である彼女のすごさを認識する。
俺が守護獣となった場合どうなるのだろうか?
ふとそんなことを考える。
期待というより不安が大きいのは、まだこの体が幼く力がないからか。はたまた別の理由か。
理想はティトのように自然豊かにする力。
なぜなら俺は猫。自由にのんびりと寝ていたいのだ。
優しい風の中、緑の多い場所でゆっくりと眠る自分を想像する。
傍らにはアミーか、それとも別の誰かか。
未来を想像すれば、少しだけ笑みがこぼれた。
そうなる頃には双子が大人になっていることだろう。
読んで下さりありがとうございます。




