第十三話 スイートタイム
ムゥムゥ、メェメェと甘えた声を出しアミーに甘える。時々舌がちょこんと出たままになっているらしく、柔らかな笑みのアミーにちょんと突かれては慌てて仕舞う。
はあ。何という幸せな時間であろうか。この先日発見したデートスポットこと中庭でのスイートタイムは――。
さて、先日の事件によりアミーからの好感度が下がってしまったはずの俺がなぜこんなことになっているかというと、拾得物の件が冤罪であったと判明したからである!
よかった。よかった。
例の髪留めであるが、あの後アミーによって持ち主が探されることになった。そうしてとあるメイドの物だと判明したわけなのだが、そのメイドは髪留めを受け取ると「一か月前に無くして探しても見つからず、もうダメだと思ってました。大切な祖母の形見なんです」と涙ながらに語ったらしい。
とするとである。その頃の俺がイタズラで持ち運ぶことは出来ないことは明白。なぜならその頃はまだ野良猫生活をしていてここに来る前だったのだから。
このことが判明した結果、アミーは俺に平謝り。「何でもいたしますのでお許しください」くらいの勢いで謝られたわけなのだが「何でも? 今、何でもって言ったよね? グヘヘ――」とはなるはずもなく。別に気にしてないよと「ミャア?」とだけ返した。本当は枕を濡らしていたわけだが、モテる男を目指す俺としては言わぬが花ってね。
結果、アミー提案の「一日甘やかす」という内容に落ち着いたわけである。
よって本日はアミーちゃん貸し切りデーとなったのだ!
要するにお詫びというやつである。
そんなわけで午前中から中庭で甘やかされているわけなのだが、残念な猫ボディはぽかぽかとした温かい陽気と、アミーの膝の上という安心できる場所のせいですでに半分お眠モード。せっかくの時間であるのに有効活用できそうにない。
残念に感じながらも自然に降りてくる瞼に抗いつつ、意識を保つためにムニャムニャと口を動かし続ける。
そんな俺の様子を見て、アミーは優しくポンポンと眠りを促す。
人の手、生物の温もりってのは不思議なもので、落ち着き、安らぎをもたらしてくれる。
結果、俺はそれによって陥落。眠ってしまうことになるのだった。
穏やかな風と共に周囲の声が耳に届く。
それによって浅い眠りから覚醒状態に近づく。
まだ起きたくない。もう少しこのままでいたい。
そう考えるが、身体は勝手に反応する。
耳はピコピコと動き音を掴み、働き始めた脳はそれを情報として変換していく。
「最近ラーナツ料理主任の様子がおかしいんです」
「ラーナツさんは元々おかしい人ですが、具体的にはどんなことが?」
「時々ボーっとしながら根菜を猫の形にカットしたりしています。あっ! でもちゃんと後から私たちが刻んで食材として使ってるんで無駄にはしてません」
聞こえてくるのはアミーと若い女性の声。
ラーナツ?
ああ。厨房のインテリヤクザさんか。
「それはたしかに異常ですね。アザー様がお亡くなりになってからしばらくは似たような状態でしたが、近頃は落ち着いていたはず」
「先日そちらの猫ちゃんをお見掛けしたからではないかと……」
「猫ちゃんではありません。アンバー様です。スティさん。以後、間違わない様に」
「はい……」
相手の女性はスティさんね。
会話の内容から厨房の人だとわかる。
「それで相談に来たわけですか」
「ここにいる姿が見えたもので……」
「厨房に顔を出せと?」
「できれば……」
スティの言葉を聞きアミーはため息を一つ吐く。
呆れた感じのアミーちゃんもいいですね。
表情を見ようと目を開けると、アミーと視線が交錯する。
慌ててまだ寝てる振りをしたが、間違いなくバレていることだろう。
やだやだ。まだこのままいたい。
「本日のアンバー様は休息日。それにルアナ様に確認が必要な内容です」
アミーの言う通り。
今日は甘やかすデーなので無理なんだ。悪いねお嬢さん。
それにしても俺が厨房に行くことになぜ双子の母ルアナの許可がいるのか。
そこについては――私、気になります!




