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ゆかりの魔法

 *** 麻木視点(上原勇のクラスメート)


「あれ?上原寝てるのか?」


 オレは上原と、小学校の頃からずっと同じ学校だった。

 同じ地域の人は、小学校から中学までは同じ学校に通う。

 高校になると、本人の希望などで別々に分かれるものだが。


 オレは高校に上がっても、上原と同じ百合浜高校だった。

 学校は家から近くて徒歩二十分。

 家から近いからという理由で学校を決めた。


「疲れてるんでしょ?寝かせてあげなさいよ」


 上原の隣に居るのは黒田しおり。

 彼女は、いつの間にか上原の彼女になっていた。

 上原は高校一年の春くらいまでは、普通にオレらが虐めていたんだけどな。


 黒田さんが優しく上原を見つめている。

 クソ羨ましい。


 艶っぽい黒髪を、三つ編みで束ねている彼女はいつも片手に本を読んでいる。

 眼鏡をかけていて、クールな印象。

 不思議な魅力があって、クラスでも結構人気がある。


「麻木ー。上原に構ってないでこっち来いよ」


 真崎に呼ばれた。

 まだ、構ってもいないんだけど。


 来年は進学か就職か。

 受験勉強はしたくないな。



 ***



「あれ?俺寝ちゃってたか…」


「おはよう」


 目を覚ますと、しおりが微笑んでいた。

 どうやら、昼休み中だったらしい。

 授業の途中から記憶がない。


「疲れてるなら、回復魔法ヒールかけるわよ?」


「ば、馬鹿。魔法がバレちゃうだろ」


「意外とバレないかもしれないわよ?」



「じゃあ、ポーション飲めばいいじゃん」


 聞きなれた女子の声。

 声の方を向くと、青いハンカチで包まれた四角い弁当箱を持ったゆかりが立っていた。


「お兄、お弁当忘れてんだもん。届けに来ちゃったよ」


 お弁当箱を差し出される。


「お前、学校は?」


「今日は中学は半日だもーん。ほら、せっかく持ってきたんだから受け取ってよ」


「「ゆかりさーん」」


 ゆかりの後ろから、安良坂が抱きついた。

 クラスの皆の目が点になっている。


 安良坂は優等生というイメージがあるから、ギャップに驚いたのだろう。

 相変わらず成績は学年トップだ。

 今日も教室に遊びに来ていたらしい。


「お前、ここは学校の教室なんだぞ?」


「正さんちょっと…流石に恥ずかしい。離れて」


 ゆかりは顔を真っ赤にして、突き放そうとしているが安良坂は離れる様子がないようだ。

 安良坂が、飼い主に抱きつく大きな犬に見える。

 尻尾しっぽをブンブン振ってそうだな。


風よ(ウィンド)


 ゆかりが小さくささやくと、ゆかりの周りに突風が巻き起こった。


「「きゃああっ!」」

「「わあっ!」」


 突然の風に驚くクラスメートたち。

 驚き過ぎて固まっている。


 しばらくして、風は収まった。

 教室内は物が散乱していた。



「ゆかりさん…」


「離れてって言ったじゃない」


 ゆかりは、頬を膨らませている。

 学校で魔法を使うのは不味いよ。

 バレないといいのだが。


「今の何?」


「窓から風が入った…のかな?」


 みな一様に首を傾げている。

 魔法だとバレていないみたいだ。

 自然現象だと思ったらしい。


「…ゆかりお弁当ありがとうな」


「うん」


 俺はゆかりからお弁当を受け取り、耳元で囁く。


「魔法は使うなよ…バレたら大変だろ?」


「だよね。つい、ごめんなさい」


 俯いてシュンとするゆかり。

 悪いのはすべて安良坂だな。

 後で叱っておこう。





 学校が終わり、俺はしおりと途中まで一緒に帰っていた。


「今日は肝が冷えたわね」


「だよな。まさかゆかりが、学校で魔法使うなんて思ってもみなかったよ」


 ゆかりは、しっかりしてそうで結構抜けてるとこあるからな。

 考えなしのところとか。


「でもあれは、安良坂くんも悪いわよね。いきなり抱きつくんだもの」


 家ならまだしも公共の場だからなぁ。

 まさか抱きつくとは思わなかったが。


「ゆかり、まさか学校で魔法使ってないよな?」


「まさかねぇ。使わないんじゃないの?多分」


 運動とか魔法を使うと楽に出来たりするからな。

 真面目なゆかりが、そんなズルはしないと思うけど。

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