ギルドの初仕事
「ただいまー」
「おかえり。お兄、帰りが遅かったね」
家に帰るとゆかりがエプロン姿で出迎えた。
「少し、安良坂の家に寄ってきたからな。ほらこれ、お土産」
安良坂がゆかりにと、俺にお菓子を持たせていた。
紙袋に大量のお菓子を箱ごと寄越したのだ。
「ありがとう。え?こんなに沢山?しかもこれ高いお菓子じゃない。後で食べようっと。その前にお礼のメッセージ送っとかないとね♪」
ゆかりはご機嫌のようだ。
スキップしてるな。
「お兄ちゃんお腹空いたなー夕飯は…」
「あー。そこに出来てるから、適当によそって?」
ゆかりは、安良坂とのメッセージに夢中のようだ。
俺は夕飯を食べることにした。
鍋のふたを開けると、肉じゃがのようだ。
炊飯器を開けてお茶碗にご飯をよそって、おかずを皿にのせる。
テーブルに載せて一人で食べ始めた。
「なあ…ゆかり、俺が異世界にしばらく行くとしたらどうする?」
「ん?しばらくってどれくらい?」
「来年からずーっとかな」
「冒険者ギルドのお仕事だっけ」
「うん。そう。たまに戻ってくるつもりだけど。安良坂は大学に行くだろうから頼んでおくよ」
「嫌だ」
「嫌って…お前」
「……嫌って言っても行くのでしょ?一週間に一度くらいは家に帰って来てよね。帰って来なければ、正くんにお願いして会いに行くんだから」
「悪いな」
「謝るんだったら行かないでよ」
やっぱり寂しいよな。
一人きりにさせちゃうし。
「週末には帰って来るようにするからさ」
*
『だったら、ゆうが異世界へ通えばいいじゃない。そっちの方が合理的でしょ?』
「それは、思いつかなかった」
しおりに電話すると意外な答えが返ってきた。
考えても見なかったよ。
べつに異世界へ住まなくても職場には通えるのだ。
まあ、普通は出来ないだろうけど。
遠距離通勤ってやつだろうか。
いや、違うような気がするな。
『その方がいいわ。わたしとも連絡が取れるしね』
しおりは結局大学に行く事にしたらしい。
勉強したいことがあるのだとか。
「そうするよ」
ゆかりが寂しくならないようにと思っていたのだが。
しおりとしばらく連絡が取れないと、俺の方が病んでしまうかもしれないし。
俺、結構メンタル弱いんだよな。
*
冒険者ギルドの訓練場に入ると声をかけられた。
「よろしくお願いします!」
声をかけてきた、茶髪の冒険者は頭を下げる。
冒険者にしては丁寧な言葉使いだな。
俺は、土曜日を仕事の日にしてもらっていた。
朝一番から、冒険者がくるとは思ってもいなかった。
意外なことに申し込みが殺到しているらしい。
意外と人気があるんだな。
「まずは、自己紹介をしてもらうか」
「おれはアラン17歳、諸事情あって冒険者になる事にしました。まだ登録したばかりです」
いたって普通の青年。
腰に剣が携帯されている。
剣士なのだろうか。
俺は、アランと剣で軽く打ち合う。
意外と動きは悪くない。
俺はスキルで剣技が高いが、アランは相当努力している感じだ。
訓練場に金属音が響く。
「流石ですね。ギルドに勤めているだけの事はある…」
何やら感心されているみたいだ。
「魔法は使わないのか?」
「一応使えますが、初級程度なので…っておれ、魔法使えるって言いましたっけ?」
「魔法が使える気がしたから、訊いてみただけだ」
本当は鑑定魔法を使ったのだけど。
声を出さなくても、鑑定はできるからな。
*
「初日はどうでしたか?」
「ああ、ラナさん。真面目そうな人ばかりで驚きましたよ」
俺が若いから、バカにしてくるかと思っていたのだけど。
午前中二人、午後二人を相手に教えた。
基礎的な事を教えただけで、大したことはしていない。
「ウエハラ様は知名度が高いのですよ?元勇者ですし、みな真面目にもなるでしょう」
え?元勇者ってバレているの?
俺が驚いた顔をしていると、呆れた様子でラナさんが言う。
「今更ですか…ブラックカード持ちで、黒髪。変わった名前なのですから直ぐに知れ渡ってますよ」
俺たちが、気が付かないだけで周りに知られていたのか。
安良坂やしおりの事も?
「そういえば、ギルドのカードって色によって何かあるのか?」
「黒は強大な魔法・複数属性持ち、青は一般の冒険者レベルの魔法、白は回復魔法特化、黄色は剣士・魔力無し、緑は王城やギルド関係者ですかね」
他の人のカードを見たこと無いからな。
みんな黒いカードだと思っていたよ。




