冒険者ギルドからの依頼 2
*** カルロス(ギルド長)視点
「ふう~」
執務室で、オレは積み上げられた書類に目を落とした。
今日の分はようやく終わったか。
「カルロス、お疲れ様です。お茶をお持ちしますね」
「ああ、ありがとう。ラナ」
冒険者で文字が読めて、魔法を使える人材は意外と少ない。
ウエハラは元勇者だけあって、魔法は一通り使えるようだが。
「冒険者の怪我が、少なくなれば良いのだがな」
王都の冒険者ギルドは人が多い。
最初の登録は王都で、と王都までわざわざくる連中がいる。
別に地方で登録すれば良いと思うのだが。
なので初心者がやたらと集まるギルドでもあるのだ。
オレが初心者に直接指導出来ればいいのだが、書類やらの雑務が多すぎて手が回らない。
ウエハラなら、ある程度信用出来るからお願いした訳だ。
「考える…か。何か不都合なことがあるのだろうか」
「彼は、まだ若いですからね。他にやりたい事でもあるのでしょう」
ラナが机の上にお茶を置いた。
「かといって、他に頼める者もいないからな」
頼める人材が、まるっきりいないわけではないが。
人には向き不向きがあるからな。
直ぐにかっとなる奴は向いていない。
その点、ウエハラは冷静沈着であまり怒らないだろうしな。
***
「ウエハラ様~」
一週間ぶりに冒険者ギルドへ行くと、青い髪のラナさんが声をかけてきた。
ギルド職員に、呼ばれると周りから注目されるんだよな。
様呼びはやめてほしい。
「あの件考えて頂けましたか?」
異世界はのんびりしているので、直ぐに返事を出さなくても大丈夫だと思っていたのだが。
意外と急ぐ案件だったりしたのだろうか。
「ええ、まあ」
「では、こちらへどうぞ」
ギルドカウンター奥にあるソファを勧められる。
仕切りが無いので外側から丸見えだ。
カウンター中の職員は気にしないで仕事を続けている。
「ウエハラ、それでどうする?」
いつの間にか、ギルド長が座って待っていた。
俺の目の前のソファに座る。
何故か睨まれて怖いんですけど。
「仕事を受けても良いのですが…一つ、条件がありまして」
*
「ギルドの仕事を、週一回にしてもらった。平日は学校があるからな」
「週一回…それでよく採用されたわね」
「別に採用されなくても、構わなかったんだが…」
「あの…何で、君たちぼくの家に来て話しているんだろう?家に誘ってなかったよね?」
「お前、いつも俺の家に無断で来ているのだから良いじゃないか。それにしても広い家だなぁ」
何処かの料亭みたいな部屋に、庭には池があって鯉が泳いでいる。
床は畳で昔ながらの日本家屋って感じだ。
床の間に日本刀が飾ってある。
流石に本物の刀を見たのは初めてだな。
俺が刀をじーっと見ていると、安良坂が話しかけてきた。
「それ、家宝らしいよ。よく知らないけれど」
家宝…ってどこかに仕舞っておくものじゃないのか。
そんな大事な物を客間に飾っておくとか。
金持ちのやる事はよく分からんな。
「あらまあ、おぼっちゃまがお友達を連れてくるなんて珍しいですね。さあ、お菓子を沢山召し上がって下さいな」
「あ、どうもおかまいなく」
「ありがとうございます」
エプロンを着た、お手伝いさんが俺たちを見て微笑んでいた。
テーブルの上にお茶にケーキや、和菓子が用意された。
あまり食べ過ぎると夕飯が入らなくなりそうだ。
「…ゆかりさんは居ないんだね」
「ゆかりは家で夕飯を作っているんじゃないかな」
「そうなんだ…」
「そういえば、安良坂は高校を卒業したらどうするんだ?大学へ進学するのか?」
「父は医者を継いでほしいみたいだけどね。そうすると医学部へ行かないとだし」
「そうか…」
ゆかりが家に一人になっても、安良坂が一緒に居てくれると助かるんだがな。
「ゆかりをよろしく頼むよ」
「ん…?わかった」
首を傾げる安良坂。
後でちゃんと説明しないとな。
高校生のうちは今の家で過ごすが、卒業したら異世界へ移住しようと思っている。
そうなったら、家に一人にさせてしまう。
ゆかりは、身勝手な俺を許してくれるだろうか。




