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冒険者見学

 *** 安良坂 視点


 異世界の家の庭で、ぼくとゆかりさんは魔法の練習を重ねていた。


 彼女は魔法の才能があるらしい。

 初級程度なら、一通りの魔法が使えるようになっていた。

 まだ練習を始めてから二回目なんだけどな。

 異常なほど、上達が早い。


ただしさん、冒険者って何ですか?」


 ゆかりさんは、ぼくの事を名前で呼ぶようになっていた。

 慣れてなくて少し恥ずかしい。

 ぼくとゆかりさんは付き合うようになってから、名前で呼び合うようになった。


「冒険者ギルドに登録した、危険なお仕事をする人達かな?魔物とか討伐したりするんだよ」


「へえ~そうなんだ。正さんは冒険者なんだよね?お兄から聞いたよ」


「まあ、一応ね」


「私もそれ付いて行っても良い?」


「え?」


「冒険者って、どんなものか見てみたいの」




      *




「どうした、安良坂。変な顔して」


 ぼくは上原くんに相談していた。

 ゆかりさんが、冒険者に興味を持ち始めている。

 上原くんは家のリビングで寛いでいた。


「ゆかりさんが、冒険者に興味を持っているみたいで…」


「へえ~そうなんだ」


「上原くんは妹さんの事、心配にならないの?」


「え?だってお前が面倒を見るんだろ?お前なら危険な目には合わせないだろうし。ゆかりは、魔法を使ってみたいだけだと思うがな」


 魔法を覚えたての最初の頃。

 ぼくも使いたくて仕方なかった頃があった。


「魔法ね。だったら冒険者じゃなくてもいいよね」


 冒険者は危険が付きまとう。

 魔物と戦わせたくはないからね。


「見ているだけなら大丈夫なんじゃないか?」


 見ているだけ…ね。

 ゆかりさんも好奇心旺盛みたいだからやってみたい!とか言いだしそうだけど。

 その時はそのときか。







 ぼくらは、強い魔物が出るといわれる森の奥地に来ていた。

 王都から三時間くらいの場所。

 以前、魔王が居たとされる森の近くだ。


「お前ら、気が散ってしかたないのだが…」


 上原くん、ぼくたち見ているだけにしたよ?

 ぼくとゆかりさんは、少し離れた場所から上原くんの事を見学することにした。

 もちろん、ぼくらの周りには防御結界を張ってあるので危害が加えられることは無い。


「今日は、ギルドに頼まれて仕方なく戦うだけなのだが…安良坂あとで憶えておけよ」


 何で恨み言を言われているのか分からない。


「お兄、頑張って!」


「お、おう」


 上原くんが一瞬にして笑顔になった。

 ぼくの時と態度が全然違うのだけど。

 ゆかりさんに手を振っている。


 念のため今日は黒田さんも一緒に居るみたいだ。

 彼が、怪我をすることは無いと思うけどね。


「行くぞ!」


 目の前に居るのは、身長が三メートルほどの魔物。

 頭に二つ角が生えていて、青い肌の魔物。

 上原くんを赤い目で睨んでいる。

 オーガとか言う魔物だっけ。


 魔王が居なくなって、最近は大人しくなったはずなのだけど、何故か村人を襲うようになったらしいんだよね。

 見た目に反して、本来は大人しいのだとか。


「「ガルルル…」」


 上原くんとオーガが対峙していた。


「お兄、大丈夫なのかな…」


「あれでも、元勇者だから心配はいらないよ。念のため黒田さんもいるしね」




『鑑定』


 上原くんはオーガに対して鑑定魔法を使った。

 目の前にステータスボードが表示されている。


「どうやら状態異常らしいな。だから人を襲っているのか」


状態異常解除レリース


 上原くんはオーガに魔法を放った。

 

「ガ?」


 オーガはキョロキョロと周りを見渡している。

 どうやら正常な状態に戻ったようだった。


「俺たちは、お前を殺す気は無い。森へ帰ってくれないか」


 言葉が通じたのか、しばらくするとオーガは森の中へ帰っていった。

 驚いた、本当に人を襲わないんだな。



 オーガが居なくなったので、ぼくは上原くんに話しかけた。


「今回はギルドの依頼だったのでしょう?殺さなくても大丈夫なの?」


「人々を襲うってところがネックだったからな。襲わなくなれば問題ないだろ」


「なあんだ…お兄が、戦うのかと思ってたのにな」


 ゆかりさんが不満げにこぼした。

 今日は戦闘にならないから…ってゆかりさんを連れてきたのだけど。

 これじゃ不満だったのか。


 殺し合いとか、見るとショックで眠れなくなるからね。

 ぼくも、最初見た時は結構辛かった。


「流石に…戦いを見慣れていない人には、殺し合いとか見せられないよ」


「そうよ。ゆかりちゃん。わたしたちは慣れているから良い様なものの…」


 ぼくたちは召喚されて仕方なく、魔物と戦っていたんだ。

 特に理由もなく興味本位だけで見せられる代物じゃない。


「わかったわよ」


 口がへの字に曲がっている。

 これで彼女が、納得してくれると良いのだけど。

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