映画館デート
今日は、しおりと街でデートをしようと思っていたのだけど、どうしても妹のゆかりの事が気になって異世界に来てしまった。
しおりには申し訳なく思う。
「ゆうって、シスコンよねー」
しおりには呆れられたけど。
二階の部屋の窓から、庭を見ると安良坂とゆかりが魔法の練習をしていた。
水魔法の練習だろうか。
家の庭には草木が生えていて、のんびりと時間が流れている気がする。
異世界ってこういうところ良いよな。
「真面目に練習してるな」
「そりゃそうでしょ」
魔法って、最初は習得するのに時間がかかるんだよな。
一回成功すると、後は苦労しないのだけど。
俺は火魔法を出すのに、一週間くらいかかったっけ。
「ゆうが、珍しく映画行こうかって言うから楽しみにしてたのに…」
しおりが頬を膨らませて文句を言っている。
昨日から、楽しみにしていたみたいだからな。
俺が、ゆかりの事が気になって今朝になって予定を変更したいって言ったから。
「悪かったよ。ちゃんと後で行くからさ」
「本当よ?あら、ゆかりちゃん喜んでいるみたいね」
「あ、本当だ。もう魔法が使えたのか?凄いな」
嬉しくて飛び跳ねているようだ。
余程うれしかったのだろう。
安良坂と抱き合っている。
「あいつ等、くっついてるぞ…」
俺が知らない間に、カップルになっていたのだろうか。
ゆかりが、安良坂に取られたような気がして微妙な心境になった。
まあ、そうなるような気はしていたのだが。
「まあ、仲良くて良いじゃない。…ここにいたら、わたしたちお邪魔かしらね?ゆう、帰りましょ?」
少し落ち込んでいる俺の肩を軽く叩き、しおりは「時空間移動魔法」を発動させた。
*
俺たちは元の世界に戻っていた。
移動先はしおりの部屋だ。
「ゆう、大丈夫?」
しおりが俺の顔を覗き込む。
大丈夫…と言いたいが、ショックは思いのほか大きい。
俺、かなりシスコンだったらしい。
「ほら、いつかはね?妹さんはお嫁へ行ってしまうのだし、気にしないほうがいいわ…今日は予定通りわたしとデートしましょ?」
頭では分かってるつもりなのだが。
いつまでも一緒に居られるわけがない事を。
しおりにデートと言われたが、気分がのらない。
「じゃあ、お家デートでいいから…ね?」
しおりの手が俺の手に重なった。
「元気がないゆうなんて…嫌よ」
彼女からふんわりといい香りがする。
甘い花の香り。
何の花なのだろうと思いを巡らしていると…。
「ん…」
突然、口が彼女の唇で塞がれる。
ほんのりとした甘い口づけ。
ぼーっとしていて彼女にキスされてしまった。
俺は目を見開く。
「え?」
「少しは元気出たかしら?」
突然現実に引き戻された。
目の前に居るのは俺の彼女。
「ごめん…俺、しおりが居るのに全然気が回らなくて…」
そういえばキスは久しぶりかも。
今頃になって、顔が火照ってきた。
「今からで良ければ、映画見に行くか?」
「うん!」
俺ってしおりに心配ばかりかけている気がするな。
もう少し強くならないと。
*** 黒田しおり視点
今朝、ゆうが妹さんの事が気になっていて「様子を見に行ったら?」なんて言ったら、異世界まで見に行く事になってしまった。
中学生なのだし、妹さんもある程度しっかりしていると思うのだけど。
お兄ちゃんとしては心配なのだろうか。
ご両親は海外にいて、二人暮らしをしているから、父親の気持ちなのだろう。
安良坂くんとゆかりちゃんの様子を見て、落ち込んでいた彼だけど少し元気を取り戻したようだ。
わたしたちは、ショッピングモール内にある映画館に来ていた。
さっきより、だいぶ元気になったゆうを見て少し安心する。
映画館って、飲み物とかポップコーンとかって結構値段が高いわね。
飲み物だけにしようか…とわたしが悩んでいると。
「これとこれを二個ずつ下さい」
ゆうが飲み物とポップコーンを注文してくれた。
会計も私の分も一緒に払ってくれるみたい。
何だか悪いわ。
「わたし、後で払うから」
「今日は俺のおごりにさせてくれ」
わたしは割り勘にしようと思っていたのだけど、押し切られてしまった。
次のデートでわたしが払えば良いかな。
洋画なのだけど、わたし字幕で見るのが好きなのよね。
今日観るのは、アクションコメディ映画だからゆうも楽しめると思うけど。




