日常の光景
夜になり俺は自室で呆けていた。
窓から外の暗闇を眺める。
「寂しいな」
異世界で、しおりと毎日顔を合わせていたから、一緒に居るのが当たり前になってしまったけど…本来ならばこれが普通の光景なのだ。
俺たち兄妹が元の世界に戻った事で、しおりも安良坂も家に帰ったようだった。
「…彼女は今、何しているんだろう」
声が無性に聴きたい。
しおりに電話してみようか。
それかメッセージを送ってみるか。
色々考えていたら、スマホに電話がかかってきた。
「も、もしもし」
『こんばんは。元気?』
しおりからの電話だった。
「うん。元気だ」
『嘘ばっかり。元気ない声してる』
しおりに嘘は付けなかった。
というか俺が嘘が下手なのかもしれないが。
「よく分かったな。何だか寂しくなっちゃってさ…」
『そっか。わたしもよ。あっちではいつでも会えていたのにね』
彼女の声で顔が思い浮かぶ。
苦笑いをしているのかな。
「今、会いに行っていいか?」
『え?…まあ、誰も居ないからいいわよ』
『空間転移』
俺は転移魔法を発動させた。
自室から、しおりの部屋に飛ぶ。
「本当に来ちゃったのね」
昨日も会ったばかりだというのに、長い間会っていないような気がしていた。
俺はしおりに抱きついて、胸に顔をうずめる。
「ゆうは普段、強気なのに。本当は寂しがりやなのかな?」
彼女の匂いがする。
気持ちが少し穏やかになってきた気がした。
暖かくて安心する。
「急にごめん。俺、寂しがりやなのかもしれないな」
「毎日、別の家に帰るのに困ったわね…結婚はしばらく出来ないだろうし」
幸いにも魔法を使えるから、いつでも会いには行けるのだけど。
俺は頭を撫でられていた。
まるで母親に甘える子供のようだ。
「ゆう、大きい子供みたいね」
しおりが苦笑している。
「まぁ、ギリまだ子供だと思うけど」
「学校でも普通にできるかしら」
しおりに問われて、少し自信が無くなってきた。
「隣の席だし、大丈夫だと思う…多分」
自信が無いけど、そう答えた。
「十六歳になったら結婚する?男子は十八歳だっけ。結婚式はしないで籍だけ入れようか」
「結婚するっていっても、しおりの親が納得しないだろ」
まだ若すぎる。
俺が親だったら反対するだろうし。
「うちは母親だけだし、意外と大丈夫な気がするわ。問題はゆうのお家ね」
両親は仕事の都合でアメリカに行ったきりだ。
帰って来るのは長期休み…年末ごろだろうか。
「年末に帰ってきたら、話してみるよ。しおりって誕生日いつなんだ?」
「十二月二十日よ」
「そうか」
スマホで調べてみたら、最近法律が変わったらしく十六歳ではなく男女共に十八歳にならないと結婚出来ない事が分かった。
十八歳と言うと、高校三年生か。
高校を卒業したタイミングが丁度良いのかもしれないな。
「ゆうはいつが誕生日なの?」
「俺は四月一日だ」
「エイプリルフールね」
「そうなんだけどさ。そのせいで、冗談かってよく揶揄われるよ。
結婚できるのは二年後だな。取りあえず、両親にはしおりと付き合っていると言っておけばいいかな」
「それでいいわ。彼女として、ご両親に一度挨拶したほうがいいかもしれないわね」
「挨拶?」
「十八になったら結婚するのでしょう?挨拶はしておいた方が良いわ」
結婚をしたら彼女の苗字も上原になる。
夫婦別性というのもあるらしいが。
両親と家族になるのだ。
結婚って意外と面倒なものなのかもしれないな。
「今、面倒くさいって思ったでしょう」
「え?いや、そんな事ないけど…」
やはり俺は嘘がつけないらしい。
彼女の前で嘘は通用しないが、俺は意地で否定していたのだった。




