夢とゴブリン
*** 上原ゆかり視点
「ただいま~」
「お帰りお兄」
夜22時。
今日もお兄は疲れた顔をして帰ってきた。
学校から帰ってきた後、夕飯を食べたと思ったら直ぐに外に出ていくのだ。
町に現れる魔物と戦っているらしい。
テレビでも見た大きな魔物。
あんなのと戦っているなんて話を聞いても信じられないけど…。
あんまり無理はしてほしくないな。
お兄の手には魔法の薬瓶。
回復ポーションというらしい。
怪我した時に使う物らしいけど、疲れた時にも効くのだとか。
栄養ドリンク?っていうくらい気軽に飲んでるけど大丈夫なの?
「お兄、ちゃんと寝てるの?」
深夜に出かける事も結構あって、寝不足になるんじゃないかって心配をしている。
「徹夜くらいは全然平気だ。学校で寝ればいいし」
戦っている人は、お兄の他に二人いる。
安良坂さんと黒田さん。
二人とも同じ生活をしているんだろうな。
一か月で終わるらしいとは聞いたけど。
女神様に頼まれたって言ってたっけ。
こんな事になる前に、どうにかしてほしかったわね。
***
「今日も疲れたな~」
俺は自室に戻ってベッドに潜り込んだ。
魔物が出現したら分かるように、女神から銀色の腕輪を貰っていた。
出現するとアラームが鳴り、情報が空中に映し出されるのだ。
魔物は何故か昼間より夜に出現することが多い。
昼間は学校があるから出なくて助かるけど。
回復ポーションのお陰で、多少の寝不足でも普段の生活をやっていけていた。
「テスト期間中じゃなくて良かった」
回復ポーションは女神に無理を言って大量に貰ってある。
エリクサーも出していたし、ポーション作るなんて造作もない事なのかもしれないな。
体力は回復したとはいえ、精神的に疲れているのか―――。
俺は、いつの間にか眠っていた。
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「上原くん!上原くん!」
俺は目を覚ますと、黒田さんが俺を起こしていた。
「今日は一緒にお出かけするって言ってたじゃないの」
ええ?そんな約束したっけ?
自室に黒田さんがいて微笑んだ。
あれ?何で黒田さんが俺の部屋にいるんだ?
場面は切り替わり、パジャマを着ていたはずが、いつの間にか俺はTシャツとGパンに着替えていて。
黒田さんと、映画を見に行く事になっていたようだった。
彼女と腕を組んで町を歩く。
これ、デートしてないか?
映画の内容は全く分からなくて…隣に黒田さんが座っている。
自然と手を握り合った。
暗い映画館の中…ふと黒田さんと目が合って
彼女が目を瞑り、俺は彼女の唇に…。
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「「ピピピッ!ピピピッ!」」
腕輪から電子音が鳴って俺は目が覚める。
時計を見ると夜中の二時。
ドキドキドキ…。
心臓がバクバクしていた。
今のは夢だったのか…。
あれ俺って、黒田さんとキスしようとしてたな。
まさかあれが願望だったりするのか?
『おーい上原くん起きてる?わたし先に行ってるわね』
銀の腕輪から、黒田さんの声が聞こえた。
夢の所為なのか、動悸が収まらない。
どうやら電話機能も付いているらしい。
「…行かないと。彼女じゃ対処できない」
俺はのそのそと動き出し、服を着替える事にした。
*
「上原くん、遅かったじゃない。安良坂くんは直ぐに来たわよ」
「悪い…ちょっと夢見が…いや何でもない」
「良い夢でも見てたの?残念だったね」
今日はゴブリンだった。
「何だゴブリンか」
「上原くんやっちゃって。一人で出来るでしょ?」
「了解」
ゴブリンたちは、景色が急に変わった事に驚いている様子だった。
緑色の肌に、子供ほどの背丈。二十匹はいるだろうか。
いくら最弱の魔物でも一般市民には危険だ。
普段から魔物と戦う事なんて無いからな。
俺はアイテムボックスから長剣を取り出した。
剣を使うのは久しぶりだ。
『炎よ』
剣に炎を纏わせて倒すとするか。
一度やってみたかったんだよね。
「普通の剣で大丈夫でしょ?」
「一度やってみたかったんだよね」
「そう」
「ぼくは見物してるね」
「俺の前に出現するとか、お前ら運が悪かったな」
ゴブリンを一方的になぎ倒す。
申し訳ないくらい弱くて、一撃で倒してしまう。
剣に炎を纏わせているので、切ったところから体が燃え始めた。
倒したら、火も消さないと危ないかな。
「ふああ~っ」
黒田さんは欠伸をしている。
安良坂も眠そうだ。
「次はぼくがやることにするね」
「その時は頼む」
倒したゴブリンが燃え始めたので、水魔法で一気に消火する。
消火すると煙が立ち込めた。
これ、近所迷惑になりそうだな。
匂いも臭いし。
俺は鼻をつまんでいた。
「上原くん、匂いが凄いんだけど」
「次からは普通の剣でお願いするね」
二人から苦情が出てしまった。
この技は封印することにしよう。
これから家に帰っても、あまり寝れないだろうなぁ。
学校でバレないように居眠りするとするか。




