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不審者

 *** 真崎視点


「おい!アイツ等何処行った?」


 急に砂ぼこりが舞って目が開かなくなった。

 目が痛い。


「逃げたんじゃないか?」


 麻木が答える。

 どさくさに紛れて逃げられたようだ。

 黒田さんと妹を人質にするというのはいい案だと思っていたのだが。

 脅したら素直に従うとばかり思っていたのに。


 やっと目を開けられるようになった。

 目が痛い…目を洗った方が良いな。


「真崎…上原に手を出すのはもう止めた方がいいんじゃ…」


 麻木が弱音を吐いている。

 何言ってんだコイツ。


「とりあえず、ここを出て目を洗ってから…それからだ」


 とにかく目が痛くて仕方ない。

 オレたちは廃屋を出て、近くの公園に行く事にした。



      *



 パンパン!

 服に付いた砂を払う。


「ふう~髪も服も砂だらけだな。酷い目にあった」


 水道の蛇口をひねり、水を出す。

 髪も砂ぼこりでバサバサになってしまった。


「アサギー、何だか変じゃないか?」


「何が?」


「部屋の中って風吹かないよな?」


「…言われてみれば」


 何処かの窓が開いていて、風が吹き込んだのだろうか?

 それにしても風が強すぎる気がした。

 その時、上原が何か言葉を言っていた気がするのだけど。


「もしかして魔法を使ったとか?」


 麻木が変な事を言いだした。


「そんなわけねえだろ。中二病かって頭疑われるぞ?」


 魔法ってマンガやアニメじゃあるまいし。

 現実にある訳が無い。

 俺たちが話していると、人が近づいてきた。


「その話、少し訊かせてくれないかな?」


 見ると、浅黒い茶髪のスーツ姿の青年だった。



      *



「上原って言うんだね。その人は」


「「は、はい」」


 初対面の青年だが、笑顔の奥に言い知れぬ雰囲気を感じていた。

 逆らわないほうが良いと本能が告げている。

 緊張してしまう。

 あっち系の人なのだろうか。

 ヤ〇ザとかはテレビでしか見たことが無い。


「教えてくれてありがとう」


 ポン!

 オレと麻木は青年に肩を叩かれた。

 ビリっとしびれる感覚があり…気を失ってしまった。




      *




「あれ?オレたち何していたんだっけ?」


 気が付くとベンチに二人座っていて。

 麻木と公園に来たところまでは憶えている。

 公園に来るまでは、上原が憎くて仕方なかったはずなんだが。

 すっかり怒りが消え失せていた。


「上原の事はもう良いか」


「その方が良いよ」


 何であんなに執着していたのか。

 その感情すら疑問が湧くようになっていた。


「アサギー、早く帰って風呂入った方が良いぜ」


「そうだな。何だか頭もかゆいくて早く洗いたいよ」


 オレたちは家に帰ることにした。




 ***



 次の日。

 俺は麻木と真崎を気にかけていたのだが。


「おはよう上原。昨日は済まなかったな。どうかしてたよ。今までも酷い事をしてきたよな。謝って済むことじゃないとは思うのだが」


 真崎が頭を下げてきた。

 ええっ?

 何か悪いものでも食べたんじゃないだろうな?


「おはよう…?」


「おいおい、本当に反省しているんだって。そんな怪訝そうな顔で首を傾げないでくれよ」


 昨日と180度、態度が変わってしまっている。

 あれだけ突っかかって来たのにもかかわらず。

 教室ではいつも睨まれていたのに。


 敵意もすっかり無くなってしまったようだ。

 一体どうしたのだろうか。


「真崎くん…どこか頭でも打ったのかしら。優しいとか気味が悪いわ」

 

 黒田さんが気味悪がっている。

 他のクラスメートも驚いている様子だ。

 麻木も同様のようで。

 本当に、頭でも強く打ったんじゃないのか?


「別に、悪い事しなくなったのなら良いんじゃないか?少し不自然だけど」


「それもそうなんだけどね」




      *




「公園で気を失った?」


「そうなんだよ」


 俺は昼休み、麻木から話を聞いていた。

 麻木が言うには、俺たちと別れた後公園に居たらしい。

 少し気を失っていたらしいのだ。

 最近どこかで聞いたような話だ。


「安良坂か」


 安良坂の場合、確か鞄が無くなったんだっけ。

 麻木たちは物が盗まれたとは言っていないけれど。

 気を失う前、誰かに何かをされていたのではないだろうか。


「公園に何かあるのか?」


「ねえ、ちょっと麻木くんと何の話をしているの?」


 黒田さんが訊いてきた。


「以前、安良坂も公園で気を失ったと言っていた。それと同じ事が起きているんだよ」


「もしかして、同じ人に何かされているという事?」





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