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回復ポーション

「あれ、鞄?」


「あら、本当ね」


 学校へ行く途中の歩道に鞄が落ちていた。

 鞄を開けてみたら、どうやら安良坂の物っぽい。

 教科書とペンケース、ノートの他に生徒手帳が入っていた。


 数メートル先には学校が見える。

 わざとここに置いて行ったのか?

 まさかな。


「あっ!遅刻しちゃうわ。上原くんごめん、わたし先行くわね」


 腕時計を見ながら、黒田さんが先に行ってしまった。

 俺は鞄を拾って、後で届ける事にした。



      *



 ピンポーン。


 大きな家の前で俺は、呼び鈴を鳴らした。

 表札に安良坂と書かれている。

「どちらさまですか?」と若い女性の声が聞こえてきた。

 名前を名乗ると、門が自動で開かれる。

 外壁も高く家の敷地も広そうだ。


「お坊ちゃまがお待ちになっております。どうぞ」


 丁寧に案内される。

 お手伝いさんだろうか?

 敷地内に入ると広い庭を移動して家の中に入る。

 居間に案内されたが、何だか落ち着かないな。


 俺は学校帰り、鞄を届けに安良坂の家に来ていた。


「わあ、ありがとうございます!よく、僕ん家が分かりましたね」


「生徒手帳が入ってたからな」


「あー成程。良かった。中のものは無くなってないや。教科書をまた買うのも面倒だもんね」


 安良坂の家は大きい家で、ガレージには高級車が何台も停めてあった。

 父親が医者をしていてお金持ちらしい。

 仕事が忙しいらしく、あまり家に帰って来ないそうだ。


「それにしても広い家だな」


「そう?」


「まだ学校休むのか?」


「もう少ししたら登校するよ。流石に授業に付いて行けなくなったら困るしね」




      *




 しばらく黒田さんと、一緒に学校へ行っていたが特に何事も無かった。

 今日は学校帰り、俺は彼女を家に送っていた。


 黒田さんの頬が、少し赤い。

 寒いのかな?


「風邪ひいたのか?顔赤いけど…」


「ひいてないわよ」


 ギュッと強く腕に抱き付かれた。

 あれ?何だか柔らかいものが、あたってる気がするんだけど。


「く、黒田さん?」


「……」


「コホン、えっと…こっちでもポーション作れると思う?」


「え?そもそも薬草がないじゃないの」


「そっか、そうだよな」


 最近、黒田さんの距離が近い気がするんだけど気のせいだろうか?


「こっちの薬草を使って、実験したら面白いかもしれないわね」


「薬草があるのか?」


「ほら、ハーブとかあれって薬草なのよ?」


「そうなんだ」


「今、家に丁度ラベンダーあるから実験してみる?今日家においでよ」


 俺はそのまま、彼女の家にお邪魔することになった。

 何だかわくわくしてきた。

 ポーションを作るとか面白そうだもんな。



      *



「おじゃまします」


 俺は黒田さんの家にお邪魔していた。

 二階建ての一戸建て住宅だ。


 彼女の部屋に入ると、ピンクと白が基調の可愛い部屋だ。

 クマのぬいぐるみが置いてあって女の子らしい。

 ほのかにいい香りがするような…。


 本棚には沢山の本があり、机の上にはラノベが置いてあった。

 そういえば女子の部屋に入るのって初めてかも。

 あれ?ドキドキしてきた。

 さっきから俺、何だか変なんだよな。


「ポーションってどうやって作るんだ?」


「知らなーい」


「知らないのか」


「でも現物はあるんでしょ?安良坂くんから教わった鑑定魔法使ってみたら?」


 俺は残りの回復ポーションを、一つアイテムボックスから出してみた。

 回復ポーションはあと三つある。

 ポーションと引き換えに、安良坂に鑑定魔法を教わったので使えるようになった。


『鑑定』


 回復ポーションを鑑定してみる。


 --------------------------------------------------------------------

 中級ポーション。

 傷や怪我を治す効果がある。

 レリック草、ライラック花を使って作成されたもの。

 ---------------------------------------------------------------------


「作成方法なんて書いてないぞ。原料はレリック草とライラック花だって」


「そうなんだ」


 黒田さんはアイテムボックスから、一冊の分厚い本を取り出していた。

 ぱらり。

 どうやら魔法書のようだ。


「あ、何とかなりそうかも。ポーションに似たものを作れそう」


 黒田さんは、サラサラと白い紙に黒いボールペンで魔法陣を書き込んだ。

 ぷちっ。

 彼女はテーブルの上にあるラベンダーの花弁を一つちぎる。

 それを、紙に書かれた魔法陣の上に乗せた。


「・・・・・・・」

 何か詠唱しているようだ。


「わたしのいた所の異世界の言葉よ。特殊な発音だから聞き取れないと思うのよね」


「っていうか、俺の鑑定いらなかったんじゃ」


「まあ、いいじゃないの」


 黒田さんが魔力を注ぐと魔法陣が光った。


「出来たわ!」


 コロン。

 魔法陣の上に小指ほどの青い小石が転がっていた。


「石?」


「ラベンダーを核にして、回復魔法を固めたの。液体じゃないけど、水に溶かせば使えるわ。一回分のポーションね」


 カラン。

 黒田さんは、青い小石を小瓶の中に入れた。

 何回か同じことを繰り返し、小瓶に青い小石が5個溜まった。


「わたし、使わないからあげるわ。回復魔法つかえるし」


「良いのか?」


「出来れば、怪我しないでほしいけどね」


 苦笑いをする黒田さん。

 まただ。

 俺は、不思議な感覚を感じていた。

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