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学校の遠足

 六月になった。

 学校の行事の遠足。

 俺は、クラスメートたちと共にバスで北関東の田舎に来ていた。

 今日は山に登るらしい。

 一年生の一組から四組まで参加している。


 生徒たちは学校指定の灰色の体育着を着ていた。

 地味な体育着は評判が悪い。

 遠足なんて小学生以来だな。


「歩くの疲れた…」


「だるい」


「何でこんな事しなきゃいけないんだ」


 クラスメートが愚痴っている。

 遠足は授業の一環らしくて強制参加だからな。

 まだ、山の麓にも来ていない。

 

 道行く先には、古い建物が残っていて江戸時代にタイムスリップしたようだった。

 周辺は、井戸や瓦の屋根の古民家が立ち並ぶ。

 近くには温泉もあるらしい。


「ねえねえ、この先「道の駅」があるみたいよ?行ってみたいな」


 隣を歩いている、黒田さんが俺に話しかけた。

 彼女は文句を言うまでもなく、もくもくと歩いていた。


「勝手に抜けたら不味いんじゃないか?」


 生徒たちは列を作って並んで歩いている。

 抜けたらすぐばれてしまう。


「大丈夫、すぐ戻ってくればいいんだもの」


 黒田さんは、道の駅に行きたいようだ。

 道の駅って、お土産とか地元野菜が売っている所だよな。

 観光地は地元限定のソフトクリームなど美味しいものが売っている。

 気持ちはわからないでもないけど、教師に見つかったら叱られるのでは?


「先生!トイレ行っていいっすか?」

 一人の男子生徒が声を上げた。


「…仕方ないな。この先、道の駅があるからそこでトイレを済ませなさい。他にも行きたい人は済ませておくこと」


 担任の田中先生はスマホで連絡を取り始めた。

 他の教師たちに電話をしているのだろう。


「ラッキー。トイレ行くふりして食べ物買ってくるわ」



 急遽、道の駅で休憩をする事になったらしい。

 道の駅は、平日にもかかわらず意外と混雑していて自動車が数台停まっていた。

「車に気を付けて」と教師が生徒に言っている。

 黒田さんと、同じことを考えている人が居るようで、チラホラと売店の方に入っていく。

 教師たちは煙草を吸ったりしているようだ。


「やっぱりそれ買って来たんだ」


「当然よね。こういう所のソフトクリームって美味しいんだもの」


 黒田さんは、美味しそうにソフトクリームを舐めていた。

 他人が食べているのを見ると欲しくなるらしい。

 一緒に買ってきてもらえば良かったかな。


 俺が見ていると「食べる?」なんて言ってきてドキッとしてしまった。

 それって間接キスになるんじゃ…。

 流石にそれは不味いんじゃないか?



      *



 生徒たちは、山を登り始めていた。

 山と言っても、地元で一番小さい山らしく日帰りで登る程度らしい。


「山登りっていうから、さぞかし大変かと思ったら大したことないわね」


「本格的なものじゃないだろうしな」


 新緑の中、爽やかな風が気持ちいい。

 清浄な空気に癒される。

 汗かいて良い運動になるな。

 クラスメートたちは、疲れてしまっているようで歩くペースが落ちてきていた。


 俺は数日前まで居た異世界を思い出していた。

 この間までどこに行くにも歩いて移動だったからな。

 体力が自然と付いているのだろう。


「黒田さん意外とタフなんだな。城とかにこもりっきりだったのだろう?」


「退屈だったから近くをよく散歩していたわ。遊ぶものが無かったからね」


 散歩ねえ。

 夜空を飛ぶ彼女を思い出していた。

 たまに海まで飛ぶって言ってたっけ。


「上原くんと黒田さん、あの二人絶対おかしいよ。運動部に入っていないんだよね?」


 自分の名前を聞いた気がして、後ろを振り向くとクラスメートとの距離はだいぶ離れてしまっていた。

 教師に付いてきていたのは、俺と黒田さんだけだったようだ。

 後ろが見えなくなってしまっている。


 田中先生も意外と体力があるんだな。

 見た目はヒョロヒョロしていて弱そうなのに。

 俺も他人の事言えないが。


「「田中…先生、待ってください!」」


 女子生徒が叫ぶ。

 初めて田中先生が、生徒たちが付いてきていないのに気が付いた。


「え?あらら…みんな体力無いですね。上原くんと黒田さんが、付いてきているからてっきりみな来ているのかと思いましたが。追いつくまで少し待ちましょうか」


 座るのに丁度良い切り株があった。

 俺と黒田さんは腰を下ろす。


「貴方たちは、普段から運動をしているのですか?」


「え…ま、まあ」


「散歩くらいは普段からしてますね」


 田中先生から突然訊かれて、俺はとっさに答えられなかった。

 

「適当に言っておけばいいのよ」


 黒田さんに耳打ちされる。

 まあ、そうなのだろうけど。



 *** 麻木視点



 オレたちは遠足で山に登っていた。

 別にサボっても良かったのだが。

 上原の弱みを探すために、必死になっていたのだ。

 とはいえまだ山の麓…クラスの連中の中で最後尾なのだが。


 正直だるい。


「アイツ絶対おかしいぜ。何か隠し持ってるに違いない。オレがやられたのが未だに不思議でしょうがないんだ」


「真崎、そうは言ってもな…どうするんだ?」


「上原は中学生の可愛い妹がいるらしい。それと黒田さんも捕まえれば完璧だな」


「お前って結構、悪物だなー」


 真崎はニヤリと口を歪ませる。

 悪友は良い事を思いついたらしい。

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