第四話 報酬は擬似屋の年商の五倍!?
なるほどね。やっぱド田舎っ子だったか。
「でもさ、手紙届いたのが藍二十色日ってことだけど、もう五色日経ってるし、さすがに十七歳の少年が十二色日間も戻らないってことはないんじゃないの? 金だってないだろうしさ――あ、金持ちなんだっけ」
「いんや。戻っとらんようだ」
バウランは手を振った。「先方さんはかなり参っとる」
「ふ~ん。そっか」
ま、父親の居ない家庭の家出少年の代役くらいお安い御用だね。ていうか、こういう手の依頼は多いんだよね。結婚式直前に花嫁さんが蒸発したとか、占い師が消えたとか、親が突然いなくなったとかさ。中でも青少年の家出はもっとも多い。
あ~あ、アタシも家出したいな。自由になりたい。ま、それもこれも先立つものがないとダメなんだけど。
ミラノは手紙を折り畳んで、あることに気づいた。
「そういや、今日の報酬は?」
「まだ話し合い中だ」
バウランがワイプ入口のゲートを通過しながら言った。トロッガンを専用区域に停止させる。
「もしかして田舎者の金持ちってケチ?」
「口を慎むんだ小娘」
ギロリとミラノを睨んだバウランは、「残念だがその反対だ。あまりにも高額だったから値引きさせてもらってるんだが、どうしても応じてくれない」
「で、いくら?」
「350万マドルだ」
「ワオ! 凄いじゃんか! 擬似屋の年商の五倍だ!」
ミラノは興奮して目を輝かせた。そんな大金があったら即刻学校に通ってやる。350万マドルでしょ? そこからアタシへの小遣いは3%だから(つうか精々5%にしろって!)――10万5千マドル!
10万5千マドルだ! これだったら今までの貯えと合わせれば、アタシだって高院に一年通える。一年も通えば専門職の見習いにもなれる。これはこれは、念願の華麗なる職業も予定より早く叶っちゃうかもね。無理しなきゃ家出も可能だし。
「ねぇおっさん。350万マドル有り難くいただこうじゃないの」
「バカ言え小娘。擬似屋の報酬には仕事に応じての相場ってのがある。一人の代役、それも一時間ぽっきりでは最高でも1万マドルだ。平均的には8千マドルってところが好適な金額になっとる。350万マドルも受け取ったのが国にバレたら一発罰則だ。首を跳ねられるのオチだろうな」
それでも良ければ受けるが?
バウランはミラノの首元を見ていた。
「チェ。つまんないの」
ミラノは首をボリボリ掻いた。何だかムズムズする。




